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 下りの普通列車に乗車して様似を目指します[①]。様似までの所要時間は2時間14分です。この時点で雨が本格的に降り始め、屋根のない日高門別駅のホームでは、傘を差しながら列車を待たなければなりませんでした。

 列車は、11:51に静内に到着します[④]。静内駅は、日高本線の主要駅に数えられる駅であり、この駅を始発・終着とする列車の設定があるほか、この駅を跨いで走る列車は、全て長めの停車時間をとっています(最低でも6分、長いものは32分)。私が乗車している様似行きの普通列車も、11:51に静内に到着し、19分後の12:10に静内を発車します。

 その19分間をずっと車内にいるのはもったいないの極みなので、とりあえず改札口を通って駅舎の中へ向かいました[⑥]。終日社員配置駅で、みどりの窓口や自動券売機もあり、日高本線の他の駅とは明らかに一線を画しています。日高地方が競走馬の名産地であることはよく知られていることで、静内駅の駅舎内には、日高で生まれた名馬「サクラユタカオー」のパネルが展示されています[⑦]

 静内駅があるところは、以前は静内町でしたが、現在は、2006年に静内町と三石町が合併した結果誕生した町、新ひだか町となっています。駅前にある花壇には、新しい町の名前の周知のためか、赤色の大きな文字で「新ひだか町」の5文字が入っています[⑩]。ただ、文字の置き方がちょっと斜めすぎるような? 駅から出てきた人に見てもらうというよりかは、空撮されることを念頭に置いているような気が・・・。

 静内駅には、みどりの窓口や自動券売機がある他に、そば・うどんの販売店があります[⑬]。駅によくある立ち食い蕎麦の店ですが、容器代を払えば、車内持ち込み用の容器に盛り付けてもらって列車内に持ち込むこともできます。そこで、どうせなら走る列車の中で食べてみたいと思い、車内持ち込みにしてみました[⑭]。今日の昼食はこのうどんにしておきましょうか。

 静内での19分の停車を終え、12:10、2227Dは様似へ向かって再び走り出します。



















 1両編成の気動車に乗って単線非電化の線路上を走っていると、とても「本線」を冠する路線に乗っているという気がしません。1両編成の気動車が単線非電化の本線を走る例は他にもありますが、優等列車がなく、盲腸線形態の路線であることや、沿線にこれという街がないことを考えると、「幹となる本線」ではなく「ただのローカル線」に乗っているような気がしてきます(いや、実際ローカル線なんですけどね)。

 平日の昼下がりの日高本線は乗客も少なく、それこそまさに「ローカル線」の様相を呈しています。乗車客・降車客のいるいないに関わらず、そこにある駅全てに停車しながら、時間をかけつつゆっくりと南東方面に進んでいきます。1つの駅も通過しようとしないその走りには、つい退屈さを感じてしまいますが、全ての駅に停まる分、逆に「どれくらい進んだか」が分かりやすいです。様似まであと●駅だな・・・などと数えやすくなりますからね。

 12:48に本桐に到着します[②]。特に秘境駅というわけではないので、全国的な知名度は低いかもしれませんが、日高本線にとっては、とても重要な駅です。実は、日高本線で列車交換が可能な駅は本桐が最後で、これ以降、列車交換が可能な駅はありません。本桐〜様似間(33.5km)は1閉塞となり、2つ以上の列車が同時に在線することはできません。最後の1閉塞への入線許可を受ける”関所”とも言うべき駅です。

 上り列車が本桐にやってきました[⑥]。これで、本桐〜様似間の閉塞の走行権が、あちらの上り列車からこちらの下り列車にやってきました。もっとも、走行権がやってくると言っても、昔のようなタブレット交換までは行いません。さすがにそこまで古めかしいことはやっていません。

 車窓には、未来の競走馬候補たちの姿が見られます[⑦]。競走馬の名産地・日高地方を走る路線ならではの車窓です。日高本線においては、海岸線を走行する際に見える海が最高の絶景でしょうが、特徴のある車窓としては、やはりこの馬が見える車窓を挙げておきたいですね。また、もうひとつ特徴のある車窓としては、夏季の昆布干しが挙げられそうです(日高本線の線路はそのすぐ脇を通ります)。

 13:00ちょうどに到着する荻伏は、例によって車掌車を改造したものを駅舎として使用していますが、宗谷本線で見られた車掌車改造の駅舎とは異なり、側面にも引き戸の出入り用の扉を設けていました[⑧]。また、それだけでなく、地元の高校の美術部によるペイントが施されていて、ホーム側は水平線と太陽、駅前側は青空と気球が描かれています。車掌車改造の簡易的な駅舎ですが、なかなか手がかかっています。

