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 16:12、客車列車特有の「ドンッ」という揺れを合図に、カシオペア号は、札幌駅を発車しました[①]。上野まで17時間強の長い旅の始まりです。しかし、17時間以上乗るとは言っても、この列車は今回の旅で乗る最後の列車ですから、旅の終わりが近づいていることだけは、否が応でも実感させられなければなりません。上野駅のホームに降り立つその瞬間が、旅の終わりです。

 しなければならないことはいろいろあるはずですが・・・、何からどう始めれば良いのかよく分かりません。まず、テーブルの上に置いてあったパンフレットを開いてみました[②]。カシオペア座を表紙に描いたパンフレットには、設備案内や編成案内が掲載されています[③]。なお、各個室では衛星放送が視聴できるので、衛星放送の番組表が挟まれています。

 しばらくすると、検札に先駆けて、ウェルカムドリンクの配布が行われました[④]。オレンジジュース、ウーロン茶、日本茶の3種類から選ぶことができ、私は、オレンジジュースを選択しました。このウェルカムドリンクと同時に「モーニングドリンクチケット」なるものが渡されますが[⑤]、これは、翌朝にコーヒーやお茶といった飲み物を貰うための引換券です。つまり、カシオペア号では計2回、無料で飲み物が貰えるということです。

 検札の後、3号車にある食堂車・ダイニングカーへ向かいました。もちろん、食堂車で食事をするためではありません。シャワー券(320円)とタオルセット(430円)を購入するためです[⑥]。上級個室のカシオペアデラックス・カシオペアスイートでは、部屋にシャワーが併設されていますが、カシオペアツインにはシャワーがないので、シャワー券を購入して共有のシャワー室を利用することになります。

 仮にも夏なので、シャワーを浴びずに眠るわけにもいかないと思い、なんとしてもシャワー券を購入しなければと思っていましたが・・・、皆考えることは同じなのか、私がシャワー券を購入するときには、本日中の枠は全て埋まっていました(カシオペア号のシャワーは30分ごとの枠で区切られた予約制です)。結局、翌日の枠の中から、8:00〜8:30の枠を予約しました。シャワー券は始発駅を出発する前に購入されることをお勧めします。

 では、ここからカシオペアツインの室内のご紹介をしていきましょう。まずは洗面所から。個室内に折り戸の扉があり[⑦]、その内部は、洋式便所や洗面台、鏡を備えた洗面所となっています[⑧]。便器は蓋付きで[⑨]、使用後は閉じておけば、匂いを軽減できます。洗面台は用便時に支障しないように壁に収納できるものとなっていて、使用時は壁から引き出して使用します[⑩]

 鏡の中は物入れにもなっています[⑪]。この中に使い捨ての歯ブラシとコップ、石鹸が入っていますが、この部屋は、3人での利用にも対応した部屋なので、歯ブラシとコップに関しては、それぞれ3つ入っています。

 なお、今回は1人での利用なので部屋の狭さは全く感じませんが、通常の2人用部屋(補助ベッドのない)を2人で利用する場合は、荷物などのせいで、部屋がやや狭く感じられるかもしれません。場合によっては、このように洗面所を荷物置き場にしてしまうのもアリかもしれません[⑫]

 衛星放送などが見られる液晶モニターは、停車駅の案内も行います。間もなく駅に到着するということを表示したり、今その駅に停車していることを表示したりします[⑬]。液晶モニターの下にはコントロールパネルがありますが、特記すべきは、「放送音量」の調整スイッチでしょう[⑭]。車内放送はいらないと思えば、音量を絞ることで、静かな個室環境を維持できます(ゼロにはできないようです。また、緊急時は通常の音量で放送されます)。

 苫小牧を発車した後、一度廊下に出てみました[⑮]。カシオペア号は、全寝台が個室です。誰もいない廊下に、陽光だけが差し込んでいました。
























 列車は海が見える区間に入りました[①]。間もなく夕暮れ時です。カシオペア号の個室は全て、札幌〜函館間で海側になる側に配置されています。それだけでなく、窓は眺望に優れた大きめのものなので[②]、個室からの視界が広いです。

 引き続き、室内の設備などを見ていきましょう。部屋に入ってすぐのところに、ハンガーが3つかけられています[③]。クローゼットまではさすがにありませんが。壁には2か所、小物置き場が取り付けられていて[⑥] [⑦]、こまごましたものを置くのに活用できます。ただ、ベッドに寝ながら届くようなところにあるわけではないので、ナイトテーブルのように使うことはできません。眼鏡や携帯電話を置いても、立ち上がらないと取れません。

