●9月1日●
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−Day:2 幸せ求め最果ての地に−

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 旭川で一夜を明かし、9月1日になりました。昨日に引き続き今日も快晴で、気持ち良く一日を始めることができました。

 駅の高架化工事や駅前広場の整備は完了していますが、旭川駅のすぐそばで、何やら建設工事が行われています[③]。駅前に林立する高層建築に匹敵する、いや、それらを上回ろうかという高さまで伸び上がっているこの建物は、旭川駅の新しい駅ビルです。11階建ての建物となり、イオンモールとJRイン(ホテル)が入居し、2015年の春に完成する予定となっています。

 今日は宗谷本線を進んでいきます。宗谷本線は、旭川〜稚内間を結ぶ路線で、文字通り、北の最果ての地へ向かって伸びていく路線です。これから9:17発の特急スーパー宗谷1号に乗車します[④]。旭川を出ると、和寒、士別、名寄・・・の順に停車していきますが[⑤]、これらの停車駅は、宗谷本線を走る3往復の特急列車全てで共通のものであり、列車ごとの停車駅の違いはありません。

 今となっては、宗谷本線に乗るとなったら、スーパー宗谷号などでそのまま一直線に稚内まで行くほかありませんが、これが昔なら・・・、名寄駅に降りて深名線に乗るとか、名寄本線に乗るとか、美深駅に降りて美幸線に乗るとか、やらなければならないことがたくさんあったはずです。今や、石北本線が接続する新旭川駅を除き、宗谷本線に、他の鉄道路線が接続する駅はありません。

 スーパー宗谷号の基本編成は4両。増結を行って6両編成になることもありますが、今日のスーパー宗谷1号は4両です。札幌〜稚内という長距離を走る列車ということで、指定席の需要が高いとみているのか、スーパー宗谷2号、3号、4号では、4両中3両が指定席車両となっています。しかし、1号では、なぜか他の列車では指定席となる2号車が自由席となっていて、指定席車両は4両中2両となっています[⑥]

 スーパー宗谷1号は札幌7:48発で、旭川までの自由席利用のビジネス客に対応するために自由席が2両となっているのではないか・・・、と予想しますが、さて実際のところは。しかし、そのせいで指定席の座席数が少なくなっていることはたしかで、今日のスーパー宗谷1号の普通車指定席は、満席となっていたようです。さあ、間もなく列車が来るようです[⑧]




























 キハ261系のスーパー宗谷1号がやってきました[①]。JR北海道の他のスーパー特急と同じ、高運転台に貫通扉というお決まりの形態を持ちながらも、増結車と連結するための幌を隠さずに走るその無骨な様は、他のスーパー特急とは一味違う特徴となっています。

 新旭川駅は、宗谷本線と石北本線の分岐駅[②]です。一般的には、石北本線は旭川〜網走間の路線として案内され、認識されていますが、厳密には、新旭川〜網走間の路線です。もっとも、そうやって厳密に取り扱うのは、乗り潰しを標榜する鉄道ファンくらいでしょうけど。

 旭川駅には、函館本線の電車特急のスーパーカムイ号や、電車普通列車の711系や721系が入線しますが、それらの車両は、旭川より先に行くことはありません。つまり、宗谷本線や石北本線の列車として走ることはないということです。では、なぜ、宗谷本線を走るスーパー宗谷号の車内から、電車用の架線が見えているのでしょうか?[③]

 車両基地である旭川運転所には、電車は配置されていません。しかし、785系など、函館本線を走る電車を留置します。旭川運転所は、もともとは旭川駅のすぐ近くにありましたが、旭川駅の高架化に絡み、新旭川駅のやや北・・・、JR貨物の北旭川駅の近くに移転することとなりました。

 場所を移すことになりましたが、電車の留置は、従来通り行う必要があったため、”函館本線の電車の回送用”として、宗谷本線は、旭川〜新旭川〜旭川運転所間が電化されることになったというわけです。

 その旭川運転所には、大量のラッセルヘッドが、ずらずらと連ねられた状態で留置されていました[④]。夏は使わないので、こういう具合にどこかに置いておく必要があるのはもちろん分かりますが・・・、まるで生首を並べたかのようで、かなり気持ち悪い光景です。また、「ラッセル車」というと、機関車とこのラッセルヘッドが一体になった状態を思い浮かべるので、ラッセルヘッドだけを切り離しているという光景にも、妙な違和感を覚えます。

 9:57に到着するのは士別。上りの札幌行き特急スーパー宗谷2号と列車交換を行います[⑥]。スーパー宗谷2号は、稚内を7:00ちょうどに出ていますが、終点の札幌に着くのは、もうお昼時の12:06です。稚内から札幌まで、5時間以上の道のりです。

 なんとなくアイスクリームが食べたくなってきたので、車内販売で、りんごのアイスクリームを購入しました[⑦]。このときは、バニラ、りんご、ひまわりの3種類が用意されていましたが、バニラは普通すぎてつまらない、ひまわりは怪しいにも程があるということで、りんごを選択しました。真夏のような暑さではありませんが、ついつい、こういうものに手が出ちゃうんですよね(実は冬の方が手が出やすいんですが・・・)。

 間もなく名寄駅に到着するというころ、キマロキ編成が見えてきました[⑧]。キマロキ編成とは、かみ砕いて言うなら、通常のラッセル車よりもさらに強力な排雪能力を持つ特別な除雪車(編成)のことで、名寄駅の近くに、その編成が保存されています。キマロキ”編成”と言うように、これは1両の車両ではありませんが、名寄駅近くのその保存編成は、編成を構成する4両の車両が、実際の編成を組んだ状態で保存されています。

