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 川内(かわうち)にやってきました[①]。わざわざふりがなをつける必要はあるのか?といえば、あります。何しろ、九州には、この漢字で「せんだい」と読ませる駅がありますからね。ちなみに、「せんだい」といえば、やはり宮城県の仙台駅が思い浮かぶわけですが、東北新幹線には仙台(せんだい)があり、九州新幹線には川内(せんだい)があるということで、両駅は、新幹線駅としては唯一の「同音異字」の駅の関係にあります。

 2面3線の構造を持つ川内駅は[②]、列車交換が可能であり、また、平時から川内を始終着とする列車の設定があります。駅員も配置され、明らかに主要な駅として位置づけられていますが、快速リアス号については、なぜか全ての便が通過してしまいます。まあ、運転上の主要駅と旅客上の主要駅(利用客が多いか少ないか)は、また別次元の話であるわけですが。駅舎側のホームともう一方のホームは、構内踏切で連絡します[③]

 本当は、もっとじっくりと駅の写真を撮ったり、しばらくのんびりしたりしたいところですが、残念ながら、今日ばかりはそうはいきません。駅前から伸びていくこの道を視認したら[⑤]、疾走!ひたすら全力疾走! 休むことなくとにかく走ります!

 そうして辿り着いたのは、岩手県北バスの川内停留所です[⑥]。これより、私は、16:55発の盛岡駅前行きの106急行バスに乗車します[⑦]。列車での川内着は16:47で、バスの停留所発は16:55。駅と停留所の間の距離を考えると、8分あれば、そこまで焦ることもないのですが、駅名標や駅舎といった「これだけは撮っておかねばならないもの」の撮影に勤しんでいると、やはり時間が押してしまいました。

 川内駅の近くを通っている道は、国道106号線です[⑧]。宮古と盛岡を結ぶ106急行バスは、国道106号線を経由して両市を結ぶことから名づけられました。宮古〜区界にかけては、山田線とほぼ同じルートを辿る(国道106号線が同区間では山田線とほぼ平行するゆえ)ため、同区間では、バス側にも、駅名と(ほぼ)同じ千徳駅前、花原市、蟇目、茂市、腹帯、川井、箱石、川内・・・といった停留所が、駅の近くに置かれています。

 ここ川内は、駅がある、停留所がある、といっても、場所が場所ですから、周辺の民家の数は少ないです[⑩]。左が山なら右も山という、典型的な山あいの地帯の雰囲気で、山と山の間にできた”溝”に、川が流れ、人が暮らしています[⑪]。国道106号線と山田線の線路は、閉伊川を挟んだ、お互いに対岸の場所にあり、停留所から駅がある方を見てみると、枯れ木の向こうに、川内駅の駅舎の屋根がのぞいていました[⑫]

 様々な情報を表示する電光掲示板に、「只今の気温 3℃」との表示が出ていました[⑬]。この日の宮古市の最高気温は9度で、一応、この辺りも宮古市内ですが、明らかに市街地から離れた山間部ですから、やはり気温も低めのようです。写真には写っていませんが、バスを待っている間に雪まで降ってくる始末で、ダッシュに備えて薄着になり、かつダッシュで汗をかいた身には、とてつもない寒さでした。

 ・・・で、せっかくあれだけ頑張って走ったのに、バスがなかなか来ません。待てども待てども来ません。下り(宮古行き)のバスは行っても、乗車する上り(盛岡行き)のバスが来ません。「実は早通で乗り逃していた」という最悪の事態が頭をよぎります。とはいえ、バスの世界では、終着以外で早通・早着はしないはず。もうまもなく来るのだと信じて、寒さに身を震わせながらひたすらバスを待ちます。

 実は、このとき、私は3枚しか着ていませんでした。防寒用の厚手の上着を持っていましたが、走るときには邪魔だ、ということで、着ないで疾走。停留所に着いた後も、「どうせすぐに暖房の効いたバスに乗るんだから、別に着なくてもいいだろう」「体は火照っているし」と考え、上着は着ないままでした。そんな余計なことは考えず、さっさと着ればよかったのですが、結局、ずっと3枚のままで・・・。
















