ドリームカーの座席は、特急型車両のグリーン車で使用されていたものではありますが、2+2配列で使用されていたので、座席はどちらかというと小ぶりです。それほど大きなものではありません。ただ、肘掛けの側面から引き出して使う小型のテーブルなど、「国鉄型車両のグリーン車」らしさを存分に感じさせる要素が今でも残っています[①](写真は別の機会の乗車時に撮影)。
この日8月30日の下りのはまなす号の普通車指定席は、発車前に空席照会をかけたところの結果では、満席となっていました。青森→札幌間の所要時間は約8時間であり、その間、隣に人がいるという狭苦しい空間で過ごすのも、なかなか苦なものです。しかも、便所などに行こうと思って通路に出ようとする際は、隣の人が起きている場合が多い昼行列車の場合と違い、眠っている人を起こさずに出る必要があります。
それもどうなんだと思ったので、実は、私は、開放式B寝台への変更を試みていました。仙台駅のみどりの窓口に行ってみましたし、青森駅で、はまなす号の車掌に直接掛け合ってもみました。ただ、どちらのときでも、返ってきた答えは「満席です」。で、結局、ドリームカーで我慢することとなりました(JRサイバーステーションの空席照会では、開放式B寝台は「○」だったんですけどねぇ・・・?)。
今日は満席ということで、青森を発車する前の時点で、車内は相当な混雑となっていました[③]。荷物棚を見てみると、スーツケースが結構あったので、私のような長距離旅行者の利用もかなりあるようです。その一方、はまなす号に乗るだけ乗ってとっとと帰ってくるのか、あるいはふらっと札幌に遊びに行くのかと思わせるような軽装の人も多くみられました。
列車は青森を出ると、まずは蟹田で運転停車します。はまなす号は、JR東日本の区間である青森〜蟹田(中小国)間も、運転士・車掌共にJR北海道の人が担当するので、乗務員の交代のための運転停車ではないようです。2014年3月のダイヤ改正以前は、蟹田で上りのカシオペア号と列車交換を行っていたので、その名残ではないかと思います。
蟹田を出ると車内が減灯され、夜行列車らしくなってきます。その後しばらくしてから、必要なものを巾着に入れてまとめ、私は、最後尾の7号車へと向かいました。せっかく後面展望ができるはまなす号に乗っているわけですから、是非それをやりたいと思いましてね。
洗面所にある小窓は開閉が可能なので、外の空気を感じることができます[④]。また、7号車の車掌室寄りのデッキには、飲み物の自動販売機が置かれていますが、ここでは、北海道限定の、ポッカコーヒー「ファイターズ缶」が売られています[⑤]。これはモーニングコーヒーとしておきましょう。
全ての指定席車両が満席であるのと対照的に、自由席はガラガラのようでした[⑥]。長時間乗車する夜行列車ですから、確実に座れるよう、指定券を確保して乗る風習となっているのか、それとも、自由席の簡易リクライニングシートという貧弱な座席を避けようとしているのか、利用客は、指定席(寝台)車両に集まるようです。このガラガラぶりを見るに、ドリームカーよりも、この自由席の方が、よほどゆったりと過ごせそうでした。
既に先客がいたらどうしようかと思いましたが、幸い、7号車の車掌室寄りのデッキには、誰もいませんでした。22:58ごろに、トンネル内で上りのカシオペア号とすれ違い、23:12ごろには、青函トンネル内で上りの北斗星号とすれ違いました。どちらの列車も、はまなす号の対極に置かれる、「豪華寝台列車」です。ああ、向こうの人は寝台でゆったりしているんだろうな、と思うと、少し羨ましいですね。
青函トンネルには23:06に突入し、23:47に脱出します。ただ、青函トンネルを抜けたからといって、すぐにずっと夜空の下を走るようになるわけではありません。青函トンネルを脱出した後も、トンネルがいくつか続きます[⑧]。一定の間隔で蛍光灯が配置され、灰色の筒状のものが単調に後ろに流れていくだけの光景は、つまらないと言えばそれまでですが、後面展望ならではのものでもあります。
運転停車を行う木古内駅で、見覚えのない赤色の機関車に遭遇しました[⑨]。この写真だけだと、何が何だかよく分からないかもしれませんが、この機関車は、青函トンネルの架線電圧昇圧に対応するための新しい電気機関車、EH800形です。どうやら試運転を行っているようでした。
木古内では、さらに、上りの貨物列車と列車交換を行いました[⑩]。機関車の前照灯が闇夜を切り裂くように照らし、コンテナを連ねた貨車が、それに付き従っていきます。光もしない”物体”がずっと流れているかと思うと、締めくくりとなる最後尾の貨車が、赤色の尾灯をわずかに輝かせながら、一筋の光線を残して、レールの先に消えていきました[⑪]。
はまなす号はこの後、木古内行きの普通列車と交換するために、泉沢駅にも運転停車します。そして0:44、最初の停車駅、函館に到着します[⑫]。
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