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 智頭方面行きの列車の出迎えと風情ある駅への下車を兼ねて高野駅にやってきました。さて、ここはどんな駅なのでしょうか。

 昔は、ローカル線の小さな駅であっても、駅員が配置されているものでした。高野駅とて例外ではありません。無人化の時期は不明ですが、かつては有人駅であり、ここが有人駅であった名残が、駅舎の中に残されています。

 壁に打ち付けられたベニヤ板の色合いが、周りの壁の色合いと一致していません[④]。明らかに浮いています。そしてその下から飛び出た机、僅かに姿を覗かせるお金の収受を行う台[⑤]。ここには元々は窓口があり、それをベニヤ板を打ち付けることによって閉鎖した形跡が見て取れます。今では、自動券売機や乗車駅証明書の発行機もありませんが、かつては鉄道会社の駅員がここに常駐していたわけです。

 美作滝尾駅のものほどではありませんが、高野駅も風情のある木造駅舎を有しています[⑥]。青空の下に映える赤色の瓦葺屋根が印象的です。一方、駅舎入り口の三角屋根の頂点を見てみると、そこには小さなJRロゴが貼り付けられており、昔ながらの木造駅舎を継続して使用しながらも、(このロゴがいつ貼られたものかは分かりませんが)新生JRへの生まれ変わりという時代の流れにも乗ったことが分かります[⑦]

 駅前に、この「木造駅舎の駅前」によく似合うものがありました。木を使用した電柱です[⑨]。現代においては、コンクリート製の電柱が普及しており、このような生の木を使用した電柱を見かける機会は、それほど多くありません。私の記憶においても、木製の電柱を見かけたのは、北海道・宗谷本線の下沼駅前くらいしかありません。

 駅の近くを加茂川なる川が通っています[⑩]。ゴミの持ち帰りを呼びかける標示板に鳥が使われているのを見て、「加茂だからカモかよ」と思いましたが、カモにしてはちょっとカッコいい鳥でしたね。少なくともカモではないようです。一方、岡山県の鳥はキジのようですが、それとも違うように見えます。これはいったい何の鳥で、そしてそれが使われた理由は何なのでしょうか?

 朝の高野駅付近を加茂川がせせらぎます[⑪]。天気が良いと川の流れも美しく見えます。美作滝尾方面を眺めてみると、向こうに雲が低く水平に伸びており、山と川に挟まれた白雲が、眩しい朝陽の照らしと相まって、荘厳な眺めを作り上げていました[⑫]。そして水面は穏やかで、透き通った美しき水は、下にある石を、橋の上からでもはっきりと視認させました[⑬]

 次に乗る列車は、6:47発の智頭行きの快速列車です[⑭]。智頭方面は、5:08、5:30、6:47の順で列車が設定されており、この部分だけを見ると、「因美線は1時間に1〜2本程度の本数が確保されているローカル線なのか」と思ってしまいますが、その下の7時台、8時台、9時台、10時台には、1本の列車も記されていません。6:47発の次は11:45発です。




















 智頭行きの快速列車に乗車します[①]。因美線東津山〜智頭間は本数が少ないので、少ない本数の中でも利便性を確保するべく、全ての列車を普通列車としているのかと思えば、このような快速列車の設定があるあたり、そのようなつもりは別にないようですね。まあ、私のような「部外者」にとっては、通過駅のある快速列車は乗っていて面白いので好きなんですが。

 それにしても、今日は良い天気ですね[②]。実りつつある稲穂の萌黄色、茂る林の濃緑、薄く張った雲の白色、鮮やかで清々しい青色の空。そして山の端が空のそばに描き出す鮮明な輪郭。理屈ではありません。心の深層にある感覚が、これは素晴らしい景色であると叫んでいます。しかし、岡山県北部地域は、冬にはよく雪が降る場所でもあります。冬になれば、きっと限りなくモノトーンな景色も展開されるのでしょう。

 この快速列車では、美作滝尾駅は通過駅に設定されています。風情ある木造駅舎も、一瞬のうちに置き去りにしてしまいました[③]。これが観光列車であれば、観光停車として長めの停車時間を設けたり、あるいはゆっくりと通過したりするかもしれませんが、ごくごく普通の快速列車なので、登録有形文化財の価値に見向きもしないかのように、あっさりと通過してしまいました。

 美作滝尾、三浦を通過して、7:04に美作加茂に到着しました[⑤]。ここでは列車交換のために10分の停車時間が設けられています。しかし・・・、これは速達輸送を目的としている(はずの)快速列車なのですから、こういった長い停車時間によって、駅を通過して稼いだ時間を吐き出すのはどうかと思うんですが・・・。対向列車の時刻を調整するなどして、1、2分程度の停車時間にすることはできないものでしょうか。何のための快速列車だか。