 そして10:11に名寄に到着[⑨]。旭川〜名寄間は本数が多く、なよろ号という愛称をつけられた快速列車も、1日に4往復走っています。名寄から先は列車の本数が激減し、「最果ての地へ行く路線」という雰囲気がより強くなります。

 宗谷本線の高速化事業に伴う路盤改良などが行われた区間は名寄までで、名寄から先は、特に手が加えられていない区間となっています。名寄から先は、昔からの木製の枕木が使用され、まさにローカル線という状態です[⑫]。札幌〜名寄間は120km/hで飛ばしてきたスーパー宗谷号も、最高速度が95km/hに制限されます。

 黒い駅そばが有名な音威子府駅には、10:57に到着します[⑬]。ホームには、木の丸太で作られた蒸気機関車が置かれていました。音威子府村は、人口約800人という非常に小さな村であり、急行ならともかく、特急が停車するのはどうなんだと思いたくなりますが、そのような小さな村であっても、その自治体を代表する駅ともなれば、特急が停車するに値する主要駅として取り扱われるようです。かつては天北線が分岐していました。

 JR北海道の特急型車両では、車内の情報表示機に、次の駅までの距離が流れることがあります[⑭]。次の停車駅までの距離が分かるのは便利ですが、あくまでも「距離」であって、残りの所要時間ではないので、あと5kmと表示されているからといって、すぐに到着するとは限りません。

 トンネルがなく、ずっと青空を見ていられる[⑮]。それは、宗谷本線の特徴のひとつですが、糠南〜雄信内間に、下平トンネルという、宗谷本線唯一のトンネルがあります[⑯]。全長は約1200mと、そこそこ長いです。このトンネルは、1965年の線路付け替えによって誕生したトンネルで、それがなければ、宗谷本線は、今でも全線トンネルなしという路線だったかもしれません。

 一気に稚内まで行って、宗谷本線の全線乗車を完了させたいところですが、スーパー宗谷1号を豊富で下車します[⑰]。サロベツ湿原への最寄りとなる駅ということもあってか、私以外にも、何人かのお客が降りて行ったようでした[⑱]























 豊富駅にやってきました。豊かに富むと書いて「豊富」と、なんだか縁起のよさそうな駅名(地名)です。なお、読みは「とよとみ」です。間違っても「ほうふ」ではありませんよ!駅で「ほうふ」などと言おうものなら、山口県の防府駅までの切符を出されるかもしれません(笑)

 豊富というこの地名は、北海道の地名としては珍しく、アイヌ語を名前の直接の由来としていません。北海道の地名は、アイヌ語の読みに漢字を割り当てて地名にしたり、アイヌ語のその意味を地名にしたりしたところが多いですが、豊富町はそうではないようです。

 町内を下エベコロベツ川という川が通っていますが、その流域にエベコロベツという地名があります。エベコロベツとは、アイヌ語で「魚(食物)を持つ川」という意味です。また、石炭をはじめとする天然資源に恵まれた土地であり、そこから、なんでも豊富(ほうふ)にある町、転じて、豊富(とよとみ)となったとのことです。アイヌ語から直接名前を付けていたら、頃別町、魚川町とでもなっていたのでしょうか。

 豊富町の二大観光資源は、サロベツ原野と豊富温泉。駅前にある「門」にも、「サロベツ 豊富温泉」と書かれています[⑤]。豊富温泉は、日本で最も北にある温泉郷であり、稚内が「日本最北の●●」をほぼ独占する中、「日本最北の温泉郷」の座を手にしています。

 駅のすぐ近くに、使用されなくなった救援車が保存されています[⑦]。保存されていると言っても、まともに整備をしていないのか、車体が錆びだらけになっています。また、車両を紹介するような看板も立っておらず(オエ61-67というものらしい)、放置同然の状態になっています。

 片開き扉があるところへ階段が接続していたので、中へ入れることを期待して上ってみましたが、錆に錆びているせいか、扉はびくともしませんでした。わざわざ階段を接続しているくらいですから、以前は車内へ入れたのではないかと思うんですが。また、扉の窓ガラスは割れていて、この車両の保存状態の悪さが窺い知れました[⑨]

 せめて中くらい覗いておこう、と思い、扉の隙間から中を窺ってみましたが・・・、車内のそのなんと汚いことか[⑩]。剥がれ落ちたと思われる木くずや鉄くずが散乱していて、座席の表地はボロボロで、木製の壁にはヒビが入っていました。

 一応、除雪作業に使うスコップやそりがあるのが確認できたので、もしかしたら、これは倉庫として活用されているものなのでしょうか? 階段も、車内を見てもらうためにつけているのではなく、関係者が中にあるものを取り出すためにつけているのでしょうか。となれば、扉がびくともしなかったのは、鍵か何かをかけていたからなのかもしれません(じゃあなんで半開きなんだろうかとも思いますけど)。

 豊富駅の横には、観光情報センターがあります[⑫]。今回、ここ豊富駅で降りたのは、サロベツ原野(サロベツ湿原センター)に行きたかったからですが、この観光情報センターで、自転車を借りることができます[⑬]。駅前からサロベツ湿原センター方面へのバスが出ているのは百も承知。でも、せっかくの晩夏の北海道です。バスなんかで行くのではなく、自転車で風を切りながら行こうじゃありませんか。

 レンタサイクルは1時間300円、手荷物預かりは、1つにつき200円です。なお、観光情報センターの営業は16:00までなので、自転車は、それまでに返却する必要があります。


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