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 北海道中央バスで三笠市民会館へとやってきましたが、もちろん、そこが真の目的地であるはずがありません。真の目的地は、三笠市民会館から歩いて8分ほどのところにある、クロフォード公園です[④]。北海道に鉄道技術を伝えた開拓使、クロフォード博士を名前の由来とするその公園は、旧幌内線の旧三笠駅周辺に整備された公園で、鉄道ファンには、実物の鉄道車両も展示している場所として名有名な施設です。

 ホームに据え付けるような状態で、DD51形が貨車や車掌車を連ねた状態で静態保存されていますが[⑤]、ぶっちゃけ、これはおまけと言っても差し支えないでしょう。やはり、クロフォード公園の車両展示のメインは、なんといってもキハ80系です[⑥]

 クロフォード公園に展示されているキハ80系の何が凄いのか。それは、その両数です。先頭車だけを1両や2両程度展示するというものではなく、食堂車やグリーン車、普通車などの中間車両も含めた、6両ものキハ80系が展示されていて、しかもそれが、両端に先頭車を配置した”編成”の形で保存されているというのです。先頭車の後ろにも車両が連なる様子を見ていると、今にも走り出しそうな気さえしてきます[⑦]

 屋根がなく雨ざらしなので、保存という観点から見ると、あまり好ましくない環境下にあると言えますが、せっかく、線路上に6両編成を組んだ状態で保存されているんです。このように完全な屋外に置いてある方が、まるで「青空の下を快走するキハ80系の特急おおとり号」のような感じにも見えて、かえって良いのかもしれません[⑧]

 展示されているキハ80系には、1両ごとに簡単な解説がついていて、車体の長さや重量、定員などを知ることができます[⑬]。最高速度100km/hと聞くと、なんだか遅いと感じてしまいますが、非振り子で100km/hしか出せないとなると、実際、遅いでしょうね。1961年のキハ80系特急おおぞら号(海線経由)は、函館〜札幌間で、なんと4時間30分もかかっていました。キハ281系は、後に同区間を2時間59分で走破しました。

 もっとも、前述のように、屋根すら設置されていないので、風雨や経年による劣化や破損は、どうしても免れないものがあります。車体が汚れていたり、黒ずんでいたりしているのは当然のこととして見逃しておくとしても、前照灯や尾灯に破損が見られたり、窓ガラスに亀裂が入っていたりしているのは、残念なことです[⑮]。柵も何もなしに屋外に設置・・・ということを考えると、いたずらに遭わないかどうかということも、ちょっと心配なのですが。

 さて、ひとつ気になった点があるので、そこのところを指摘させていただきましょう。編成中には、食堂車として運用されたキシ80-27が組み込まれています[⑰]が、妻面の表記を見ると、なぜか「キハ80」になっています[⑱]。塗装の塗り直しか何かの整備を施したときに、車体への文字入れを行った人が間違えてしまったのでしょうか。この車両はたしかに食堂車ですし、解説にも、「キシ80」とあるようなんですが・・・[⑲]






























 博物館などでの車両展示にありがちな「その形式を最も代表できる車両として、先頭車を1両だけ保存する」というやり方ではなく、中間車も含めた6両編成で展示されていることが、クロフォード公園のキハ80系の何よりの魅力です。その結果、貴重なキロ80形グリーン車が、形式の代表性が低い中間車両でありながら、こうしてクロフォード公園という安住の地を得ることができました[①]

 車体の状態は、屋外展示の割には比較的良好で、凹凸も少ないように思いますが・・・、そんな中、何かが飛び出しているのを発見しました[②]。恐らく、非常用の脱出扉ではないかと思いますが、下部が浮き上がってしまっています。屋外に十何年も置いていたら、どうしてもこうなってしまうものなのかもしれません(と、ここまで書いて、「非常扉ってもともとこんなものじゃないか?」という気がしてきました。ご存知の方、ご教授ください)。

 クロフォード公園のキハ80系は、編成での保存となっていますから、当然、公園の入り口側の反対側に、もう1両の先頭車があります。車両の脇を通って行き、そちらの様子を見てみましょう。

 公園の入り口側とは反対側・・・、つまり、ちょっと人目には付きにくいところにある・・・がためにそうなっているわけではないと思いますが、公園の入り口側にある先頭車と比べると、やや状態が悪いです[③]。正面右上にある前照灯の右ライトは完全に失われていて、ただの穴になってしまっています[④]。左上のものの左ライトも、ガラス部分が消失しています。尾灯は、左右両側とも破損し、失われています[⑤]

 この破損ぶりを見るに、どうも、人的ないたずらがあったのではないかと疑いたくなってしまうんですが・・・、どうなんでしょうか。クロフォード公園は夜間でも出入りができるので、人がいなくなった夜間に何者かがいたずらをした可能性も、なくはないと思いますが。それこそ、いつ落書きなどが行われてもおかしくないような気がします。なお、先頭車の貫通扉は、過去に盗難の被害に遭ったことがあります。