 17:13、ようやく盛岡行きの106急行バスがやってきました[①]。18分も遅れての到着です。106急行バスは、観光型バスで運転されますが、高速バスではなく、れっきとした路線バスです。そのため、車内には、運賃表や運賃箱、降車を知らせるボタンなどが設けられています。

 バスですから、多少の遅延は承知していましたが、まさか18分も遅れてくるとは。それも「宮古発の上り便に川内から乗る」という時点での18分遅れですから、なおさら想定外です。交通量の多い盛岡市街地に入り、渋滞で18分遅れた、ということは十分ありえるでしょう。しかし、都会でもない宮古から川内に来るまでに18分も遅れるなど、むしろどうすればそうなるのかと不思議になります。異常に激しい渋滞があったとは思えませんし。

 この後の乗り継ぎを考えると、18分よりも遅れが拡大してしまうと、非常に危険です。逆に言えば、18分であれば、まだ何とかなります。「バスを使うなら余裕を持て」と言われればそれまでですが、私も無策だったわけではありませんから、5分や10分の遅れには対応できるようにしてありました。が、18分ともなると・・・。「とにもかくにも、もうこれ以上遅れは拡大してくれるな」と祈りながら、茶畑公園停留所までの時間を過ごします。

 川内のバス停で待っている時点から、ちらちらと雪が舞っていましたが、バスが進むにつれ、なんだかその降り方が激しくなってきました[②]。小粒ではありますが、その密度は高く、かつ横殴りです。「3月も下旬だし、青森とかならともかく、岩手あたりじゃあ雪に縁はなかろう」と思っていましたが、こんなところで雪に遭遇するとは。そして、バスが更に進むと、雪の粒は大型化し、いつしか地面は白くなりつつありました[③]

 土の部分>雪の部分だったのが、盛岡を目指して走っていくにつれて、だんだんと雪の部分の方が多くなってきたような気がします[④]。目指しているところは盛岡なのに、まるで雪国を目指して走っているかのようです。あれ、ここって岩手だったはずでは・・・。

 そして、雪の量は、区界付近で頂点に達しました。ご覧ください、国道106号線はこの有様です[⑤]。たしかに、区界付近は峠ですから、「寒いんだろうなあ」くらいには思っていましたが、3月下旬にこれほどしっかりとした雪が降るような場所だとは思いませんでした。うっすら積もっているという程度ではなく、明らかに積もっています。路面も、轍の跡が残るくらいには積もっていて、ノーマルタイヤでは乗り切れそうもない状況でした。

 やがて陽は落ち、辺りは暗くなっていきました[⑥]。周囲に見える白い雪は、ここがどこであるのかという感覚を狂わせます。遅れは相変わらず18分のまま、いや、むしろ20分くらいに広がってしまったか(バスに回復運転ってあるのでしょうか?)。雪雲の向こうに見える僅かな光は、この先の乗り継ぎはきちんと行くぞという希望の光か、それとも、見せかけの無意味な光か・・・[⑦]
















 上米内駅にやってきました[①]。「ハァ?」と思われる方もいらっしゃることでしょうが、上米内駅にやってきました。嘘ではありません。

 「宮古で列車に乗り、川内で降りた。川内停留所から106急行バスに乗り、茶畑公園停留所で降りた。そして上米内にやってきていた」。この一連の謎めいた動きは、詳細な説明がなければ意味不明なだけですが、あらゆる思考と知識を駆使し、考えうる様々な可能性、パターンを考え抜いた果てに生まれた、私の”生まれながらの旅人としての腕の見せ所”でした。

 2015年12月の土砂災害による川内〜上米内間の不通を受け、今回、山田線の宮古〜盛岡間の乗車に当たっては、「不通区間は飛ばしても良い。ただし、宮古〜川内・上米内〜盛岡は、鉄道できちんと動いているので、同区間に関しては、列車に乗ることとする」という条件を付しました。まずは宮古から川内まで列車で移動せねば、ということで、宮古15:53発の普通列車で川内へ行くことを決定。

 幸い、川内駅の近くには、106急行バスの川内停留所がありました。また、列車16:47着に対してバス16:55発と、綺麗に乗り継ぎ(もちろん、仮に列車が遅れても、バスは待ちません)ができることが分かりました。「そこから106急行バスへ乗り換えれば、ひとまず、鉄道で動いている宮古〜川内を乗りつつ、更に”不通区間越え”ができそうだ」。そうしたら、次は上米内〜盛岡の乗車だ、となるわけですが、そうは問屋が卸さなかった。

