ある日、自分のJR線の乗車状況を眺めていたとき、私は、ふとあることに気がつきました。
それは、未乗車の路線は西日本に多く残っており、実際、JR西日本線とJR九州線の制覇率は低いものであった、ということです。

このとき、私の脳裏に、ひとつの旅の輪郭が浮かび上がりました。
「今まで面倒臭がって手をつけてこなかったJR西日本のローカル線(特に中国地方)を地道に乗りつつ西進し、九州に上陸。
過去2度の旅で乗ることができなかった九州の路線を全て乗りつくし、西日本方面の路線の制覇率を一気に引き上げる旅」。

しかし、これは「JR西日本のローカル線を乗る旅」と「九州の路線を乗る旅」という、いわば2つの旅が存在しているようなものであり、
これらを同時に行うのは、日数の面でも、そして必要な資金の面でも、これまでにない難易度を突き付けられるものとも言えました。
やはり、それぞれで分けて別の旅として行うべきか? そんな思いもなかったわけではありません。

一方、JR線の乗車は確実に進行しています。東日本方面の未乗車の路線は、残りが少なく、かつ分散していて、
東日本方面では、もう何日も日数をかけて一度に大量に乗り潰す長い旅はできそうにありませんでした。

逆に言えば、今の西日本は、「未乗車の路線がたくさんあり、かつ集中して(繋がって)いて、何日も日数をかける長い旅ができる」状態です。
そうして思ったこと。「これは、日数をかけ、未乗車の路線を一気に乗り潰してくるような大規模な旅ができる最後の機会なのではないか?」

私の心は決まりました。2つの旅を繋げる。本来ならば2回の旅に分けているであろうところを1度にやろう。
放置していたJR西日本のローカル線も、今ここに覚悟を決めて立ち向かおう。どんなに日数と資金がかかろうとも、自分が思い描いた旅をしよう。

かつてない壮大な規模の旅への思いが、今ここに結実しました。
進化と大規模化の道を歩んで成長してきた我が旅の頂点となるために。そして、生業のごとく続けてきた乗り鉄の旅の集大成を体現するために。
◆8月13日◆
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 8月13日。まさに帰省ラッシュ真っ盛りというこの日、私は、東京駅21番線ホームにやってきていました。西日本方面の路線を大量に乗り潰すのが今回の旅の主眼ですが・・・、今年の3月、JR西日本において、「本当はそこに乗っていたのに、その記録が抹消されたうえに、新たなる未乗車の区間が追加された」という出来事が発生しました。そうです、その出来事とは、北陸新幹線の金沢開業と北陸本線の経営分離です。

 これにより、私が持っていた「北陸本線金沢〜直江津間の乗車記録」は無意味と化したうえに、「北陸新幹線長野〜金沢間(うち上越妙高〜金沢間がJR西日本の管轄)」が、新たに未乗車の区間として生まれました。そこで、今回は、まず北陸新幹線の長野〜金沢間を制覇し、これを皮切りとして、西日本方面の路線の乗り潰しを進めていくこととしましょう。

 これから乗車するのは、東京10:32発のかがやき509号です[①]。 北陸新幹線はそれなりに本数がありますが、列車を選ぶためのひとつの条件として、「東京〜金沢間を2時間28分で結ぶかがやき号に乗ること」を設定しました。これを満たすのは、かがやき509号しかありませんでした。東京を出ると大宮・長野・富山にのみ停車する列車であり、下り列車唯一の東京〜金沢間2時間28分走行のかがやき号です(上りは514号)。

 E7系が入線してきます[②]。E7系自体は、北陸新幹線の金沢開業に先駆け、2014年3月のダイヤ改正で営業運転に導入されています。そのため、真新しさはありません。実際、私も、あさま号として運用されていたE7系に、上野〜高崎間において、既に1度乗車しています。


















 この日は東北新幹線に遅れが発生していたため、東京駅を少し遅れて発車しました。車内放送によれば、今日のかがやき509号は満席とのことでしたが、東京を発車した時点では、まだ空席が目立ちました。大宮から乗ってくる人も結構いるということなのでしょう。列車は赤羽駅付近を通過した後、荒川を渡って埼玉県へと入ります[①]

 新幹線の車内からは、武蔵野線が形成する三角線を見ることができます[②]。ここを通る列車としては、八王子・府中本町〜大宮間を結ぶむさしの号、海浜幕張・新習志野・西船橋〜大宮間を結ぶしもうさ号が有名であろうと思います。

