とりあえず、駅舎の中にある待合室に入ってみました[①]。アサヒの自動販売機が設置されていますが、木の素材感を出している壁と合う塗装を採用し(普通は青色)、壁に掘った穴に入れて飛び出さないようにするなど、この場の雰囲気を壊さないような配慮がなされています。
背もたれ付きの椅子が設置されていますが・・・、どうも、澄み切った白色ではありません[②]。なんか、薄汚れた白色? というより、これは土汚れそのものか?[③] 一瞬、「管理が行き届いていないにも程がある」と思いましたが、ふと我に返り、椅子の表面を指でこすってみると、その汚れは移りませんでした。こういう模様ということなのかもしれませんが、最初にふと目に入ったときは、座る気が全く起きませんでした。
待合室内には、ラジオが絶えず流れていますが、普通のラジオを垂れ流しにしているわけではありませんでした。流していた放送の発信元は、「女川さいがいFM」[④]。臨時災害放送局として2011年4月21日に生まれたこの局は、免許更新を繰り返しながら生き長らえ、2016年3月29日の昼頃についに停波。当初は2か月程度で終了する予定だったところを、約5年間も放送を続けました。
いずれはこの辺りで昼ごはんを食べますが、まだ早いので、とりあえず駅周辺をぶらりと街歩き。駅から海へ向かって伸びる遊歩道「シーパルピア」には、様々な商業施設が集まり、女川町の新しい商店街となります[⑤] [⑥]。全体的な統一感を出すためなのか、建物の外観デザインは、ほぼ共通となっているようです。全ての店が出揃っているわけではなく、来訪時は、まだ未開店の店もいくつかありました。
女川町では、復興に際し、嵩上げが実施されることになりました。嵩上げ工事で使用するための土は、市街地周辺の山を切り崩していくことによって確保します。例えば、この山も、震災以前は、もっと緑が青々と茂っていましたが、樹木は当然切り倒され、山自体も、度重なる切り崩しによって痩せていっています[⑦] [⑧]。現在と過去の衛星写真を比較してみると、その変化がよく分かりました。
少し盛り上がったところを見て、「こうやって嵩上げは進むのか」などと感心していましたが[⑨]、このとき、私は気が付いていませんでした。既に嵩上げは進んでおり、今自分自身が立っているところも、嵩上げが済んだ場所であるということを。海へ向かう道を歩いていたとき、道がどんどん下っていくことに気が付いて、初めてそのことを知りました[⑩]。そこの高さがどうであれ、地面が水平に続いていれば、「平地」と認識しますからね・・・。
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