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 鵜苫駅にやってきました。何か特徴らしい特徴のある駅であれば、色々と語るべきこともあるんですが・・・、この鵜苫という駅は、残念ながら、そのような駅ではありません。それに、秘境駅というほどの駅でもありません。駅舎は車掌車を改造したものですが[⑤]、車掌車を転用した駅舎は、北海道では珍しいものではないので、特徴として計上できるかどうかは微妙なところです。なお、駅舎には海の生物が描かれています。

 駅舎の左脇に駅名標のようなものが立っています[⑥]。物自体は駅名標ですが、「鵜苫」ではなく「鵜苫駅」と書かれ、両側の駅にローマ字が振られていないなど、本物の駅名標とは異なる部分があります。来駅記念の写真撮影にもってこいであるような気がしますが、記念写真を撮影するような観光客が鵜苫で下車することはまずないでしょうね。

 駅舎内は比較的綺麗です[⑦]。木製のベンチがあるほか、ごみ箱も設置されています。駅舎内に張り出した部分に茶色の扉がついていますが、ここの中は、どうやら便所であるようです[⑧]。もっとも、現在は扉が施錠されていて使用できないようになっているようですが。鵜苫駅の訪問にあたっては、用便は予め列車内で済ませておくのが吉というところでしょう。

 駅舎の中を見ていると、車掌車という鉄道車両を改造したものというよりは、ちょっと手の込んだプレハブの建物に見えてきますが、壁面の窓の配置などに、車掌車としての面影が残存しています[⑨]。夏にも冬にも対応する二重窓は、まさに北海道を走る鉄道車両ならではのものです[⑩]。ここで更に奥の本窓を開けようと試みましたが、建てつけが悪くなったか、意図的に固定したか、結局開けることはできませんでした。

 鵜苫駅は、比較的海に近いところにあります。海の近くへ行ってみると、カモメが1羽で海を眺めていました[⑪]。通常、カモメは群れながら行動する鳥であるはずですが、このカモメはいったいどうしたのでしょうか。カモメもたまには一人旅がしたくなるということでしょうか? そんな彼と一人旅をする者にしか分からない気持ちを共有しようとしましたが、飛んで逃げて行ってしまいました[⑫]

 駅前を通る道路の上にある案内板に、「苫小牧 137km」と出ていました[⑱]。137kmというと、我が地元の常磐線で言えば、上野〜水戸よりもさらに20km長いくらいで、北海道で言えば、札幌〜東室蘭よりちょっと長いくらいの距離です。それだけの距離を普通列車で移動しなければならないというのも・・・うーん・・・。どちらの区間も、特急列車で移動するのが普通という距離と区間です。

 鵜苫駅のホームに降り立つと、貝殻などがたくさん落ちているのが目につきます[⑳]。駅ノートに書かれている情報によれば、海岸からカラスが貝殻類を拾い上げて持ってくるのだとか。海が近い駅だからこそ起こり得る不思議な出来事です。
























 先ほど乗車した様似行きが折り返してやってくるので、列車は、JR北海道標準色と日高本線色の2両編成でやってきます[①]。JR北海道標準色の車両が先頭となって終点の苫小牧まで走ります。様似と西様似から乗ってきたお客はいなかったようで、またしても車内は無人でした[②]。本当にガーラガラ・・・。さすがに苫小牧までずっと1人ということはないでしょうが、また実質貸し切り状態と相成りました。

 寒冷地を走る車両だけに、JR北海道のキハ40形の窓は、二重窓となっています。しかし、夏季には窓を開けられるようにしなければならないので、特急型車両のような固定式の二重窓ではなく、開閉可能な窓を2枚装備する二重窓となっています。手前側の窓は、冬季にのみ使用する「追加の窓」で、冬季はこれが下ろされますが[④]、夏季は上げられて1枚窓となります[⑤]。奥の窓を上げて手前の窓を下ろすこともできます[⑥]

 日高本線では、既に貨物列車の運転はなくなっていますが、浦河駅に、倉庫として使用されていると思われる鉄道コンテナがありました[⑦]。このような中古のコンテナは、20万円(本体価格として)くらいのお金があれば買えなくもないようなので、本物の車両を自宅に置くのは無理(金銭的、面積的に)でも、コンテナならなんとかなるかもしれません。外から観賞するだけでなく、倉庫として実際に使えるので、実用性もありますね。

 本桐で下りの様似行きと列車交換を行います[⑧]。向こうは8分、こちらは2分の停車時間となっているので、文字通り、下り列車が上り列車のことを待っています。かつての急行停車駅・日高三石には17:27に到着[⑨]。このあたりは、先ほどから雨がよく降り続けているようで、ホームの表面を見てみると、水たまりができ、そこに雨粒が打ち付けているのが分かりました[⑩]

