Page:26
※各画像はクリックすると拡大します。





















 今回ももちろんuシートを利用します。721系のuシートと比較しても、特にこれという違いはありませんが、車内は新車ならではの独特の匂いに満ちていました。なんというのでしょうか、作り立てのプラスチックの匂い?がするんですよね。うまく例えるのはちょっと難しいですが、新製したばかりの車両に乗ったことがある方ならば、私が伝えたいことをご理解いただけるかと思います。

 721系・733系のuシート車は、基本的に指定席車両として運用されますが、車両の構造は、自由席車両と同一となっています。そのため、扉−<客室>−扉−<客室>−扉という構造になっていて、JR九州の783系のように、扉を介して、1両の中に2つの客室が存在するというものになっています。1つの客室の中にある座席は5〜6列分で、1両が丸ごと客室となっている車両と比べると、だいぶ小さな空間になっています[①]

 車椅子席の後ろは、通路側の座席の前に座席がなく、背面テーブルが使えないため、その代替として、右側の肘掛けの中にインアームテーブルが収められています。そのため、肘掛けの見た目が他の座席と異なります[⑥]。各座席の背面にはチケットホルダーがあり、ここに指定席券などを入れておけば、こちらが眠っていても勝手に検札してくれます[⑦]。なお、こればかりは”インアームテーブルつきの席”にはないようです。

 通路には何も敷かれていませんが、各座席の下には絨毯が敷かれています[⑧]。一部だけとはいえ、普通車で絨毯が敷かれている車両は、とても珍しいものでしょう。快速列車の普通車指定席とは思えず、まるで特急列車のグリーン車かのようです。

 私の座席は、札幌寄りの半室にある座席でしたが、小樽を発車した時点では、その半室には私しか乗っていませんでした。事実上の貸し切り状態で、快適さも倍増でした。移動空間の快適さは、座席や設備の充実度だけでなく、いかに他人が少ないかというところによる部分も大きいです。

 行きのエアポート号では海側の座席だったので、この帰りのエアポート号では山側の座席を指定しておきましたが・・・、車窓としては、海が見える眺め[⑪]と比べると、雑木林が見える眺めというのは、幾分地味に思われます[⑬]。往復するのであれば、片道は海側、もう片道は山側という選択でも良いかと思われますが、片道しか利用しないのであれば、海側を選択する方が良さそうです。なお、エアポート号の海側はA席です。

 ひとくちに快速列車と言っても、停車駅の少ないものから停車駅の多いものまで、様々なものがありますが、エアポート号は「停車駅の少ないもの」にあたる方だと思います。銭函[⑭]、そして稲積公園[⑮]といった駅は、気持ちよく通過していきます。北海道全体で見ても第5位の高さとなる高さ約135mの超高層マンション「プレミスト琴似スカイクロスタワー」が見えると[⑯]、そこは停車駅のひとつの琴似です[⑰]

 琴似を発車すると、桑園を通過し、下車駅の札幌に到着します[⑱]。当たり前と言えば当たり前ですが、まあ乗ってくるわ乗ってくるわで。私が乗車していた「uシートの札幌寄りの半室」は、琴似で新札幌までという人が1人乗ってきただけの状況で札幌に到着しましたが、札幌で、恐らく空港まで行くのであろう人がぞろぞろと乗車し、一気に満席となってしまいました。























 様々な列車が発着する札幌駅では、乗車位置案内板の存在は重要です。道内最終日となる9月6日に、臨時列車のフラノ紅葉エクスプレス号に乗車する予定ですが、運転される時期が限定される臨時列車でありながら、その乗車位置案内板が用意されていました[①]。なぜか「ふらの紅葉エクスプレス」と、本来「フラノ」であるべきところが「ふらの」とひらがなで表記されているのが気になりますが・・・。

