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 部屋の設備も一通り確認したので、ここで、12号車のラウンジカーに行ってみました。行きたいと思ったから行っただけであって、特に時間帯や車窓のことを意識したわけではありませんでしたが、ラウンジカーへ行ってみると、ちょうど夕暮れの内浦湾が展開されていました[①]。ラウンジカーを訪れていた人(お年を召した団体さん)たちも、次々とこの車窓を写真を収めていました。

 各個室の窓よりも1回りほど大きいラウンジカーの窓は、繰り広げられる車窓を眺めるのに最適です[②]。トワイライトエクスプレス号のサロンカーのように、天井に回り込むほどの大きな窓であれば、なお良いんですが・・・。なお、ラウンジカーは電源車を兼ねており、車両の下半分に発電装置などが装備されている都合上、準ハイデッカーとも言える構造であり、視点がやや高めになっています。

 まるで昼と夜がせめぎ合うように、空では水色と橙色が美しいグラデーションを生み出し、しかし海だけは一足早く闇色に染まる・・・。雲は筆で濁したかのような流れを持ち、夕焼けにも染まって橙色になる・・・[④]。これぞまさに絶景。空の具合や太陽の位置の均衡がとれる時間帯は限られており、このような素晴らしい眺めも、そうそう長い時間は見られませんが、北の大地が最後に見せてくれた絶景として深く記憶されます。

 ラウンジカーは、一番端っこの12号車に連結されています。下り列車では、青森〜函館間を除き、1号車にある展望スイートが最後尾を務めますが、上り列車では、逆にラウンジカーが函館〜青森間を除き最後尾を務めます。そのため、現在は、ラウンジカーが最後尾。展望スイートの民でない一般旅客も、後ろに流れゆく景色を楽しむことができます[⑤]。鉄路の上を滑るように走る列車、その鉄路は後ろに無限に伸びゆく・・・。

 18:23、列車は夕暮れの伊達紋別に停車します[⑦]。ラウンジカーを除き全車両が2階建て、そしてラウンジカーも車体の大きさは2階建て車両と同等というその編成は、駅に停車している姿にも、なんとも言えぬ存在感があります[⑧]。また、伊達紋別駅では、ホームは各車両の通路側となり、各個室の内部が全く見えないので、同時に、どこか神秘的な雰囲気も持ち合わせています。

 伊達紋別では6分の停車時間がとられていて、ここで後続の特急スーパー北斗14号を先行させます[⑨]。この列車は、札幌をカシオペア号よりも39分遅い16:51に出発していますが、札幌から約150km離れた伊達紋別で追いついてしまいます。カシオペア号に乗りたいが北海道の滞在時間も長くしたい、という場合は、スーパー北斗14号で追跡して伊達紋別からカシオペア号に乗るという手法もありますが、やる人はまずいないでしょう。

 カシオペア号には、1両が丸々フリースペースとなっているラウンジカーが連結されていますが、5号車と9号車の車端部には、緑色のソファーを向かい合わせに配置した「ミニロビー」なるものがあります[⑪]。しかし、各個室は十二分に快適であり、またラウンジカーが連結されていることを考えると、これの必要性がよく分かりません。隣に自動販売機があるので、ちょっとここで飲み物でも飲んでいかないか・・・ってことか?

 自室へ帰る途中、空室のカシオペアツイン(平屋・補助ベッドなし)の部屋を見つけました[⑫]。今日の上りのカシオペア号は満室となっているはずですが・・・、函館辺りから乗車してくるのでしょうか? ただ、せっかく高額なA寝台個室を利用するのに、函館からの乗車となっては、乗車時間が短くなってしまい、ちょっともったいないですね。函館からなら、私は北斗星号のデュエットを選びます。

 ラウンジカーの12号車には、売店もあります。そこでカシオペアサブレとコースターを購入しました[⑭]。内容がショボイ買い物ですが、買いたいと思っていたサボプレートが売り切れだったので・・・。と、売店で悔しがっていたら、カシオペア号のグッズを紙袋にこれでもかと詰め込んだ人が横を通り過ぎました。いるんですねえ、転売するんだか何だが知りませんが、こういう不届き者が・・・。

 モカチーノ[⑮]。カシオペア号の車内で売っているものではありませんよ。ではいったい何なのか、というと、スーパーカムイ24号でお婆さんからもらった飲み物です。飲みたいといえば飲みたいんですが・・・、コーヒーの類は微糖かブラックという人間なので、このような甘いものは、どうにも飲むことができません。あのときのお婆さん、お気持ちは本当にありがたく頂戴いたしましたが、私自身は飲めませんでした。ごめんなさい。



