 宮古〜区界では、山田線と106急行バスは、ほぼ同じルートをとりますが、区界で両者は分かれ、その後は、それぞれ全く違うルートを辿っていくようになります。これが何を意味するのかというと、つまり、106急行バスには、上米内という停留所がないのです。それは、宮古<山田線>川内<106急行バス>上米内<山田線>盛岡という移動は成立しない、ということを意味していました。

 106急行バスは盛岡駅行きですから、バスでひとまず盛岡駅まで行き、そして盛岡〜上米内を山田線で往復するという手立てもありました。ただ、そうすると、盛岡駅に着いた(バスは18:20着)後は、盛岡19:06発・上米内19:20着、上米内20:19発・盛岡20:33着という移動をすることになり、時間の無駄が大きいばかりか、今日の最終目的地、青森への到着が非常に遅くなるという問題がありました。

 そんな中、私は、上米内18:41発の盛岡行きという列車があることに気づきました。これに乗れれば、時間の無駄は少なくなり、青森にも早く到着できるじゃないか。どうにかしてそれに乗りたい。でも、どうやって106急行バスから上米内駅まで行けば良いのか?

 そこで私が編み出したのは、106急行バスからタクシーに乗り換えて上米内駅を目指すというものでした。バスを途中の停留所で下車し、予め呼び出しておいたタクシーに乗り換える。これならば上米内18:41発の列車に間に合うだろう、と。

 いろいろと調べてみた結果、茶畑公園という停留所が上米内駅に近そうで、かつ、その眼前にローソンがあるため、タクシーが待機できそうだということが分かりました。また、Google Mapにお尋ねした結果、そのローソンから上米内駅までは、車では20分弱で行けそうだということも判明。106急行バスの茶畑公園着は17:59で、山田線の列車の上米内発は18:41。これだ、これなら行けるぞ。(金はかかるが)無駄のない、美しい移動だ。

 ・・・これが、事の顛末です。茶畑公園で106急行バスを下車した私は、すぐにローソンで待機しているタクシーに乗り換え、上米内駅にやってきた、というわけです。バスが定刻に・・・とは言わないまでも、5分、あるいは10分程度の遅れで茶畑公園に到着してくれていれば、何の問題もありませんでしたが、結局、20分ほど遅れて到着したため、乗り継ぎに黄信号。タクシーで上米内に到着したのは、何と列車発車3分前の18:38でした。

 上米内のひとつ宮古寄りの駅は大志田でしたが、2016年3月のダイヤ改正で、浅岸と共に廃駅になりました。ダイヤ改正前日の今日3月25日、駅名標を見ると、大志田はシール貼りになっていました[②]。これは、駅名標は既に廃駅に対応した新しいものに取り換えられていて、ダイヤ改正を迎えたときには、このシールを剥がすだけで良い、という状態にあるということでしょうか。

 ホームには、盛岡行きの列車が既に停車していました[③]。まあ当たり前ですね。現在、山田線の盛岡〜上米内間では、列車増発の「社会実験」が行われており、平日に限り、1日2往復の列車が増発されることになっていますが、これから乗る上米内18:41発の盛岡行きは、その社会実験によって運転される列車です。もっとも、”帰宅時間帯”の今から盛岡へ行く人はいないようで、他の乗客は0人でしたが・・・[④]

 ・・・と思っていたら、意外にも、次の山岸で2人の乗車がありました。この上米内発盛岡行きについて、私は、「こんなもの、帰宅用に運転する盛岡発上米内行きのただの返しじゃないか」と思っていたのですが、この時間帯から街(盛岡)へ向かう需要もあるようです。

 マンションに挟まれかけている駅、上盛岡に到着[⑤]。ここでは乗車も降車もありませんでした。写真では分かりませんが、駅の本当にすぐ脇には、規模の大きめなマンションが3軒建てられていて、上盛岡駅は、それらに囲まれているかのような状態になっています。

 車窓に街明かりが増えだすと、終点の盛岡はもうすぐです[⑥]。上米内から14分で、列車は終点の盛岡に到着しました[⑦]


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