 5番線からは、稚内行きの特急スーパー宗谷3号が発車しようとしています[②]。和寒、士別、名寄、美深など、私が一昨日スーパー宗谷1号で通り、そして今日スーパー宗谷2号で通ってきた駅の名前が、次々と目の前を流れます。北の大地のさらに北にある最果ての地。そこまでの道のりにある諸々の駅。発車標に表示された「稚内」を見ると、いつかまたあの地を訪れてやろうという気持ちが湧いてきました[③]

 私がそんな感慨に浸っている一方、札幌駅は、家路を急ぐ人たちが増えてきました。最果ての地への長旅に備えて、札幌駅でしばし発車のときを待つスーパー宗谷3号を横目に、学校帰り・会社帰りの人を運ぶべく、札幌近郊の普通・快速列車がせわしなく発着します[④]。快速エアポート号も、乗客の中心は空港利用者ではなく、通勤・通学の人たちです[⑤]

 家路を急ぐ人たちを横に、やや肩身の狭そうなスーパー宗谷3号[⑥]。やがて17:49の発車時刻となり、稚内へ向けて、札幌駅5番線を後にしていきました[⑦]。ただ、稚内が目的地のスーパー宗谷号も、この時間帯は、岩見沢や滝川までの通勤客も多く乗せなければなりません。「稚内行き」と聞くと、旅行者としては、とても旅情を掻き立てられますが、乗っているすべての人が「稚内行き」に旅情を感じていられる人ではないようです。

 札幌駅西改札口にずらりと並んだ自動改札機[⑨]。しかし、これから列車に乗ろうとして入場する人たちは、皆左側の方へ流れていき、右側の方は誰も通りません。よく見ると、右側3/4の自動改札機は、出場専用の改札機でした。反対側の東改札口がどのようになっているのかはちょっと分かりませんが、ここ西改札口は、出場してくる客をより効率よくさばくことに重点が置かれているようです。

 今日の移動は札幌までです。ホテルは北口側にあるので、北口から出ます。南口から出ても北口から出ても、北海道で最も高い建築物であるJRタワー(高さ約173m)は、よく目立ちます[⑪]。なお、札幌駅の北口駅前には、北海道で2番目の高さ(約143m)を誇る超高層マンション「D'グラフォート札幌ステーションタワー」が立っていて、道内第1位・第2位の高さの建築物が近接して立っています。

 本日のお宿はビジネスインノルテII[⑫]。公称「札幌駅北口から徒歩8分」なので、駅からそれほど遠いわけではありませんが、札幌駅の周辺には、徒歩8分よりも短い所要時間で辿り着けるホテルがいくつもあります。そういう意味では、ホテルに辿り着くまでの約8分の道のりは、なんだか数値以上に長く感じられました。まあ、「ちょっと遠め」である代わりに、宿泊代は安価だったんですけどね。

 客室は、特に言うべきこともない普通のもの[⑬]。ただ、椅子が1枚のクッションすらついていない安っぽい製品だったのは残念でした。また、すぐ隣にビルがある側の部屋だったため、太陽の光が全く入ってきそうにない状況だったのも残念なことでした。翌朝、閉めていたカーテンをサッと開けて、新しい1日が始まりだした街の様子を眺めつつ、太陽の光を浴びるというのがひとつのお約束になっているので・・・。











 さて、ここでひとつ重大な出来事が発生しました。今回の旅の予告編でご案内したように、当初の予定では、北海道への出入りには、往復とも急行はまなす号を利用する予定となっていました。しかし、往復ともはまなす号+新幹線ではつまらないものです。また、帰りがはまなす号+新幹線となると、新幹線で味気なく旅が終わるというむなしい結末を迎えてしまうので、それは避けたいと考えていました。

 そこで、はまなす号と新幹線(はやぶさ号)の各指定席券を所持しつつ、北斗星号・カシオペア号・トワイライトエクスプレス号といった各種寝台列車の空席状況を適宜確認し、空きが出ていた場合はそちらにしようと考えていました。ホテルにいる間はもちろん、列車に乗車している最中にも空席状況を確認してきましたが、そう簡単には空きは出ませんでした。

