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 奥羽本線の普通列車は、青森駅の5番線に到着しましたが・・・、その隣の6番線に、何やら見慣れぬ緑色のヤツ。なんということでしょう、こんなところで、大阪行きの上りのトワイライトエクスプレス号に遭遇してしまいました[①]。時刻はまだ22時前くらいですが、もう北海道を抜けて、本州の青森まで来ているんですね。まあ、札幌14:05発ということを考えると、何ら不思議ではないのかもしれませんが。

 22時前くらいということで、食堂車では、パブタイムの営業が行われているようでした。トワイライトエクスプレス号の食堂車・ダイナープレヤデスは、北斗星号のグランシャリオよりも豪華さにあふれ、カシオペア号のダイニングカーよりも重厚さにあふれています。それはホームから見ていても分かります。いつかは乗りたいと思っていたトワイライトエクスプレス号、さて、私は乗ることができるのかどうか・・・。

 一方、3番線には、これまた何やら見慣れぬ青色のヤツ[⑤]。「青色の客車」のブルートレインを、見慣れぬヤツと表現しなければならない時代になっていることに深い悲しみを覚えてしまいますが・・・、実際、定期列車として走る「青い客車」は、北斗星号とはまなす号しかないわけでして・・・。

 次に乗る列車は、青森22:18発の急行はまなす号です[⑥]。入線時刻は21:45なので、私が青森駅に到着した時点で、既に3番線に入線していたことになります。始発駅から夜行列車に乗るときは、入線をホームで出迎えるというのが個人的な儀式なんですが、間に合いませんでした。

 ただ、はまなす号の入線を出迎えるには、新幹線を1本早い、新青森20:42着のはやぶさ29号にする必要があり、そうすると、それ以前の旅程に重大な支障をきたしてしまいます。”儀式”ができなかったことは残念ですが、発車寸前でのぎりぎりの乗り換えとはなっていないので(一応、普通列車での青森到着からはまなす号での青森発車まで、26分はありますからね)、まあよしとしましょう。

 週末の土曜日発の列車だったからでしょうか、寝台車が1両増結されていました。その増結の寝台車は、普段から連結される寝台車である、1号車と2号車の間に挿入されますが、2号車ではなく、「増21号車」を名乗ります[⑦]。このようにすることにより、通常の2号車以降の車両を、3号車、4号車・・・と変更せずに済み、号車番号札の差し替えの手間を省くとともに、マルスでの指定席券の発券が普段通りに行えるようになります。

 乗客、ホームを歩く人、あるいは写真撮影をしている人を見ると、軽装であったり、バックパッカー風の格好であったり、北海道&東日本パスを利用した「貧乏旅行」中に見えたりする人が多かったです[⑧]。このあたりは、同じ夜行列車でも、やはり先ほど見たトワイライトエクスプレス号の客層とは対照的というところでしょう。あちらは、裕福な人向けの「豪華寝台列車」ですが、こちらは、庶民的な「みんなの急行列車」です。

 「札幌」を行き先として表示する青い客車列車といっても、正直なところ、上野駅で北斗星号が札幌行きの表示を出している光景を見るときほどの高揚感はありません[⑫]。それは、この列車が急行列車だからなのでしょうか。それとも、さして豪華というわけでもない、「日常」の域を出ない列車だからなのでしょうか。しかし、それだけに、幅広い層から愛用される列車でもあるように思います。

 はまなす号には、普通車自由席、普通車指定席、カーペットカー(普通車指定席)、開放式B寝台の4つの設備がありますが、今回は、普通車指定席を選択しました[⑬]。夜行の長距離列車で自由席は色々と危険と思ったので却下、カーペットカーは満席、開放式B寝台は戻りのはまなす号で乗車する予定である、ということで、普通車指定席となりました。

 座席の普通車指定席といっても、はまなす号のそれは、普通の座席車ではありません。特急型車両でグリーン車として使用されていた座席を流用した豪華な普通車指定席、「ドリームカー」です[⑭]。天井が見えるほどに深く倒れる背もたれに、グリーン車並みの1160mmの座席間隔、靴を脱いで足が伸ばせる足置きなど、急行列車の普通車とは思えない、超豪華な車両となっています。

 では、そろそろ乗車しましょうか。まずは急行はまなす号で、札幌駅まで移動します[⑮]






















