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 さて、そろそろサロベツ原野へ向かいましょうか。もちろん、サロベツ原野へ向かうと言っても、自転車で原野の横まで乗り付けて、原野の中にずかずかと立ち入ろうというわけではありません。サロベツ湿原の中に木道を整備し、湿原の中をゆっくりと散策できるようにしている施設、「サロベツ湿原センター」があるので、そちらへ向かいます。

 先ほど借りた自転車に乗車し、サロベツ湿原センターまでの約6.3kmの道を行きます[②]。万が一雨にでもなったらどうしてくれようかと思っていましたが、実に良い天気です。まあ、その分、日差しの下を走らなければならないわけで、汗をどの程度かくのかということが心配ではありますが・・・。

 観光情報センターの方がしてくれた道案内と予め印刷しておいた地図を頼りに、サロベツ湿原センターへの道を進みます。レンタサイクルとして貸し出している自転車は複数の種類がある(統一されていません)ようですが、今回、私には、7段変速の自転車がやってきました。1、2段くらいの段で動き出して、その後スピードが上がるのに合わせて3、4・・・と上げていくと、流れに乗り、少ない足の回転で速いスピードが出るようになります。

 人口約4100人の豊富町は、文字通り「小さな町」。町の中心部は、それなりに建物も車通りもあるようですが、サロベツ湿原センターは、町の中心部から離れた、人家や建物がほとんどない方面にあります。そのため、サロベツ湿原センターへの道は、車通りも非常に少なく、自転車で走りやすいです。もし自転車で行かれる場合は、是非、歩道ではなく車道(もちろん真ん中ではありませんが)を走ってください。

 サロベツ湿原センターへの道を走っていて思ったことは、「目に入るもの全てが素晴らしい景色に見えてしようがない」ということ。自転車で迷わず一直線にサロベツ湿原センターへ向かうのはなんだかもったいないような気がしてきて、途中、何度か自転車を停めて、その絶景を写真に収めておきました[③]。まるで絨毯のように一面に広がる、緑鮮やかな草地。向こうの山々は、より濃い緑。青い空と白い雲は、まるで絵に描いたかのよう・・・。

 そしてサロベツ湿原センターに到着しました[④] [⑤]。途中、何度か自転車を停めて風景の写真撮影をしましたが、それでも、豊富駅からは約30分で到着しました。個人差はありましょうが、ずっと漕ぎ続ければ、ゆっくり目でも30分ちょっとで辿り着けるのではないでしょうか。建物の入り口付近にあった温度計は、約22.5度を指し示していました[⑦]。日陰にあることを考慮しても、その涼しさが分かります。

 ここの一番の売りは、もちろん、サロベツ湿原内に敷いた木道を歩いての散策ですが、建物内には、資料館のようなスペースもあります[⑨]。サロベツ湿原の自然や、原野の開拓の歴史などについての解説がなされているようです(時間がなくて、実は全く見ていないんです・・・)。木道へ出るための扉の脇には、どこにどんな花があるのかなどを示す「地図」があります[⑩]。スマホなどで撮っておくと、便利な携帯型地図になりそうです。

 では、木道へ出てみましょう[⑪]。草花が生い茂る湿原の方へ向かってすっと伸びゆく木道は、サロベツ湿原唯一の人工物です。この先の木道の上から見えるのは、人の手が入っていない真の「自然」と、どこまでも広がる「青空」だけです。その中にあって、人が歩けるように整備された道は「”木”道」。アスファルトで舗装された道でもなければ、金属板で造られた道でもありません。自然との調和が念頭に置かれた、木の道です。

 ここは花畑ではないので、あちらこちらで花が咲いているというわけではありません。ただ、それでも花という花がなかなか見つからなかったのは、やはり9月という時期が悪かったからなのでしょうか。まあ、あくまで「サロベツ湿原の中の木道を歩く」ことを目的としていたので、花を見つけようとする気はなく、花に関する情報は何も仕入れていませんでした。それもいけなかったんでしょうけど。

