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 22:21発の米原行きの区間快速に乗車します[①]。有料列車以外の、岐阜を出る東海道本線の下り列車は、早朝・深夜を除き、全て快速系の列車となっていますが、岐阜以西では、どの快速も各駅停車となるため、事実上、普通列車として機能します。岐阜で折り返していく列車(主に普通列車)が多く、岐阜以西は本数が少なくなるため、快速系の列車が、普通列車としての役割を兼ねなければなりません。

 313系による区間快速がやってきました[②]。東海道本線の名古屋地区では、電車では、311系または313系が使用されていますが、先ほどの新快速に続き、313系となりました。いま思うと、311系には、まだ1度も乗ったことがありません。

 大垣を目指して西へ進んでいきます[③]。ムーンライトながら号は、言うまでもなく、岐阜駅にも停車しますが、岐阜からの乗車とすると、待ち時間がいたずらに長くなってしまうため、大垣まで迎えに行くことにしました。それなりに快適な寝台列車とは違い、減灯すらされない夜行快速であるため、「できる限り乗車時間を短くした方が良かったのでは」とは、この旅を終えてから漏らした思い。

 岐阜で多くの人が降りたため、あっさりと座席にありつけました。立っている人は見当たらず、かなり空いています[④]。西岐阜、穂積と停車すれば、次はもう大垣です[⑤]。列車は22:32に大垣に到着し、ここで下車しました[⑥]。名古屋都市圏の西端に位置する主要駅ということだけあり、下車した人の数はかなりのものでしたが、いかにも「ながら組」と思しき人も結構いました。私と同じような行動をとっている人が少なくないようです。
















 上りのムーンライトながら号は、大垣を22:49に発車します[①]。大垣〜東京間の距離は410kmで、終点の東京到着は5:05と、夜行列車としては、その走行距離と所要時間は短めですが、名古屋近郊を行き交う普通の列車であれば行かないようなところの駅名が停車駅として流れているところを見ると、旅情はたちどころに高まります[②]。座席夜行とはいっても、一応、夜行列車であることに変わりはありませんからね。

 22:40頃になって、5番線に、東京行きのムーンライトながら号が入線してきました[③]。現在は、185系10両編成が使用されており、ヘッドマークについては、専用のコマの用意はなく、「臨時快速」の表示にとどまっています[④]。列車が入線すると、先頭車両付近では、さっそく写真撮影大会が始まります。「多くの人から写真を撮ってもらえる」という点では、ある意味、185系における花形運用かもしれません。

 大垣駅は、寝台列車とはあまり関係のない駅(通過されるだけ)ですが、「夜行列車」という括りでいえば、大垣夜行に端を発する対東京の夜行列車の存在において、非常に深い縁があります。大垣〜東京間を往復する夜行普通(快速)列車は、1969年の10月1日に誕生しました。大垣夜行と呼ばれたこの列車は、名前を変えたり、使用車両を変えたりしつつも、2016年春も、臨時快速ムーンライトながらという形で存続しています[⑤]

 愛称幕は臨時快速ですが、側面の方向幕は、ムーンライトながら号用のものが表示されています[⑥]。ムーンライトという言葉の美しさとは裏腹に、この列車の中には、少なからず息苦しい雰囲気が漂います。お世辞にも快適とは言えませんし、お世辞にも財政的に余裕がある人たちが乗っているとは言えませんからね。それでも、この列車がありがたがられ、愛慕を寄せられるのは、もはや理屈ではないのでしょう。

 ムーンライトながらという名を得てから20年になりますが、名もなき「ガキヤ」の時代を知る人からも愛され、横文字の入った「ムーンライトながら」の時代に知った人からも愛されるこの列車が受け入れる年齢層は、実に幅広いです。寝台列車がクルーズトレインのような「選民」する列車へ生まれ変わっていく中でも、格安で乗れるという揺るがぬ要素を持っていること。ムーンライトながら号に宿る旅情とは、そこにあるのでしょうか[⑦]