 ドリームカーの座席は、特急型車両のグリーン車で使用されていたものではありますが、2+2配列で使用されていたので、座席はどちらかというと小ぶりです。それほど大きなものではありません。ただ、肘掛けの側面から引き出して使う小型のテーブルなど、「国鉄型車両のグリーン車」らしさを存分に感じさせる要素が今でも残っています[①](写真は別の機会の乗車時に撮影)。

 この日8月30日の下りのはまなす号の普通車指定席は、発車前に空席照会をかけたところの結果では、満席となっていました。青森→札幌間の所要時間は約8時間であり、その間、隣に人がいるという狭苦しい空間で過ごすのも、なかなか苦なものです。しかも、便所などに行こうと思って通路に出ようとする際は、隣の人が起きている場合が多い昼行列車の場合と違い、眠っている人を起こさずに出る必要があります。

 それもどうなんだと思ったので、実は、私は、開放式B寝台への変更を試みていました。仙台駅のみどりの窓口に行ってみましたし、青森駅で、はまなす号の車掌に直接掛け合ってもみました。ただ、どちらのときでも、返ってきた答えは「満席です」。で、結局、ドリームカーで我慢することとなりました(JRサイバーステーションの空席照会では、開放式B寝台は「○」だったんですけどねぇ・・・?)。

 今日は満席ということで、青森を発車する前の時点で、車内は相当な混雑となっていました[③]。荷物棚を見てみると、スーツケースが結構あったので、私のような長距離旅行者の利用もかなりあるようです。その一方、はまなす号に乗るだけ乗ってとっとと帰ってくるのか、あるいはふらっと札幌に遊びに行くのかと思わせるような軽装の人も多くみられました。

 列車は青森を出ると、まずは蟹田で運転停車します。はまなす号は、JR東日本の区間である青森〜蟹田(中小国)間も、運転士・車掌共にJR北海道の人が担当するので、乗務員の交代のための運転停車ではないようです。2014年3月のダイヤ改正以前は、蟹田で上りのカシオペア号と列車交換を行っていたので、その名残ではないかと思います。

 蟹田を出ると車内が減灯され、夜行列車らしくなってきます。その後しばらくしてから、必要なものを巾着に入れてまとめ、私は、最後尾の7号車へと向かいました。せっかく後面展望ができるはまなす号に乗っているわけですから、是非それをやりたいと思いましてね。

 洗面所にある小窓は開閉が可能なので、外の空気を感じることができます[④]。また、7号車の車掌室寄りのデッキには、飲み物の自動販売機が置かれていますが、ここでは、北海道限定の、ポッカコーヒー「ファイターズ缶」が売られています[⑤]。これはモーニングコーヒーとしておきましょう。

 全ての指定席車両が満席であるのと対照的に、自由席はガラガラのようでした[⑥]。長時間乗車する夜行列車ですから、確実に座れるよう、指定券を確保して乗る風習となっているのか、それとも、自由席の簡易リクライニングシートという貧弱な座席を避けようとしているのか、利用客は、指定席(寝台)車両に集まるようです。このガラガラぶりを見るに、ドリームカーよりも、この自由席の方が、よほどゆったりと過ごせそうでした。

 既に先客がいたらどうしようかと思いましたが、幸い、7号車の車掌室寄りのデッキには、誰もいませんでした。22:58ごろに、トンネル内で上りのカシオペア号とすれ違い、23:12ごろには、青函トンネル内で上りの北斗星号とすれ違いました。どちらの列車も、はまなす号の対極に置かれる、「豪華寝台列車」です。ああ、向こうの人は寝台でゆったりしているんだろうな、と思うと、少し羨ましいですね。

 青函トンネルには23:06に突入し、23:47に脱出します。ただ、青函トンネルを抜けたからといって、すぐにずっと夜空の下を走るようになるわけではありません。青函トンネルを脱出した後も、トンネルがいくつか続きます[⑧]。一定の間隔で蛍光灯が配置され、灰色の筒状のものが単調に後ろに流れていくだけの光景は、つまらないと言えばそれまでですが、後面展望ならではのものでもあります。

 運転停車を行う木古内駅で、見覚えのない赤色の機関車に遭遇しました[⑨]。この写真だけだと、何が何だかよく分からないかもしれませんが、この機関車は、青函トンネルの架線電圧昇圧に対応するための新しい電気機関車、EH800形です。どうやら試運転を行っているようでした。

 木古内では、さらに、上りの貨物列車と列車交換を行いました[⑩]。機関車の前照灯が闇夜を切り裂くように照らし、コンテナを連ねた貨車が、それに付き従っていきます。光もしない”物体”がずっと流れているかと思うと、締めくくりとなる最後尾の貨車が、赤色の尾灯をわずかに輝かせながら、一筋の光線を残して、レールの先に消えていきました[⑪]