 列車は大宮でいよいよ満席になりました。ひとくちに「北陸新幹線」と言っても、東京〜金沢間で見れば、実際には東北(東京〜大宮)・上越(大宮〜高崎)・北陸(高崎〜金沢)の3つの新幹線路線を通っています。のぞみ号などは東海道・山陽の2つ、さくら号などは山陽・九州の2つのみなので、かがやき号・はくたか号は、実は、日本でも唯一の「3つの新幹線路線を通る列車」です。

 大宮からは上越新幹線に入るとともに、速度が上がり、新幹線らしい走りになります。途中停車駅も、大宮から先は長野・富山のみなので、新幹線らしい走りを長い時間体験できます。かがやき号は、主要駅に位置づけることができる高崎も通過していきます[③]

 碓氷峠トンネルを抜けると、そこは長野県軽井沢町です。群馬県から長野県に移り変わっています。辺りは霧がかっていました[④]。そこまで天気が悪いわけではないと思いますが・・・、涼しそう。かがやき号は軽井沢を通過してしまいますが[⑤]、碓氷峠トンネル出口〜軽井沢駅付近にかけて、新幹線としては例外的な急曲線(半径800m)があるため、100km/h以下(70km/hくらい?)という”新幹線らしからぬ”速度で通過します。

 さて、今日のかがやき509号ですが・・・、東北新幹線で発生した遅延は、北陸新幹線にも大いに波及しており、先行しているはくたか号(恐らく557号)も遅れているとのことでした。そして頭を押さえられた結果、なんとあろうことか、駅間で停車してしまいました[⑥]。在来線では、駅間で停車することはそれほど珍しくありませんが、新幹線では珍しいことと思います。

 東海道・山陽新幹線のように、ほとんどの駅が追い越しに対応しているというのであれば、はくたか557号を適当な駅で追い越すこともできる(はくたか557号は、定刻運転であれば追い越されない)のでしょうが、建設費をケチったからなのか、単純に本数が少ないからなのか、北陸新幹線の中間駅は、軽井沢・長野・上越妙高・富山以外は全て2面2線という構造になっています。この「抜けに抜けなくて待たされている」感・・・。

 列車はまもなく長野に到着します。しなの鉄道線の拡大に合わせ、JR東日本から115系が譲渡されたようですが、塗装変更が間に合っていないのか、信州色の車体にしなの鉄道のシールを貼ったという115系がいました[⑦]。そして列車は長野に到着[⑧]。もちろん長野で降りる人も多く、今日のかがやき509号は満席と言ったものの、それは長野までで、長野から先は、終点の金沢まで、いくらかの空席が見られました。




















 これまでは長野で強制的に下車させられていたわけですが、今は違います。長野から先の続きがあります[①]。ここから先は、2015年3月のダイヤ改正での延伸開業区間です。長野から先も引き続き新幹線に乗ることができているという事実には、ちょっと感動してしまいます。列車は長野新幹線車両センターに留置されているE2系を横目に、まだ真新しい新線区間を進んでいきます[②]

 北陸新幹線の延伸開業区間に限らず、整備新幹線として開業した新幹線路線は往々にしてそうなんですが、トンネルが多いです[③]。その代わり飛ばします!というのならば、まだ私としても許せるんですが・・・、整備新幹線は、どうあがいても260km/hしか出ません。とはいえ、下り列車の左手に現れる山々[⑤](この写真は立山連峰ではない)や、糸魚川付近で右手に現れる日本海は、北陸新幹線を代表する名車窓と言えます。

 長野を出て以来初めての都会らしい街並みが見えてくると[⑥] [⑦]、まもなく富山です。数分遅れて到着した富山では、長野以上に多くの人が降りていきました[⑧]。富山駅は神通川のほど近くにあり、富山を出発すると、ほどなくして神通川橋梁を通過していきますが、同橋梁は、白く太いケーブルが橋桁を引っ張って支える様子が特徴的な「エクストラドーズド橋」となっています[⑨]

 新高岡を通過します[⑩]。富山と金沢は、新幹線のホームを既存の駅に併設することができましたが、高岡はそれが叶わず、城端線と接続する新駅・新高岡駅となりました。本来ならば高速で通過していくのでしょうが、「先行するはくたか号が云々」のせいで大幅な減速を強いられた後の通過だったので、200km/hにも遠く及ばないような速さでの通過となりました。

 遅れは最後まで回復することなく、結局、7分程度遅れて終点の金沢に到着しました[⑪]。「東京〜金沢間最速2時間28分」を体現する列車を選んで乗車しただけに、遅れて金沢に到着したということに対しては、正直、かなりの消化不良感が・・・。


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