 今日もホテルに到着した後、パソコンの電源を入れ、空席状況の確認に向かったところ・・・、なんと、9月6日(=道内最終日)発の上りのカシオペア号のカシオペアツインに空きが出ていることが分かりました。そのときの私に迷いはありませんでした。「これは寝台券をとるしかないだろう」と思い、必要最小限のものだけを持って、すぐに札幌駅へ向かいました。

 競歩っぽい速さで札幌駅のみどりの窓口へ向かい、すぐにカシオペア号の寝台券の発券をお願いしたところ、無事、カシオペア号の寝台券をとることができました[①]。「私が札幌駅に辿り着くまでの間に誰かにとられてしまったらどうしよう」という懸念を抱いていましたが、誰も横取りする者はいなかったようでした。これで、帰りはカシオペア号に乗れることになりました。

 カシオペア号の寝台の中では最も下位のカシオペアツインとなりましたが、運よく、私は「カシオペアEX」の部屋をとることができました。カシオペアツインは、本来2人用のA寝台個室ですが、エキストラベッドを使用して3人で利用することも可能なタイプの部屋があります。今回、私はそのタイプの方の部屋をとることができました。通常の2人用タイプとの識別のため、マルスには「カシオペアEX」で登録されています。

 で、結局どういうことなのかというと、1人で利用するわけですから、2人用の通常のタイプの部屋でも十分広々としているわけですが、「何なら3人で使ってくれてもいい」という部屋を1人で利用することになるので、3人での利用にも対応した物凄く広い空間を一人占めできるというわけです。それでも、3人分の料金が取られることはなく、2人分の料金を取られるだけで済みます。

 ・・・たった今書いた「2人分の料金」という言葉。ご存知のように、カシオペアツインは、2人用の個室です。規則上、2人用の個室を1人で利用する場合でも、2人分のおとなの特急料金と寝台料金を取られてしまいます(乗車券は1枚で可)。そして、カシオペアツインは”A寝台”個室です。ただでさえ2人分の特急・寝台料金を支払わなければならないのに、その寝台料金がお高いA寝台料金とは。これは辛いです。

 手に入れたカシオペアツインの寝台券の値段は33580円。正直、痛いです。私の財政状況にかなりのダメージが与えられます。また、この値段のうちの半分は「乗りもしない架空の誰か」の分だと思うと、ものすごく馬鹿馬鹿しいことをしたとも思います。今ここをご覧になっている方々の中にも、「こいつはなんと馬鹿なことをしているのか」「あんたはお金持ちか何かなのか」と思われた方がいらっしゃることでしょう。

 ただ、考えてみてください。北海道新幹線が新函館までくれば、カシオペア号は廃止となる公算が非常に大きいです。もしカシオペア号が廃止になったら、どうなるのでしょうか。10万出すと言っても、20万出すと言っても、100万出すと言っても、上野〜札幌間を走る寝台特急「カシオペア号」に乗ることはできないんです。クルーズトレインとして走ることはあっても、それは移動手段として使えるものではありません。

 では、「今ここでちょっと33580円を奮発してやれば、カシオペア号に乗れる」と考えると、それはなんだか安いことのように思われてきませんか。いや、冷静に考えれば、安いことのはずはありません。ただ、何より最悪なことは、そこに乗れる機会があったのに、何かと事情をつけてそれを逸して、後から「あのとき乗っておけば・・・」と後悔してしまうことです。それだけは避けなければなりません。

 今回、お金の事情は一切考えませんでした。ここで旅費がかさもうが知ったことではない、そんなものは後からバイトでせっせと稼いで穴埋めすればいいじゃないか、と。とにもかくにも、カシオペア号の寝台券の購入に当たっては、私に迷いはありませんでした。

 さて、こうして最高のフィナーレが用意されました。明日は9月4日。今日で旅の折り返し地点を越えました。


                  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25
26  27  28  29  30  31  32  33  34  35  36  37  38  39  40  41  42  43  44  45  46  47  48


DISCOVER どこかのトップへ

66.7‰のトップへ