 東町〜日高幌別間で海の近くを走ります[⑨]。海のほど近くを走るところがあるのは、この区間が最後です。日高幌別まで来ると、終点の様似まではあと一息というところで、その後は鵜苫、西様似と停車して、終点の様似へ至ります。

 そして13:36、列車は苫小牧から142.5kmの距離にある盲腸線の終点・様似に到着しました[⑩]。日高門別からと言っても、2時間24分はかかっているので、「ようやくか」というのが正直な感想です。ただ、盲腸線って、来るときは別にいいんですが、帰りが大変なんですよね。「帰りも全く同じ道を通るしかない」と思うと、絶望感に襲われてしまいます。日高本線の場合、「142.5kmの長さ」「帰りも普通列車」が加わるので、なおさらです。

 さて、様似に到着して苫小牧〜様似間を結ぶ日高本線の全線乗車を果たしたことで、私は、JR北海道の路線全てを制覇したことになりました。北海道新幹線の新函館北斗開業を迎えると、新たに北海道新幹線の新青森〜新函館北斗間が未乗車の路線として現れることになりますが、それまでの間は、私は「北の大地の鉄路を乗り尽くした男」として胸を張ることができます。




























 全長142.5kmの盲腸線の終点、様似駅。線路はホームを通り過ぎてもしばらく伸び、そして緑色の柵の前で途切れます[①]。日高本線という路線は、計画上はこの後も線路が伸び、襟裳岬を経由して、広尾線の終点の広尾駅に至ることになっていましたが、様似までしか開通しませんでした。未成線の様似〜広尾間は、国鉄バス・JR北海道バスの日勝線として営業することとなりました[③]

 日勝線となる部分が開通していれば、苫小牧〜帯広間が様似・広尾経由で鉄道で結ばれていたはずでした。しかし、日勝線にあたる区間は、結局鉄道では開業せず、また帯広〜広尾間を結んでいた広尾線も、1987年に廃線となりました。現在でも、様似〜帯広間を広尾経由でバスで移動することができますが、4時間30分もの所要時間がかかるので、かなり大変かと・・・(それゆえ、私は日高本線を折り返して帰ることにしました)。

 駅舎は、観光案内所を併設しているタイプのものです[⑧]。様似付近の観光名所といえば、やはり襟裳岬でしょうか。様似駅からはバスで50分ちょっとで辿り着けるようです。わざわざ日高本線を乗り通して様似まで来たくらいなので、襟裳岬まで行ってきた方が良いんでしょうけど・・・、バスと列車の時間の都合上、行けませんでした(というのは後付けで、どういうわけか、最初から行こうなどという考え自体がありませんでした)。

 折り返しの列車は14:34発なので、約1時間の時間があります。とりあえず、駅の周辺を適当にぶらついてみます[⑫] [⑬]。様似町は人口約4700人の町で、様似駅を中心として市街地が広がっています。北海道の他の町と同じく、どんどん人口が減少していますが、コンビニ、郵便局、ドラッグストア、スーパー、ラーメン屋といった諸々の施設が点在し、普通の「町」が形成されています。

 駅の近くにある郵便局へ向かい、1万5000円を下ろしました。はやぶさ号の指定席特急券を払い戻したことによって戻ってきたお金もあるとはいえ、33580円のカシオペア号の寝台券を入手したことで、相当な額のお金が財布から流れて行ってしまいましたからね。寝台列車の寝台券を急遽入手することも考慮した額のお金を持ってきていましたが、念のため、ここで補充することにしました。

 様似駅は1面1線の駅です。しかし、列車の本数が少なく、また、本桐〜様似間は閉塞区間となっていることもあってか、約1時間の折り返し時間がありながらも、列車は、ホームに据え付けられたままでした[⑭]。駅構内には側線もありますが、私には、その側線を使うような状況が思い浮かびません。ただ、使う使わないは別にしても、側線がある(本線以外にも線路がある)と、なんとなく「終着駅らしさ」が出てくるような気がします。

 様似駅に戻ってきたそのとき、「歓迎 ようこそ様似町へ」と書かれた小さな看板を見つけました[⑰]。ただ、ちょっと考えてみれば、これって違和感がありますよね。駅に来る人・・・、つまり、これから列車に乗って様似町を出ていこうとする人に対して「ようこそ様似町へ」と言っても意味がないと思うんですが・・・。記念撮影用という解釈でもしておけば良いのでしょうか。


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