 なお、どういうわけか、木道に傾斜がついているところがあります[⑳]。サロベツ湿原自体は、一面平野であるはずなので、サロベツ湿原の地形に合わせて木道に傾斜がついているとは思えないんですが・・・。謎です。

















 やっと花らしい花が見つかりました・・・が、これは何という花なのでしょうか[①]。木道へ出る扉の横にあった「ネイチャーインフォメーション」と照らし合わせてみたところ、恐らく、「エゾリンドウ」なる花ではないかと推測しました。「エゾ」とついてはいますが、北海道にしか咲かない花というわけではなく、本州や近畿でも見られる花だそうです。

 サロベツ湿原の中には樹木はなく、それゆえ、木道に陰を作るようなものはありません。ずっと日差しの中を歩かなければならないというわけですが、木道をぐるっと右方向へ一周し、木道の終点に近づくと、生い茂る樹木が陰を作っていました[④]。一面に広がるサロベツ湿原の中を歩いているときもなかなか気持ちが良いですが、ここの木陰でちょっと一休みしているときも、なかなか気持ちが良いものです。

 サロベツ湿原の中では昆虫らしい昆虫には巡り合いませんでしたが、木道の終わりの方で、トンボに出会いました[⑤]。このトンボはアキアカネではありませんが、アキアカネは、時に羽化した場所から100km以上も離れた場所まで飛ぶことがあると言います。トンボもトンボで旅人、彼もまた旅をしています。一人旅をしている者ならではの気持ち、果たしてこのトンボに伝わったのだろうか・・・?

 休憩所でソフトクリームとリンゴジュースをほおばり、豊富駅へ向けて再度出陣。この道路は、どこまでも、そして果てしなく、延々と真っ直ぐに伸びているような気がします[⑥]。もちろん、実際にはそうではないということは知っています。ただ、自転車のハンドルを左右に動かすこともなく、ひたすら懸命に漕ぎ、同じような代わり映えのしない景色がずっと続くというのは、楽しいようで実は辛いものです。

 豊富駅には、「きっさ すてーしょん」なる喫茶店が併設されています[⑦]。1990年の5月に誕生し、それ以来、普通の旅人のみならず、息子と喧嘩をして家を飛び出してきた主婦など、様々な人たちが訪れたといいます。時間の関係上、ここで飲食をすることは叶いませんでしたが、豊富駅で下車された際は、利用されてみてはいかがでしょうか。

 列車に乗るためにホームに出ます。「新型特急スーパー宗谷」なんて書かれていますが、冗談じゃありません[⑧]。キハ261系はたしかにサロベツ号のキハ183系よりは新しいですが、それでも、2000年に登場した車両です。未だに新型特急なんて言うのもどうなんでしょうか・・・。まあ、宗谷本線で一番新しい車両であるということは間違いありませんけど・・・。














 サロベツ湿原センターへ行ったときと全く同じ道で帰ってくれば、もっと余裕をもって豊富駅に帰り着くことができたはずですが・・・、道を間違えて遠回りをするという失態をしでかしたため、14:57発の普通列車に乗るというのに、その3分前くらいに豊富駅に到着しました。結果的には問題なく間に合いましたが、途中の「万が一乗り遅れたらどうしよう」という不安は、精神を蝕みそうでした。

 キハ54形の普通列車に乗車し[①]、ひとつ旭川寄りの駅、下沼を目指します。豊富駅を出る上りの普通列車は、1日に5本しかありません(もっとも、それよりも本数の少ない駅は北海道にたくさんありますが)。乗り遅れようものなら、その瞬間、途方にくれるしかありません。いやぁ、サロベツ湿原センターからの帰り道を間違えたときは、本当に乗り遅れのことを心配してしまいましたが、何とか間に合ってよかったです。

 豊富町は酪農の町として知られています。この町で生産される牛乳は「豊富牛乳」として一種のブランド化を果たしていて、宗谷本線の列車内からも、牧草を食む乳牛の姿を見ることができます[②]。都会の路線では絶対に見られない光景です。

 下沼は隣の駅なので、豊富からは7分で到着します[③]。ここでは、私以外に乗り降りした人はいませんでした。だって、「そういう駅」ですから!


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