1両編成の気動車に乗って単線非電化の線路上を走っていると、とても「本線」を冠する路線に乗っているという気がしません。1両編成の気動車が単線非電化の本線を走る例は他にもありますが、優等列車がなく、盲腸線形態の路線であることや、沿線にこれという街がないことを考えると、「幹となる本線」ではなく「ただのローカル線」に乗っているような気がしてきます(いや、実際ローカル線なんですけどね)。
平日の昼下がりの日高本線は乗客も少なく、それこそまさに「ローカル線」の様相を呈しています。乗車客・降車客のいるいないに関わらず、そこにある駅全てに停車しながら、時間をかけつつゆっくりと南東方面に進んでいきます。1つの駅も通過しようとしないその走りには、つい退屈さを感じてしまいますが、全ての駅に停まる分、逆に「どれくらい進んだか」が分かりやすいです。様似まであと●駅だな・・・などと数えやすくなりますからね。
12:48に本桐に到着します[②]。特に秘境駅というわけではないので、全国的な知名度は低いかもしれませんが、日高本線にとっては、とても重要な駅です。実は、日高本線で列車交換が可能な駅は本桐が最後で、これ以降、列車交換が可能な駅はありません。本桐〜様似間(33.5km)は1閉塞となり、2つ以上の列車が同時に在線することはできません。最後の1閉塞への入線許可を受ける”関所”とも言うべき駅です。
上り列車が本桐にやってきました[⑥]。これで、本桐〜様似間の閉塞の走行権が、あちらの上り列車からこちらの下り列車にやってきました。もっとも、走行権がやってくると言っても、昔のようなタブレット交換までは行いません。さすがにそこまで古めかしいことはやっていません。
車窓には、未来の競走馬候補たちの姿が見られます[⑦]。競走馬の名産地・日高地方を走る路線ならではの車窓です。日高本線においては、海岸線を走行する際に見える海が最高の絶景でしょうが、特徴のある車窓としては、やはりこの馬が見える車窓を挙げておきたいですね。また、もうひとつ特徴のある車窓としては、夏季の昆布干しが挙げられそうです(日高本線の線路はそのすぐ脇を通ります)。
13:00ちょうどに到着する荻伏は、例によって車掌車を改造したものを駅舎として使用していますが、宗谷本線で見られた車掌車改造の駅舎とは異なり、側面にも引き戸の出入り用の扉を設けていました[⑧]。また、それだけでなく、地元の高校の美術部によるペイントが施されていて、ホーム側は水平線と太陽、駅前側は青空と気球が描かれています。車掌車改造の簡易的な駅舎ですが、なかなか手がかかっています。
東町〜日高幌別間で海の近くを走ります[⑨]。海のほど近くを走るところがあるのは、この区間が最後です。日高幌別まで来ると、終点の様似まではあと一息というところで、その後は鵜苫、西様似と停車して、終点の様似へ至ります。
そして13:36、列車は苫小牧から142.5kmの距離にある盲腸線の終点・様似に到着しました[⑩]。日高門別からと言っても、2時間24分はかかっているので、「ようやくか」というのが正直な感想です。ただ、盲腸線って、来るときは別にいいんですが、帰りが大変なんですよね。「帰りも全く同じ道を通るしかない」と思うと、絶望感に襲われてしまいます。日高本線の場合、「142.5kmの長さ」「帰りも普通列車」が加わるので、なおさらです。
さて、様似に到着して苫小牧〜様似間を結ぶ日高本線の全線乗車を果たしたことで、私は、JR北海道の路線全てを制覇したことになりました。北海道新幹線の新函館北斗開業を迎えると、新たに北海道新幹線の新青森〜新函館北斗間が未乗車の路線として現れることになりますが、それまでの間は、私は「北の大地の鉄路を乗り尽くした男」として胸を張ることができます。
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