 津山行きの普通列車がやってきました[⑥]。これで相手が快速列車なら、まだ許しようもありますが、相手は普通列車です。特別料金不要という点では対等といえども、ここはひとつ、快速列車の速達性を最大限に発揮させるためにも、向こうの方が10分停車するくらいのダイヤにしてほしいものです。駅を通過するだけ通過して速くないなら、普通列車にしてしまった方が、旅客の側としては便利なものでしょう。

 ふとキハ120形の車体を見てみると、「禁煙車」と書かれたシールが貼られていました[⑦]。JRの普通列車が全面禁煙というのは、今では当たり前のことで、わざわざ駅の放送で全車禁煙ですと案内したり、車体に禁煙のピクトグラムが貼り付けられていたりすることはほとんどありませんが、キハ120形が普通列車の全面禁煙化前と後の両方を知る車両で、「禁煙車」と表示して禁煙を周知する必要性があった時代を思わせます。

 途中、不自然にえぐれた山肌が見えました[⑨]。瑞々しい緑を湛えた森の中に現れた謎の空間。山火事の所為か、と考えましたが、その焼け跡であるとしたら、あまりにも整っていて綺麗すぎるでしょうか。しかし、材木が欲しくて森林伐採をしたならば、わざわざこんな山の上の方(下の方は切っていないのに)に穴を開けるようにやるものでしょうか?

 列車は知和を通過します[⑩]。美作滝尾、三浦、知和の3駅が、この快速列車の停車駅です。各停車駅での乗り降りは、那岐での1人の乗車を除いて見られず、私を含め計4人(うち1人が那岐から)という乗客数で終点の智頭に到着しました[⑪]



















 智頭駅です。東津山〜智頭間は普通・快速列車しかなく、地域輸送に徹している感のある因美線ですが、ご存知の通り、智頭〜鳥取間には、智頭急行線を経由してやってくる特急スーパーはくと号・スーパーいなば号が乗り入れており、一転して広域輸送も担う区間となります。

 跨線橋に奥出雲おろち号の広告が掲出されていました[③]。早くも明日のことを予告してしまいますが、明日は木次線を攻略する日となっており、この奥出雲おろち号にも乗車します。ややもすれば面倒で退屈な木次線の乗車も、窓のないトロッコ車両や12系座席車、観光ガイドの案内、車内販売といった様々な魅力的要素を持つ奥出雲おろち号にかかれば、きっと楽しいものになるでしょう。

 駅舎内には、自動券売機やみどりの窓口があります[④]。さすがに東津山〜智頭間の各駅とは格が違うようです。駅舎内では、「大阪⇔鳥取 約2時間30分! 乗り換えなしの一直線!」と銘打って、スーパーはくと号の宣伝が行われていました[⑤]。JR西日本の駅で智頭急行の列車の宣伝をしているのも妙な話ですが、右下に「智頭急行株式会社」とあるあたり、智頭急行からの依頼によるものなのでしょうか。

 駅舎の外観はどこか見覚えがあります[⑥]。そうです、先ほど下車した高野駅の駅舎にそっくりです。瓦葺の屋根に三角屋根の入り口というその見た目は、まさに高野駅と瓜二つです。両駅の間に特別な関係があるとは思えませんから、このような駅舎の造り方は、ひとつの様式となって、あるひとつの駅にとどまらず、複数の駅の駅舎に採用されたということなのかもしれません。

 智頭町は「杉の町」とのこと。駅前では、さっそく杉が下車した客を出迎えてくれます[⑧]。町の面積に占める森林の割合(林野率)は約93%にも上っており、人間が普通に行き来できる場所は僅か約7%しかないということになります。当然、主要な産業は林業です。

 智頭駅は、上郡駅からやってくる智頭急行線の終点の駅です。鳥取・倉吉行きの特急列車は、ここから先はJR西日本の因美線・山陰本線に乗り入れます。そんな智頭急行の智頭駅は、何やらJRの智頭駅よりも立派な駅舎を持っているようです[⑨]。JRの智頭駅よりも後にできた新しいものだから、と言いたいところですが、この駅舎には智頭急行の運輸部が入っているようですから、その影響で大きくなっているのでしょう。

 さて、次の列車に乗車しましょう。次に乗る列車は、8:11発の鳥取行きの特急スーパーいなば1号です[⑩]


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