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 宇美駅にやってきました。かつては、吉塚〜宇美〜筑前勝田間を結ぶ勝田線が接続していましたが、同線が廃線となったことにより、香椎線の単独駅となりました。福岡県内で廃線・三セク転換となった路線は数多く、それらが残っていれば、福岡県内の路線の攻略はより大変だったことでしょう。

 ひとつの路線の終着駅で、自動改札機まで設置されていますが[②]、駅員がいる気配が全くありません。いや、昼休み中であるという可能性を否定してはなりませんが、それならば、こんな鉄製のシャッターを下ろすことまではしないでしょう[③]。本当に昼休み中であるならば、せいぜいブラインドを閉めるくらいでしょうし、「ただいま休憩中です」くらいの掲示はするものでしょう。

 こんな掲示がありました[④]。これによると、香椎線の各駅(香椎、長者原以外)は、2015年3月のダイヤ改正より無人駅となったようです。ただし、何か問題があるときには、インターホンを通じて、香椎線の利用客専属の係員が応対してくれます。いわば「半無人駅」という状態でしょうか。なお、これにより、自動改札機の磁気券投入口は塞がれ、実質ICカード専用機となりました(紙詰まりなどが起きても即時の対応ができないからか)。

 駅舎は神社を思わせるものになっています[⑤]。駅の近くに宇美八幡宮がありますから、その所縁かもしれません。駅周辺はごくごく普通の住宅街であり、特に特筆すべき点はないように思われます[⑥]。駅前と駅近くのショッピングセンター脇から博多バスターミナルや天神へ直通するバスが出ているようなので、博多へは乗り換え必至な香椎線よりも便利かもしれません。

 単線非電化で、単独の駅(接続する路線がある香椎と長者原以外)が全て無人駅となった香椎線ですが、1時間に1本程度の列車が走るというようなただのローカル線ではなく、福岡近郊の路線として20分間隔程度での列車運行がなされており、それなりの本数が確保されています[⑦]。日中は毎時06・26・46分発のパターン化された発車時刻にもなっています。

 13:06発の西戸崎行きに乗車します[⑧]。途中の香椎・雁ノ巣行きという列車もあるので、宇美から西戸崎まで向かう場合は、列車の行き先に注意しなければなりません。車両はやはりキハ40系の2両編成ですが、香椎線色とJR九州標準色の混成となっていました[⑨]

 現在の宇美駅は、単式1面1線のホームと側線1本を有するという構造になっています[⑩]。側線があるのは、貨物列車が走っていたころの名残でしょうか。すっかり「しおらしく」なってしまった宇美駅のホームに、ひまわりが鮮やかに咲いていました[⑪]

 なお、香椎線は、途中の香椎・長者原でのみ他の路線と接続し、両端の宇美・西戸崎には接続する路線がないという、極めて珍しい形態の路線です。JRの路線でこのような形態になっているのは、数多の路線があるといえども、この香椎線のみです。























 13:06発の列車に乗車し、もう一方の終着駅、西戸崎を目指します[①]。香椎線は全長25.4kmの路線ですが、短い駅間距離で多くの駅が配置されていること、そして単線で列車交換が発生するということもあってか、西戸崎までの所要時間は57分と、距離の割には時間がかかっています。

 宇美の次の新原で、宇美行きの列車と列車交換をします。相手側の車体側面を見てみると、片方の車両は、片開きの扉となっていました[②]。宇美へ行くときに乗車した列車も、そして今乗車している列車も、2両とも両開き扉のキハ47形でしたが、香椎線では、片開き扉を備えるキハ40形も運用されているようですね(キハ48形は使っていない)。

 「停車中は使用しないでください」とは、列車内の便所が垂れ流し式であったころの名残です[③]。もちろん、ローカル線用のキハ40系といえども、現在はタンク式の便所となっていますが、扉には、「エンジンが停止すると〜水が流れません」という注意書きが貼られていました。便所自体が使用不能となるわけではありませんが、昔が「停車中は使うな」なら、現代は「エンジン停止中は使うな」というところですね。

 長者原駅周辺は、マンションなどが多く建っています[④]。同駅では、香椎線の線路は篠栗線の上を通っており、その関係で、駅の前後は築堤区間となっています。長者原駅周辺の込み入った地帯が築堤区間であるということは、即ち、道路との立体交差も実現しているということであり、渋滞の原因となる踏切の設置を回避することができました。

 鹿児島本線との接続駅である香椎を出ると、しばらくの間は同線の線路と平行し、そしていったん離れます。その後、鹿児島本線の線路に接近し、鉄橋でその上を越えていきます[⑤]。複線電化・幹線の鹿児島本線と、単線非電化・地方交通線の香椎線とでは、明らかに前者の方が格上ですが、前者を地上線、後者を高架線とした立体交差が構築されています。