 2つある床置きのベッドは、初期状態では向かい合わせのソファーとなっています[⑧]。就寝する際は、これをベッドに組み替えます(やり方は後ほどご紹介)。肘掛けとして利用するためのブロックが、各座面に1個ずつ置かれています。座面の下はくりぬかれていて、使い捨て式のスリッパと靴磨きが収められています[⑨] [⑩]。寝台個室という限られた空間をいかに活用するかの腐心が垣間見えます。

 カシオペア号は「全車2階建て車両」として知られています(厳密にはそうではありませんが・・・)。そのため、下級個室のカシオペアツインは、部屋数を確保するためでしょう、2階室と1階室を置く2階建ての構造になっています。その代わり、1部屋1部屋の天井は低いです。もし狭さや圧迫感を感じるとすれば、そのような天井の低さが、理由の1つとして挙げられるでしょう。

 しかし、3人でも利用できるタイプのカシオペアツインは、台車直上の車端部にあり、平屋構造となっています。そのため、普通のタイプの部屋よりも天井が高く、広々としていて開放感があります[⑪]。それゆえ、札幌を発車したときから常々思っていたことですが、部屋が1人で利用するにはあまりにも広すぎて、正直、落ち着きませんでした(笑) 言うなれば、学校の教室の無駄に天井が高い感じ、でしょうか・・・。

 部屋の中には、JR北海道の車内誌「THE JR Hokkaido」が置かれていますが、やはり3冊あります[⑭]。改めて、ここは3人で利用することが前提となっている部屋なんだな、と思わされます。別にこのタイプの部屋を所望したわけではなく、空室となっていたカシオペアツインの部屋がたまたまこれだっただけですが、3人でも使える部屋を1人で使うことに対するお得感は、通常のタイプの部屋の場合よりもはるかに大きいです。

 17:37、列車は登別に到着しました[⑮]。ここから乗ってくる人はいたのでしょうか。カシオペア号・北斗星号ともに、道内は北斗号・スーパー北斗号とほぼ同等の停車駅となっていますが、上りで多く乗車してくるのは、やはり札幌と函館でしょう。

























 このタイプの部屋において最も重要な存在である補助ベッドについて見ていきましょう。補助ベッドは、初期状態では、部屋に入って右側の壁に寄せた状態で収納されています[①]。補助ベッド裏面の左側にベッドの表地と同じ柄の布帯がついており[②]、これを手前に強く引っ張ることで、ロックが外れて補助ベッドが展開されます[③]。補助ベッドはもちろん転落防止の柵付きです。

 補助ベッドに上がるための階段の脇に、寝具類がまとめて置かれています[⑤]。2人分の枕、シーツ、掛け布団はそのまま置かれていますが、フェイスタオルと浴衣に関しては、2人分のものも、ビニール袋に入れられた状態で置かれています[⑥]。補助ベッドの分・・・、つまり3人目の分は、全てビニール袋に入れられています[⑦]

 「3人でも利用できるタイプの部屋」と言っても、カシオペアツインであることには変わりないので、2人用タイプの部屋と比べても、補助ベッドの有無を除けば、設備的には特に違いはありませんが、1つだけ、3人でも利用できるタイプの部屋にしかないものがあります。それは、壁面に収められている組み立て式テーブルです[⑧]。壁に取り付けられた折り畳み式のテーブルが2枚ありますが、これは3人目用のテーブルということでしょうか。

 裏返して脚となるポールを引き上げるとこんな感じ[⑨]。これを、補助ベッドの下にある床置きのベッドの脇から出ている台座と接続します[⑩]。これにより、3枚目のテーブルが完成します[⑪]。接続部の固定は、この謎のつまみを下から上へ回すことで行います[⑫]

 室内にはゴミ箱が設けられています[⑬]。床に置くものではなく、特急型車両のデッキにあるような壁の中に埋め込まれているものなので、床面のスペースを犠牲にしません。開口部に手をかけて手前に引いてみると・・・、手前にゴミ箱が出てくるとともに、なんだか見てはいけないような機器類が見えてしまいました[⑭]。カシオペア号の個室には様々な設備がありますから、部屋1つあたりの機器類もきっと多いでしょうね。

 窓のカーテンは、外部の光をしっかり遮る厚手のもの[⑮]。このあたりがしっかりしているのはありがたいですね。


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