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 日高本線を終点の様似まで乗車したので、ここからは、苫小牧を目指して戻っていきます。ただし、これから乗車する14:34発の苫小牧行きを終点の苫小牧まで乗り通すということはなく、苫小牧から様似に向かったときと同様、適宜途中下車をしつつ苫小牧を目指します。

 日高本線を乗り潰すにあたっての辛いことを挙げると様々なものが出てきますが、少なくとも定期列車に関してはキハ40形しか走らないというのも、そのひとつになってくるかと思います[①]。「同じ車両しか走らない」という点では、例えば留萌本線もキハ54形しか走りませんが、キハ54形は国鉄最末期の登場で比較的新しいですし、クロスシート部は転換式です。その点から行くと、キハ40形だけというのは・・・。

 浦河町は人口約13000人の町で、日高本線の沿線の町としては人口が多く、日高振興局を擁しています。その中心となるのが浦河駅です[③]。しかし、本桐〜様似の閉塞区間に含まれるということもあってか、浦河駅は1面1線という最小限の構造で、また、ここを始発・終着とする列車の設定もありません。日高本線の列車の運転上では、静内駅などと違い、特に重要な駅とはなっていません。

 競走馬として育てられる未来の名馬候補たち[④]を見つつ、列車は絵笛駅に到着します[⑤]。「絵笛」という駅名からは、絵に描いたような緑豊かな景色がそこにあって、BGMとして笛の演奏が似合うような駅を想像しますが・・・、さて、どのような駅なのでしょうか? まあ、「どのような駅」なんてもったいぶっていますが、このような途中駅でわざわざ降りている時点で、もう皆さんもお察しのことでしょう。


























 静寂に包まれる絵笛駅。単式1面1線の構造、屋根がなく短いホーム、民家が少ない静かな環境、駅舎という駅舎がなく待合室だけしかないことなど、北海道でよく見られる秘境駅に共通する特徴を持っています。

 しかし、絵笛駅は、「よくある秘境駅」で済ますことはできないであろう大きな特徴を持っています。それは、駅が牧場に囲まれていて、競走馬候補の馬をはじめとする動物が見られるという点です[④]。ホーム上に立っていても、草地に放牧され、のんびりと時間を過ごしている馬の姿を見ることができます。海が見られる秘境駅はあっても、馬が見られる秘境駅はまずありません。

 待合室はレンガ造り風[⑤]。大きな待合室ではありませんが、出入り口が左右2か所に設けられているという特徴が見られます。外壁は灰色となっていますが、内壁はレンガらしい茶色となっています[⑧]。秘境駅ではお馴染みの駅ノートの設置もあり、この駅が駅ノートを設置するに値する秘境駅として評価されていることを示しています。

 駅の立地条件を考えれば、ごくごく一般的な人の乗降はかなり限定されているものとみてよいでしょう[⑩]。駅周辺にあるのは、家畜と牧場、そしてその牧場主が住む民家だけです。この駅を利用するのは、鉄道好きな人間と牧場関係者くらいでしょう。一般人の乗降はもちろん可能ですが、駅の外に出られるのは東芝社員だけという海芝浦駅と似た限定性を感じます。

 馬たちを見るだけであれば、ホームに立っているだけでも見られますが、せっかくなのでもっと近づいてみましょう。駅を離れて道路に向かえば、馬たちをより近く、大きく見ることができます[⑫]。馬そのものや競馬には特に興味はありませんが、毛の色について個人的な好みを語らせていただくならば、こういったごく普通の茶色の毛をしている馬が一番好みでしょうか[⑬]

 大きめの道に出てきました[⑭]。「大きめ」と言っても、車同士がすれ違えそうな幅があって、中央にセンターラインが引かれているからそう呼んだだけなんですが・・・。実際にはただの田舎道ですよ、もちろん。車通りも人通りも非常に少なく、私がこの道にいたときは、人の姿を見かけることはなく、車は2台が通過しただけでした。やっぱり秘境駅はこうでないとね。

 絵笛駅周辺で見られる動物は馬だけかというと、そんなことはありません。いや、私もそう思っていたんですが、この大きめの道に出てきたら、羊を目にすることができました[⑮]。4頭とも同じような姿勢になっているのが面白いですね。で、この羊ですが、果たして羊毛採収用に飼育されているものなのでしょうか。ここが北海道だということを考えると、羊肉用に飼育されている可能性もあるかもしれません。

 至近距離まで近づけそうな馬がいたので、近づいてみました[⑯]。牧場主ではない見慣れぬ顔に興味を示したのか、私の動きを追って走ってきました。もし絵笛駅で下車される場合は、是非駅の近くをぶらついて、このように馬や羊の近くに近づいてみてください(もちろん、それは柵の外側からですが)。ホームから遠目に眺めるだけでは、わざわざ絵笛駅で下車した意味が薄れてしまいます。















 絵笛からは下り列車に乗車しますが、様似までは行きません。2つ手前の鵜苫が目的地です。静内発様似行きの区間運転の列車ですが、キハ40形2両という”長め”の編成でした[①]。そのうちの後方の車両は、紫帯と黄緑帯を巻くJR北海道標準色の一般型車両で、日高本線専用車ではありませんでした。その車両が入るのは「稀に」ということなので、やはり珍しいようです。

 せっかく2両編成で走っているというのに、車内は完全にガラガラでした[②]。いや、ガラガラどころではありません。前の車両も後ろの車両も、私以外の乗客は1人としていませんでした。誰も乗客がいない無人状態で絵笛にやってきて、そこで私が乗車して唯一の乗客に。こうして私は、図らずも2231Dをたった1人で貸し切ることに成功しました。車内で何をしても、それが他人の迷惑になることはありません。

 15:53、鵜苫に到着しました[⑤]。絵笛〜鵜苫間の途中駅で人が乗ってくることはありませんでした。結局、絵笛〜鵜苫間の21分間、2両編成の列車を本当に1人で貸し切り続けてしまいました。ただ、絵笛に到着した時点で誰もいなかったということは、それよりも手前の駅から無人状態になっていたということになります。いったいどこの駅から始まっていたのでしょうか・・・。


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