 ムーンライトながら号に乗車する人たちは、大半は青春18きっぷを利用していることかと思いますが、私は、青空フリーパス+豊橋からの乗車券という組み合わせで乗車します。乗車券が豊橋からであるのは、青空フリーパスの効力として、日付が変わってから最初に停車する駅まで有効というものがあり、そして3月28日最初の停車駅が、0:15着の豊橋であるためです。

 となると、「グリーン車があれば喜んでそれにするのに」と思ってしまうわけですが(私の切符の組み合わせであれば、グリーン車指定席に乗れる)、ムーンライトながら号の185系は、グリーン車を抜いた編成となっています。そんなわけで、普通車指定席に乗車します[②]。踊り子号用の編成を回してくれていれば、グリーン車も連結されることになり、とても嬉しいのですが・・・(大垣夜行時代はあったのに)。

 今日の上りムーンライトながら号は満席とのことですが、空席が目立ちます[③]。高山本線からの乗り換えであれば岐阜、中央本線・関西本線からであれば名古屋、飯田線からであれば豊橋が、それぞれ便利ですから、そういった駅からの途中乗車が多いのでしょう。ただ、この列車では、「満席」という言葉は、安易には信用できません。1人で2席分の指定席券を購入し、座面で横になる不届き者が珍しくないからです。

 歯を磨かないことには眠れないということで、洗面所へ行ってみると・・・、なんと、未だにレバーを捻るタイプの洗面台が使われていました[④]。自動水栓とは言わないまでも、せめて、単水栓(ハンドルを回せば水が出る)か、自閉式水栓(ボタンを押すと一定時間水が出る)になっているものと思っていました。このレバータイプって、捻っている間しか水が出ないので、特に水を掬うのが難しいのです。

 列車は23:18に名古屋に到着します[⑤]。消灯したビルも増え始め、徐々に1日の終わりが近づいています。といっても、名古屋ですから、さすがに街全体が静まりゆくには、まだまだ早いですが。東海道新幹線については、既に発車列車はなくなっており、名古屋行きの列車が到着するのみとなっています。在来線は、0:20発の大府行きと高蔵寺行きが、名古屋駅の最終列車です。

 このとき、デッキにいたので、窓に顔を近づけてホームの様子を確認してみると・・・、おお、多くの人がいますね[⑥]。やはり名古屋といった途中駅からムーンライトながら号に乗ってくる人も多いようです。東京へ向かう夜行快速列車ということで、軽装の人はまず見られず、乗ろうとしていた人たちの多くは、スーツケースやリュックサックを携えていました。長距離列車ならではの風物詩的光景と言えます。

 ムーンライトながら号には何度か乗車していますが、ひとつ気が付いたのは、今回に限らず、中学生くらいの少年たちが少なくないということです。そして、彼らは、単独で乗車しているということはまずなく、大抵、2〜4人のグループで乗車しています。一応、青春18きっぷは、制度上、グループでの利用が認められていますが、実際にその制度を使っている人たちって、そういえば、案外見かけないかも。

 検札時、「青春18きっぷで旅をすることは、一人前の鉄道ファンになるための登竜門」、「青春18きっぷといえばムーンライトながら号でしょ」、「みんな(大人たち)がやっていることを自分もやれている」と言わんばかりに、青春18きっぷと指定席券を、胸を張って堂々と車掌に差し出す光景は、ちょっと微笑ましくもあります。あの目の輝きよう、そしてウキウキとした様子。ちょっとうらやましいかもしれません。

 余談として申し上げますが、いま思うと、いつからか、「まだ乗っていないところに乗らなければ」、「JR線を全て乗り尽くさなければ」という思いだけが先行するようになって、「楽しみながら旅をする」とか、「好奇心に駆られたから出かけてみる」といった要素が、抜け落ちがちになっていたような気がします。あの中学生たちのような、純粋に今その瞬間を楽しめる純真さを、私はいったい、いつ失ってしまったのかなぁ、と。


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