 途中、後ろ寄りの車両に、中学生?がまとまって乗車し、ちょっとうるさくなった区間もありましたが、彼らが降りていくと、後ろ寄りの車両は、また静けさを取り戻しました[⑪]。東静内に到着するころには[⑫]、辺りがだいぶ暗くなってきているのが否めなくなり、せっかくの海原の景色も、雨という天気も手伝って、寒々しくて何か怖さを感じさせるだけのものになってしまいました[⑬]

 にわかに街らしい景色が見えると、列車は間もなく静内に到着します[⑭]。そして17:57、列車は静内に到着しました[⑮]。このままとっとと苫小牧まで走ってほしいというのが本音なんですが、2238Dは、静内になんと32分も停車します。冬なら、下手に外に出るよりは暖房の効いた車内にいた方が・・・となるかもしれませんが、夏で非冷房車ですから、車内にいる理由はありません。いったん駅舎へ向かいましょう。
























 静内では、32分もの停車時間が設けられています。駅に到着して乗降扉が開くと、降りる人は当然いますが、この段階では乗る人はいません。乗る人は、やはり発車の数分前になってから乗り込んでいきます。しとしとと雨が降る暗がりで、キハ40形が発車のときを待ちます[③]

 改札口を通るとき、駅員氏から「苫小牧行きの発車は18:29です」と言われました。それも、私が北海道フリーパスを見せる前に。もちろん、このまま静内駅で下車する人もいるはずですが、やはり、32分もの間列車内に留まる人はいないということなんでしょうね。ここでホームから改札口に来る人=引き続き苫小牧行きに乗るが、発車まで駅の中で待つつもりの人、という図式が成立しているのでしょう。

 駅舎の中に、夜行列車の運休のお知らせが貼り出されていました[⑤]。要するに、北海道新幹線の工事のために北斗星号とはまなす号を運休・時刻変更する日がありますよということですが、驚いたのは、運休期間として12月28日〜翌年1月5日が設定されていることでした。年末年始というのは、夜行列車も含めて公共交通機関の需要が高まる期間ですが、そのときにあえて運休させてくるとは。

 これまでに廃止されてきた各種夜行列車は、通常期の利用率はいかんせん芳しいものではありませんでしたが、そのような夜行列車でも、年末年始はさすがに満席になりました。普段はそう利用されない列車でさえ満席になるような需要が発生する時期・・・、それが年末年始ですが、需要が高い時期に運休するというのはどうもよく分かりません。

 もっとも、北斗星号1往復分とはまなす号1往復分で運べる乗客の数はたかが知れています。それらを運休させたところで、輸送力的には特に問題はないという判断が下されているのでしょう。北海道新幹線の各種試験・工事のために列車を走らせない時間を拡大する必要があると言っても、もし夜行列車が輸送の一翼を担うものとして重要視されているならば、これほどの思い切った措置はとられなかったでしょう。
 夜行列車の「輸送力」の計算の中に占める割合が低下していること、夜行列車の地位が低下していることを感じずにはいられませんね。

 暗い、降雨、肌寒いとなると、32分の停車時間があると言っても、駅の近くをうろつく気にはなりません。駅舎の中で「早く発車時刻になってくれないかな」と思いつつ、特に何をするということもなく時間を潰しました。再び2238Dに乗車するために改札口を通ると、僅かに残っていた明るさも消え失せ、すっかり夜の世界になっていました。キハ40形の車内の白い蛍光灯の光が眩しくさえ感じられます[⑥] [⑦]

 鵜苫〜静内間では、日高本線色の2両目に乗車したので、残りの静内〜苫小牧間では、JR北海道標準色の1両目に乗車することにしました。両車の間には大きな違いはなく、JR北海道標準色の車両は、日高本線の車窓などを紹介するポスターがなく、座席のモケットの色が紫色ではなく青色となっているという程度の違いしかありません[⑧]

 朝に下ってきたところを引き返す形で苫小牧へと向かいます。朝に下ってきたときと違うところをひとつだけ挙げるとすれば、それは、2238Dは途中の浜田浦駅を通過するということですが、何せ真っ暗にして真っ暗なので、浜田浦を通過したことに気がつくことは不可能でした。見るものもすることもないという地獄のような時間を耐え忍ぶと、列車は苫小牧の市街地に入り[⑨]、20:05に終点の苫小牧に到着しました[⑩]

 どうでもいいことですが、駅舎内に設置されているLEDの発車標を眺めていると、なぜか「萩野」が英語にならないことに気がつきました[⑬]。他の項目は、英語表示のときはきちんと英語になるんですが・・・。札幌や函館といった主要駅と違い、萩野は、普通の外国人はまず降りそうにもない小さな駅ですから、英語で案内してやることもなかろうという判断でもされているのかもしれません。

 さて、今日の移動はこれで終了です。駅前の東横インに入り、夜を明かします[⑭]。なんというか・・・、本当に疲れました、今日は。


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