 和白で列車交換を行います[⑥]。同駅は西鉄貝塚線との接続駅となっており、駅を出ると、西鉄線が香椎線の上を越えていき、そして分かれていきます[⑦]。香椎線の線路は、海へ突き出た海の中道へと進路をとるべく、左へ曲がっていきます。

 雁ノ巣に到着しました[⑧]。2つ先は終点の西戸崎ですが、ここで折り返していく列車も設定されています。雁ノ巣〜西戸崎間には、一般の住宅はほとんどなく、公園やプール、水族館、野球場、道路、線路、そして松原などが集まっていますが、あと2つくらい頑張れないものでしょうか。そこまでの区間にはなくても、西戸崎駅周辺には、ちゃんと人が住む家やマンションなどがありますしね。

 雁ノ巣を出ると、列車は陸繋島である海の中道へと進入します。次の海ノ中道までの区間は、線路が砂丘の中を通っており、鉄道の線路が砂浜の上を通るという、全国的に見ても珍しい光景が見られます[⑨]。「線路が砂浜の上を通る」という光景が見られる他の路線としては、北海道の日高本線がよく知られています。 雁ノ巣〜海ノ中道間には信号場が設けられており[⑩]、そこで列車交換を行いました[⑪]

 14:03、列車は終点の西戸崎に到着しました[⑫]。これで香椎線の全線乗車が完了しました。























 終点の西戸崎は2面2線の駅ですが、相対式ではなく、単式のホームが2つあるという構造になっています[①]。このような構造になっている駅は、九州の中では、他には肥薩線の大隅横川駅などが該当します。いずれにせよ、形態としては珍しいものでしょう。

 駅舎は1998年に改築されたコンクリート造りのものです[②]。例の水戸岡鋭治氏がデザインした駅舎とのことですが、四角い箱に蒲鉾型の屋根を載せただけとも受け取れるデザイン、特に色を塗ることなく灰色むき出しのコンクリートなど、「これは本当に普段あれだけ奇天烈なことをたくさん行っている氏がデザインしたものなのか?」と疑りたくなります。なお、「ヨットをイメージした」とのことですが、正直、どのあたりがそうなのか・・・。

 西戸崎駅は、志賀島への最寄り駅でもあります[③]。志賀島と海の中道は橋で結ばれているため、陸路での移動が可能です。また、満潮でないときには、志賀島と海の中道の間にある砂州が姿を見せるため、その場合には、島でありながら、本当に陸続きになってしまいます。時間があれば行ってみたかったところですが、志賀島へ行くだけの時間をとることはできませんでした。

 50分ほどの待ち時間がありますが、いったいそれをどうやって潰しましょうか。とりあえず駅前を横切る道へ入ってみたところ・・・[⑥]、「市営渡船 船のりば」と書かれた看板がありました[⑦]。なるほど、そのあたりへ行けば、博多湾を眺めることができそうですね。

 というわけで、渡船のりばの近くへ向かってみると・・・、そこには、一面に広がる博多湾、海の青ささえも吸収してしまったかのような鮮やかな青空、そして日本有数の大都市・福岡市の街並みを一度に見られるという、たいへん素晴らしい景色がありました[⑧]。今回の旅の中でも、既に海景色を見る機会が何度かありましたが、いずれも「海原」でした。海(湾)の向こうに都市の街並みが広がる[⑨]。これまでにない新しい景色です。

 西戸崎駅周辺には、博多湾に面するマンションが何軒か建てられています[⑩]。この素晴らしい眺めを「旅先」ではなく「自宅」から眺められるとは、たいそう羨ましい話ではありませんか。しかも、ここは福岡市内です。買い物や娯楽、雇用などに苦労することはほとんどないでしょう。なお、「雇用」という言葉が出てきましたが、この辺りに住む人たちの中には、船を使って博多方面へ通勤する人が少なからずいるようです。

 ズームレンズを望遠鏡代わりに使ってしまえば、対岸の様子がよく分かります。色とりどりのコンテナが見えますが、これは貿易港でしょうか[⑪]。港にあるクレーンも見えます。港の向こうには、独立した棟が空中通路で繋がっているという高層マンションもあるようです。そこから視点を右の方へとずらしてみると、赤色の博多ポートタワーを中心として、博多・天神の繁華街の様子を見ることができました[⑫]

 対岸に博多の街並みがあるということは、つまり、福岡空港が近いということでもあります。ふと空を見上げてみると、ピーチの飛行機が青空の中に見えました[⑬]。離陸して高度を上げている最中というところでしょうか?

 西戸崎駅の近くに、「高層マンション建設予定地」と書かれた看板が立てられていました[⑭]。線路と海の間の空き地にあったので、やはり、博多湾を望むマンションとなるのでしょう。今から新築するということは、それだけ、この地に「海が見えるマンション」の需要があるということですね。


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