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 室蘭本線で海が近い駅といえば、北舟岡駅がその筆頭に挙げられるところでしょうが、私がやってきた黄金駅も、そこそこ海に近いです。「物凄く」ではないので、どうしても「そこそこ」という表現に落ち着いてしまいますが・・・。ホームからは、眼前に広がる内浦湾のみならず、海岸線に沿って造られる街並みと有珠山や昭和新山を見ることもできます[②]

 とはいえ、一番の売りはやはりすぐそこにある海でしょう[③]。しかし、訪れた時間帯が悪すぎました。太陽の位置はまだ高く、水面に反射する光の強さも相まって、あまりの眩しさに、とても海を直視してはいられませんでした。日が沈もうとする夕焼けの時間帯であれば、まさに黄金色という夕陽と内浦湾を眺められるようですが、9月に入ったとはいえ、16時半ごろでは夕焼けにはならないようです。

 木造の駅舎は、六角形の上半分を切り取ったような形をしています[⑥]。迎えの車を待っているのか、あるいは列車を待っているのか、駅舎の中では、2人組の高校生がゲームに興じていました。私は旅行者ですから、黄金駅から見える海を、物珍しくて美しい景色として捉えますが、日常的にこの駅を利用する人たちにとっては、この海も、わざわざ見るほどのものではないのかもしれません。

 最近、駅や列車内でずっとスマートフォンをいじり続ける人が増えたように思います。昨日の朝、札幌〜手稲間で普通列車に乗車しましたが、立っている人も含め、いったい何割の人がスマートフォンを操作していたでしょうか。一方、私は、ずっと外の景色を眺めていました。地元の人たちにとっては見るべきものとはならない札幌の住宅街の景色でも、私にとっては、そうそう見る機会のない、見応えのある「車窓」です。

 「みんな下を見ていた。自分だけが横を見ていた。」 旅行中は、この心構え(?)を忘れないようにしています。

 さて、せっかくやってきた黄金駅ですが、戻りの列車の都合上、滞在時間はわずかに9分しかありません。16:39発の東室蘭行きの普通列車で東室蘭に帰還します[⑦]。今度は2両編成のキハ40形でした。こちらの列車もやはり高校生が数多く乗車していましたが、キハ130形と違い、キハ40形にはデッキがあるので、そこが混雑からの逃れ場として役に立ちました。

 崎守駅は、特急列車などが一切停車しない小さな駅であり、札幌圏の駅というわけでもなく、高架化事業が行われた区間というわけでもないのに、なぜか高架駅となっています[⑧]。その原因は、1968年に行われた複線化と線路の付け替えにあります。現在の崎守駅は、トンネルとトンネルの間の明かり区間に位置するという駅になっており、山陽新幹線の新神戸駅を思わせます。

 16:54に東室蘭に到着します[⑩]。滞在時間も含め、たったの40分で東室蘭〜黄金を往復してしまいました。



















 室蘭市の玄関口となる駅は室蘭駅ですが・・・、室蘭支線の末端にある室蘭駅よりも、本線上にあって特急列車も停車する東室蘭駅の方が、より拠点駅としての機能を持ち合わせています。利用客数で比較してみても、東室蘭駅は、室蘭駅の3倍以上の利用客数があります。

 「わたれーる」と名付けられた自由通路は、2007年に完成しました。正面から見てみると、赤い「枠」の中に、正方形のガラスが4×4=16枚はめ込まれています[③]。線路をまたぐ自由通路からは、駅周辺に林立する市営住宅などが特徴的な東室蘭駅周辺の街並みが見られます[⑤]

 北海道の駅では、駅舎が片側にしかない(出入り口が片側にしかない)といった事情のためか、「出入りができる側」と「出入りができない側」で開発の度合いに差が出ていることが多いように思いますが、東室蘭駅は、現在のような駅舎の橋上化などが推進される前の1969年の時点で、既に橋上駅舎となっていました。そのためか、東口[②]も西口[⑥]も、バランスよく発展しているようでした。

 上昇志向のある高校生と浪人生たちは、少しでも良い大学に入学しようと努力を重ねますが、北海道では、やはり北海道大学志向が大きいのでしょうか。東室蘭駅西口にあった学習塾、その名も「北大学力増進会」[⑦]。道内の各高校も含め、北海道では、北海道大学を志向する人が多いというのは、なんとなく想像がつきます。一方、我が茨城だと、早慶などの有名私立大学を志向する人が多いように思います。

 東室蘭駅の西口にホテルルートインがあります[⑨]。今日の宿は引き続き苫小牧で、昨日、今日と連泊します。同じホテルに2日連続で宿泊するのは面白くないので、今日は宿を東室蘭のホテルルートインに移そうかと思っていたんですが、そうすると、翌日の出発時刻が早くなってしまいます。また、連泊とすれば、荷物をホテルに置きっぱなしにして出かけられるという利点もあったので、苫小牧での連泊となりました。




















 次はキハ281系の特急スーパー北斗11号に乗車して苫小牧を目指します[①]。東室蘭は特急列車の乗降が多い駅のひとつであり、スーパー北斗11号が到着する前から、列車がやってくる5番線では、自由席の乗車口に列ができていました。

 苫小牧までは35分ということで、指定席ではなく自由席に乗車しましたが、自由席はよく混雑していました[③]。私は何とか一番デッキ寄りの席の通路側席に座ることができましたが、東室蘭の次の登別から乗ってきた人たちは、デッキで立たねばなりませんでした。たまたまであったのなら結構ですが、繁忙期というわけでもない平日で、自由席で座り切れない人が発生するのって、ちょっとどうなんでしょう・・・。

 今日のスーパー北斗11号の自由席の混雑では、例え座れていても、その雰囲気のせいで、とてものんびりなどできません。「さっさとホテルに帰って部屋でのんびりしたい」とやきもきしながら35分を耐え忍び、苫小牧に到着しました[④]。苫小牧で降りる人は多いですが、乗る人も多いです。苫小牧からの乗客も収容して、スーパー北斗11号は札幌ヘ向け、苫小牧を後にしました[⑤]

 ・・・で、このまますぐにホテルに帰ろうかと思いましたが、発車標に「特急北斗星」の表示が出ていたので[⑥]、上野行きの北斗星号を見てからホテルに帰ることにしました。18:05、青いDD51形に牽引されて北斗星号がやってきました[⑦]

 「ブルートレイン」が最も美しく見える時間帯はいつでしょうか。ブルートレインだけに深夜だと言いたいところですが、私は、このような陽が沈みかけている夕方であると思っています[⑧]。車体を包む深い青色がこれからの相棒となる夜空を思わせ、辺りが暗くなりかけることで浮かび上がってくる車内の照明が、ブルートレインの中に存在する特別な空間を映し出します。

 観光での利用が中心と思われる北斗星号ですが、同じく上野〜札幌間を走るカシオペア号と違い、開放式B寝台や1人用のB寝台個室ソロの連結もあるなど、商用での利用も可能な列車であると言えます。5号車と6号車には、ソロの小窓が上下にびっしりと並びますが[⑨]、これらの部屋の中にも、もしかしたら、出張などのために利用している人がいたかもしれません。

 1分の停車で苫小牧を発車する北斗星号[⑩]。ステンレス製で無塗装の面積が多いE26系と比較すると、鋼製で車体全体に塗装が施されている24系の方が、どこか重厚感と高級感、存在感を振りまいているような気がします。そのようなカシオペア号と北斗星号の対比というのは、最新で綺麗かつ新しいがどこか軽くて安っぽい最新のホテルと、古さは否めないが味わいや伝統・高級感がある旅館、という対比に重なるものがあります。


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