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※各画像はクリックすると拡大します。














 今回借り上げたのは、トヨタのセダン型乗用車、マークXです[①]。中級車、あるいは準高級車というところでしょうか。公式ページのメイン画像で「FR Sports Sedan」と謳われているように、後輪駆動によるスポーティーな走りを自慢とする車です。1795mmに達する車幅を持ちながらも、車高は低く、これによって生まれる「ワイドアンドロー」な佇まいは、引き締まった面持ちを強調させるとともに[②]、質の高い走りを予感させます[③]

 この車の特徴のひとつは、ハイブリッド車の設定がなく、全てのグレードで6気筒のガソリンエンジンを搭載していることでしょうか。ボンネットを開けたときに見えるエンジンで輝く「V6」の2文字は、この車を所有する(レンタカーだけど)ことの歓びを高めます[④]。燃費を追求した車が増殖する中、質の高い走りをもたらすV6エンジンだけを搭載し続けていることは、マークXがマークXたる所以であるとも言えましょう。

 車体色は白色[⑤]。この手の車は黒に限ると思っていますが、まあレンタカーですから、無難な色が選ばれているのは仕方がないことですね。マークXには、通常、リアワイパーは装着されませんが、寒冷地仕様を選ぶと、その一環としてリアワイパーがつきます[⑥]。配備地域が配備地域のためか、この車両は、寒冷地仕様が選択されているとともに、FR車ではなく、AWD(4輪駆動)車となっていました。

 内装は「ビターブラック」で、引き締まりと高級感を漂わせていました[⑦]。セレクトレバーには、革製のブーツがつけられており、これもまた一段上の車のあることを主張しています[⑧]。ステアリングには本革が巻かれていましたが、最低グレードの車両では、革のないウレタンステアリングとなるため、レンタカーで貸し出す車両でありながら、非最低グレードの車両を用意しているようでした。

 後席は、今回は全く世話になることのない場所ですが、一応、眺めてみることにしました[⑨]。座り心地は良いものでしたが、乗り心地に関しては、実際に後席に座りながら走ってみないことには・・・。車内中央に見える大きな盛り上がりは、センタートンネルと呼ばれる部分で、後輪駆動(がベースの全輪駆動)車で特に目立ちます[⑩]。前輪駆動車(のみを設定した車種)では、これがもっと低いか、あるいはそもそも存在しません。

 エンジンはプッシュスタート式。エンジンをかけてみると、僅かな唸りと共にエンジンが始動し(うちの車に比べたらかなり静か)、スピードメーターの文字が浮かび上がるように出現。そして、走行距離などが表示されるマルチインフォメーションディスプレイには、マークXのロゴが登場します[⑪]

 で、まだお伝えしていませんでしたが、そもそも、レンタカーを借りて何をするつもりなのか?という話です。

 現在、山田線の釜石〜宮古間は不通となっていますが、これをどう取り扱うかという問題がありました。列車以外のもので移動しなければなりませんが、釜石〜宮古間に関しては、よくある不通区間とは異なり、JRは直々には代行バスを出さないということになっています。普通の路線バスを使え、ということですが、果たして”JRが運行しているわけではない”路線バスへの乗車をもって、釜石〜宮古間を乗車したことにして良いものか?

 そんな折、釜石〜宮古間を三陸鉄道の路線として復旧することが発表されました。JRの路線ではなくなる、ということで、乗車対象から外そうかなと思いましたが、例えそうであっても、山田線の宮古〜盛岡間を乗車するときは、もし釜石線で花巻〜釜石と来たら、その後は宮古へ行き、そして宮古〜盛岡と乗るのが自然です。つまり、乗車対象であろうとなかろうと、何らかの手段をもって、釜石から宮古へ行かなければなりません。

 そんなとき、「レンタカーで移動すれば、路線バスとは異なり、いろいろと寄り道ができる。それで釜石〜宮古間の休止中の駅を訪れながら宮古へ向かえば、それこそ、路線バスよりかは、”山田線の釜石〜宮古間を疑似的に乗車した”と言えるのではないか?」という発想が出てきました。今回、釜石でレンタカーを借りたのは、これが理由でした。