 はまなす号はこの後、木古内行きの普通列車と交換するために、泉沢駅にも運転停車します。そして0:44、最初の停車駅、函館に到着します[⑫]
























 0:44、列車は函館駅に到着しました[①]。乗降扉が開き、「ご乗車、お疲れ様でした。函館、函館です」という放送が聞こえてくると、「北海道に来たんだなぁ」と強く思います。冬場であれば、暖房の効いた車内とは対照的なピリッと来る寒さが心地よいです(今年の1月・2月に、北斗星号で函館駅のホームに降り立ったときはまさにそうでした)が、8月末という時期だけに、函館駅も、車内とそう大差ない微妙な気温でした。

 下りのはまなす号の函館発車は、深夜の1:23[②]。到着が0:44なので、約40分の停車時間があります。この停車時間を利用して、いったんホームに出て、写真撮影に興じる人が多くいるのは、想定の範囲内のことですが、荷物を持って車内から出てきた人・・・、つまり、本当にはまなす号から下車した人も結構いたことには驚きました。

 今からホテルにチェックインしに行くとも思えませんし、まさか、函館駅で夜を明かすつもりでしょうか。あるいは、函館駅周辺に住んでいる人が、本州方面の旅行から帰ってきたのでしょうか。また、この後、函館3:22発の青森行きの上りのはまなす号がありますから、それに乗ることで、上下のはまなす号を宿代わりにすることもできなくはありませんが・・・。

 はまなす号で使用される客車の状態は、決して良くはありません。車体が汚れているだけならまだマシな方で、外板が剥がれている車両も珍しくないというのが実情です[④]。増21号車として使用されている24系も、塗装が色褪せ、黒ずんでいて、「ブルートレインと称される、あの艶やかな車体はどこへいったしまったのだろう」と嘆かずにはいられません[⑤]

 函館から先は非電化区間が存在するので、牽引機関車が、ED79形からDD51形になります。ED79形のもとへ行ってみると、機関車は、既に客車からは切り離されていました[⑦]。この写真を見るとお分かりいただけるかと思いますが、各種夜行列車を牽引するED79形は、両方の先頭部にヘッドマークを取り付けています(ヘッドマークを全くつけないトワイライトエクスプレス号を除く)。そのため、”内側”にもヘッドマークがあります。

 ドリームカーは、はまなす号の象徴のひとつと言えますが、それ以上にはまなす号を象徴するのは、4号車に連結される「カーペットカー」でしょう。285系のノビノビ座席のような車両で、急行料金+指定席料金で利用でき、寝台料金不要でありながら、カーペットで横になって寝ることができるという、非常に利用価値の高い設備です。そのうえ、開放式B寝台と同様に、枕、掛け布団、ハンガーが提供されるのですから、驚きです。

 そんなカーペットカーは、設備的に見ても、はまなす号の象徴と言えますが、車両的に見ても、はまなす号の象徴と言えます。縦幅の短い、細長い窓が上下に配置されるその独特の車両外観は、外から編成を眺めたときに最も目立つ、まさに象徴的な車両として存在感を放っています[⑨]

 ホームの札幌方面へ行ってみると、既にDD51形が連結され、発車のときを待っていました[⑪]。DD51形が重連で牽引する各種寝台特急と違い、はまなす号は基本的に、DD51形が単機で牽引します。繁忙期の増結によって12両編成になるときでも同様です。急行列車ですが、絵入りのヘッドマークを掲げ、青色の客車を従えるその様は、正統派のブルートレインにも劣らない魅力と雰囲気があります。

 ふと上を見てみると、「青森行はまなす 6号車 禁煙 指定席」・・・といった乗車位置案内板が目に入りました[⑫]。北斗星号、カシオペア号のものもあります。北斗星号のものには、号数を差し込むための札受けもついていました。北斗星号が1往復化されてからは、あそこに号数の札を差し込むこともなくなったはずです。「北斗星□号」という妙な隙間が、2往復、3往復、臨時便・・・と運転されていたころの栄華を忍ばせます。

 あれやこれやと写真撮影に興じているうちに、長いと思っていた約40分の停車時間も終わり、発車のときを迎えました。札幌へ向けて、進行方向も新たにしたはまなす号は、再び、夜の闇へと飛び出していきます[⑭]


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