 丘の斜面からキハ80系を眺めてみます。食堂車キシ80の独特の窓配置や業務用扉は健在で、窓越しには、厨房の壁も見えます[⑥]。グリーン車キロ80も、小窓を連続させた特徴的な外見がそのままで、窓1枚ごとに整然と並ぶ、グリーン車の赤い座席も見えます[⑦]。線路に乗り、青空の下、編成を微妙にうねらせた状態を見せるキハ80系は、こうして見ると、本当に現役として走っているのではないかと錯覚してしまいます[⑨]

 そうなると、見ている側としては当然、車内に立ち入って見学をしたい・・・という思いが湧いてきますが、残念ながら、普段は車内の公開は行っていません。以前は、公園の入り口側の2両に入ることができたようですが、窃盗などをはたらく不届き者が出没したので、車内の公開は中止となったようです。キシ80とキロ80については、私自身、特に見学してみたいと思っているんですが・・・。

 このように、クロフォード公園には、キハ80系をはじめする実物の鉄道車両が何両か展示されていますが、三笠市の所有物というわけではないようです[⑫]。「JR北海道から貸与された」ということは、所有権は、今でもJR北海道が持っているということですよね。静態保存されている蒸気機関車を復活させ、動態保存するというのはよくあることですが、JR北海道には、ここは1つ、3両くらいで構わないので、キハ80系の復活を・・・と。

 クロフォード公園は、旧幌内線の三笠駅の跡地を利用した施設なので、その起源もあってか、ホーム(のようなもの)が整備されていて、DD51形や貨車などは、ホーム上から見学することができます[⑬]。なるほど、この視点で見てみると、三笠駅に停車している貨物列車に見えないこともありません。三笠駅の跨線橋を忠実に再現した跨線橋もあり、なかなかそれらしい雰囲気ができています。

 実のところ、私がこのクロフォード公園を訪れたのは、キハ80系に会うことが最大にして唯一の目的であり、それが達成できればよし、という姿勢でいました。そんなわけで、キハ80系以外の車両・・・、DD51形や貨車、ホッパ車、車掌車などはちらっとだけ見て、1枚ずつくらい写真を撮るだけにしました。別に時間がなかったわけではありませんが、もはや真面目に観察する気も起きなかったので。

 クロフォード公園の入り口(管理棟)は、旧三笠駅の前身である、旧幌内太駅の駅舎を再現したものとなっています[⑱]。ここから入り、改札口(というか扉)を抜け、跨線橋を渡ってホームに降りると、そこにはDD51形が牽引する貨物列車が・・・という流れで辿るようにすると、かつての幌内線の光景が思い出されるかもしれません(平成生まれが何言ってんだかって感じですが)。

 クロフォード公園の見学はこれで終了です。しかし、もう1つ、訪れておきたい鉄道施設があります。バスでそちらへ向かいましょう[⑳]。  

















 三笠市営のバス(マイクロバス。運賃は均一200円)に乗ってやってきたのは三笠鉄道村・・・の、三笠鉄道記念館[①]。三笠鉄道村とは、クロフォード公園とこちらの三笠鉄道記念館の総称であり、クロフォード公園は「三笠ゾーン」、三笠鉄道記念館は「幌内ゾーン」とそれぞれ呼称されています。両者はそれなりに離れているので、完全に別個の施設に思われますが、本当は同じ三笠鉄道村の支配下の施設なんですね。

 では早速記念館へ・・・と言いたいところですが、ちょっと待ってください。駐車場にも実物の鉄道車両が置かれているようですよ[②]。しかも、その中には、私の興味をそそる国鉄色の気動車があるではありませんか。

 その国鉄色の気動車とは・・・、北海道で活躍した急行型気動車・キハ56系のグリーン車、キロ26です[③]。屋根もない屋外に置かれていますが、再塗装が施されてからそれほど日数が経っていないのか、車体の劣化は見られても、塗装の退色はそれほどでもないと思いました。クリーム色と朱色は、それぞれ一定の鮮やかさを保っており、遠目に見れば「美しい」と言っても十分なくらいでした。

 乗降扉の窓に入れられた「自動ドア」の文字が印象的です[⑥]。キハ56系が登場した1961年当時は、北海道のみならず、全国で、乗降扉が手動の旧型客車が健在でした。自動ドアが当たり前の今となっては、もし手動の車両があるならば、「手動ドア」と入れてやりたくなりますが、その逆のことが行われていたというわけですね。当時は自動ドアの方が珍しいくらいだったのでしょう。

 クロフォード公園のキハ80系と同様、ただ置かれているだけで、車内に立ち入ることができないというのは残念なことです。せめて台でも設置してくれれば、車内の様子を窓越しに見ることができますが、地面からでは、ジャンプしようが何しようが、車内の様子をまともに窺うことはできません。福岡市の貝塚公園の20系客車は、車内に立ち入ることこそできませんが、台から窓越しに車内の様子を覗き見ることができます。


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