 では、なぜマークXになったのか。言うまでもなく、私は鉄道が好きであり、車に関しては、これまではほとんど興味がありませんでした。以前の私なら、「車なんて足なんだから、別に車種なんてなんでもいいじゃないか」と考え、それこそ安いからと、先ほどのヴィッツでも借りていたことでしょう(軽自動車は嫌がったろうかと)。しかし、困ったことに、いつごろからか、車に興味が湧いてくるようになりました。

 まず、前提条件として、釜石で借りて宮古で乗り捨てるということがあります。両市に店舗を置いているのはトヨタレンタカーのみであったため、この時点で、借りられる車はトヨタ車に限定されました。また、私は「セダンこそが至高の存在」と考えるほどの”セダン愛”者であるため、「トヨタのセダン」のみが選択の候補として挙がるようになりました。

 こうして候補に出てきたのは、<カローラアクシオ・アリオン・プレミオ>、<マークX>、<SAI・カムリ>、<クラウンロイヤル>、<クラウンロイヤルHV・アスリートHV>でした(<>は同価格帯のグループ分け)。まず、ネタになるからとクラウンを選んでみようかと思いましたが、価格帯が他の車種よりも明らかに高いこと、ネット予約はできず電話・窓口予約のみというところに「格の高さとバリア」を感じ、断念。

 次にSAI・カムリですが、このグループは車種を指定しての予約ができず、かつ同じグループには、ワゴンタイプのプリウスαが含まれているため、このグループで予約すると、セダンではないプリウスαに当たる可能性があり、断念。カローラアクシオなどは、いずれも5ナンバーサイズの小型セダンであり、「非日常感がない」「せっかくだから普段は乗れそうにもないものを」ということで、拒否。その結果、マークXとなりました。
















 マークXを駆って最初にやってきたのは、吉里吉里駅でした。釜石〜吉里吉里間には、両石・鵜住居・大槌がありますが、これらの駅に関しては、近くに車を安全に止められそうな地帯がなかったため、”通過”としました。鵜住居に関しては、当初は立ち寄る予定でしたが、旅行出発前にGoogle Earthで最新の空撮画像を確認したところ、周辺で工事が始まったことで立ち寄りができそうになくなっていたため、スルーしました。

 東日本大震災があってからしばらくの間は、駅舎は板を打ち付けられながらも残存していましたが、2012年2月に解体され、現在、跡地は車が停められそうな空きスペースとなり、その横には、「交流サロン ままりば」なるものが建てられていました[①]

 吉里吉里駅は、元よりやや高いところに位置していますが、ホームは、更に階段を上がった先にあります[②]。ホームについては、特に閉鎖措置などはとっていないようだったので、ちょっと入ってみることにしました[③]。これから先、いくつかの駅を訪れていきますが、ロープやフェンスで遮っている場合は、立ち入りを拒否しているとみなして外側から見学、そういったものがない場合は内側から見学、とすることにしました。

 「よしさとよしさと」で「吉里吉里(きりきり)」という特徴的な駅名[④]。吉里吉里は、この駅がある場所の地名でもありますが、その由来は、一説では、砂浜を踏んだ時の音である「キリキリ」から来ていると言われています。

 高いところに設置された駅ということもあり、津波の被害は被りませんでした。まだ新しい待合室も[⑤]、ホームや線路も[⑥]、状態は良好です。釜石〜宮古間は、三陸鉄道の路線として復活しますが、このような状態の良い場所があると、復旧工事の短縮化に一役買うことでしょう。
















 次に向かうのは岩手船越(浪板海岸は状態の良い駅で、訪れたかったのですが、車を停められそうなところがなかった)ですが、その前に、四十八坂展望台に寄ってみることにしました[②]。三陸復興国立公園に含まれる場所ですが、展望台にある立て看板は、旧名称の「陸中海岸国立公園」のままでした[③]。四十八坂は、かつて、ここが曲がりくねった道が続く交通の難所であったことに由来します。

 展望台からの眺めはというと、左右に生える木々のために視界が狭く、思っていたほど良い眺めではありませんでした[⑤]。木々も含めた自然全体を見るものだ、と言われれば、それまでではありますが。下の方を見ると、打ち寄せる波によって生み出された、独特の形状をした岩々が、訪れる者の目を惹きます[⑥]。下に芸術的な岩たち、前に広がる太平洋[⑦]。休憩も兼ねて立ち寄るのも、悪くはないかもしれません。


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