 荷物はコンパクトにまとめて・・・おく必要はありません[①]。個室寝台の素晴らしい点の1つは、どんなに散らかしても文句を言われないというところでしょう。おまけに、今回はカシオペアツインを1人で利用していますから、たとえ散らかしても、室内が狭いとは感じません。

 とはいえ、やはり荷物は邪魔にならないように整理しておきたいものです。そこで活躍するのが補助ベッドです。補助ベッドを引き出し、そこを荷物置き場としてしまえば、床面も床置きのベッドもすっきり[②]。使わない寝具類もここに載せてしまいましょう。また、「ベッド」ということの面積を活かし、スーツケースを広げておいておけるので、このようにすれば、荷物の出し入れも便利です。

 新幹線や昼行特急の車内販売が縮小していく中、カシオペア号では、12号車に売店が設けられているのみならず、ワゴンによる移動式の車内販売も行われています。個室となると、車内販売員が来ているのかどうか分からないわけですが、カシオペア号では、部屋に車内販売員が来たことを示してくれる装置があります[③]。これが点灯すると、車内販売員が来たということが分かります。

 そんなわけで、車内販売員がやってきたので、バニラアイスを購入しました[④]。で、このときに車内販売員の方から言われたのは「おひとつでよろしいですか?」。連れの分はいらないんですか、という純粋な疑問からの言葉でしょうが、今の私には、ちょっと痛い言葉ですね。連れの者は出かけているわけではありません、そもそも連れなんていないんです・・・。やっぱり、カシオペア号は、1人で乗ることは想定していないんですね。悲しい。

 晴れた晩の月は美しいものです[⑤]。そして、ただ美しいだけでなく、闇夜を照らす優しい光を放ちます。時に9月6日19:40、夜空の上で煌々と輝く満月が、内浦湾の水面をほのかに浮かび上がらせていました[⑥]。そして月明かりは、窓を越えて、照明を消して真っ暗になった部屋の中をも神秘的に照らしてくれました。ソファーに座って、月明かりを友として、しばし静寂を楽しみましょう。

 19:50、八雲に到着[⑦]。すっかり真っ暗になってしまいました。札幌を出てから3時間30分以上が経過していますが、さすがカシオペア号と言うべきか、ここまで疲れも飽きも全く感じていません。札幌もすっかり遠くなってしまい、「帰っているんだな」という思いが強くなってきました。

 部屋にある液晶モニターでは、衛星放送を視聴することができますが・・・、トンネル内というわけでもないのに、なぜか「受信できません(E202)」の表示ばかり[⑧]。また、別に雨というわけでもありません。衛星アンテナの調子が悪いのか、それともモニターの調子が悪いのか。ほんの一瞬だけ映像が映ることがあっても、すぐに真っ黒の画面になってしまいます。カシオペア号の豪華さの一翼を担う設備がこれでは残念ですね。

 仕方がないので、カーナビ画面にしてみましょう[⑨]。液晶モニターをカーナビモードに切り替えると、文字通りカーナビの地図画面が現れて、列車が今どこを走っているのかが分かるようになっています。こちらは正常に稼働していたので、GPSアンテナは問題がなかったのでしょう。

 21:06、列車は道内最後の停車駅、函館に到着しました[⑪]。発車は21:12です[⑫]。下りの北斗星号は14分、上りの北斗星号は10分停車するのに対し、カシオペア号は、上下とも6分しか停車しません。北斗星号と異なり、機関車の切り離しと連結だけをやってとっとと出発する、という感じです。本当は、函館駅のホームで息抜きをしつつ、北海道を離れることへの名残惜しさを感じたいんですけどね。

 21:12、乗降扉が閉まります[⑬]。次の停車駅は仙台で、そこはもう本州です。思えば今年の2月、上りの北斗星号に乗車したときも、函館駅で乗降扉が閉まる瞬間を見たときに、北海道を離れることに対しての名残惜しさがこみあげてきました。あのときと同じ感情に支配されました。長いようで短い・・・というのはもはや定型文ですが、「自分は本当に1週間も北海道にいたのだろうか」「もっといても良いのではないか」と思ってしまいました。

 函館駅で列車の進行方向が変わります。しかし、心配することはありません。カシオペアツインでは、「向かい合わせのソファー」がありますから、進行方向が変わっても、座るソファーを反対側にすれば、進行方向を向いて座れます[⑭]。窓が進行方向右側に変わりました[⑮]

 五稜郭駅でキハ40形の普通列車と列車交換[⑯]。さらに、後を追ってくる北斗星号で使用されると思われるED79形の姿を見ました[⑰]。五稜郭から江差線に入り、青函トンネルへ近づいていきます。途中の駅では、貨物列車との遭遇もありました[⑱]


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