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 波子から浜田までキハ120形の普通列車で移動します。なお、この列車の車内後方には、三江線の424D・426Dでお世話になった運転士が便乗していました。三江線の運転士は浜田鉄道部に所属しているようなので、そこへの帰路だったのかもしれません。

 下府に到着しました[①]。この駅の待合室には、「出雲市 京都 大阪方面」と書かれた案内板が貼り付けられていました[②]。かつて、山陰本線には、京都〜下関間を山陰本線経由で走る夜行普通列車があったといいます。下府に特急列車が停まったことはないはずですが、その普通列車を利用すれば、尋常ではない所要時間をかけながらも、京都へ1本で行き来できたようです。

 16:33に浜田に到着します[③]。浜田から先は列車番号が変わり、37分の停車時間が設けられているなど、実質、浜田が終点と言って差し支えないでしょう。そして同じ車両が浜田発益田行きとなる、という具合です。三江線の三次〜石見川本の424D、石見川本〜江津の426Dと似たような感じですが、あちらは石見川本での停車時間が極めて長いためか、時刻表上でも別の列車として取り扱われ、石見川本で乗客は一度全員下車します。

 浜田からは特急列車の出番です。16:41発の特急スーパーおき5号に乗車し、新山口を目指します[⑥]。この列車を使って、新山口〜益田間を結ぶ山口線の攻略を行います。SLやまぐち号に乗れれば面白いところでしたが、時間と日付(今日は運休日)が合いませんでした。























 キハ187系の特急スーパーおき5号が入線してきました[①]。僅か2両編成、全車普通車グリーン車なし、丸みが碌にない平面的な造形という安っぽい車両ですが、単線・非電化・悪線形の山陰本線を高速で駆け抜けられるその走行性能は本物です。

 意気揚々と浜田を発車したスーパーおき5号ですが、次の西浜田は、益田寄りの分岐器がY字分岐となっているため、減速しての通過を強いられてしまいます[②]。半径の小さい曲線などは振り子で攻略できても、高速通過を想定していない分岐器はどうにもなりません。

 さて、いよいよ山陰本線でも随一の絶景がやってきました[③]。余部橋梁からの眺めも素晴らしいですが、「手が届きそうなところに日本海」「視界いっぱいに日本海」という眺めは、あちらを上回る魅力があると思います。ところどころ海面に岩肌が露出し、そこにぶつかった波は白い飛沫を立て、海水は絵の具を塗りたくったかのような深みのある青を湛えています[④]

 今日は穏やかな日本海。どこからともなくやってきた波は、砂浜に優しく打ち寄せていました[⑤]。1台の車と何人かの子供がいるのを確認できましたが、波子の海水浴場と異なり、多くの人が集うという状況ではありませんでした。ここは海水浴場として人々が集うほどの場所ではないということでしょうか。この素晴らしい海を、この素晴らしい眺めを自分たちだけで独占できるなんて、うらやましい限りじゃありませんか。

 列車は17:14に益田に到着します[⑥]。ここから先は山口線に入り、運転士の交代が行われます。その絡みもあって、4分の停車時間が設けられています。列車はここまで全体的に空いていましたが、益田で予想だにしなかった数の人が乗ってきて、1号車の指定席は、ほぼ満席となりました。

 石見横田を通過します[⑦]。特急列車が走っているため、あまりそのような感じがしないかもしれませんが、山口線の益田〜津和野間は、定期の普通列車は7往復しか走っておらず、需要の少ない閑散区間となっています。

 津和野駅の手前で、駅近くに保存されているD51形の姿が見えました[⑧]。津和野といえば、C57形が牽引するSLやまぐち号の終点駅で、蒸気機関車と縁の深い駅です。ホームに立てば現役の蒸気機関車の姿が見られ、駅前に立てば静態保存の蒸気機関車の姿が見られます。蒸気機関車の復活運転は全国各地に広まっていますが、その全ての始まりは、1979年運転開始のSLやまぐち号でした。

 水田に自らの影を映しながら走るスーパーおき号[⑨]。山口線内の最高速度は85km/hで、振り子機能の使用も停止されます。キハ187系ならではの走りを見せることはなく、すっかりローカル特急に都落ち。もちろん、通過駅が多いので、普通列車よりは格段に速いんですが、なんか・・・。

 なお、余談ですが、私がこの列車に浜田から乗ったのは、完全にチョンボです。時刻表をご覧いただくとすぐに分かりますが、この列車は、波子にも停車しています。それにも関わらず、私はわざわざ普通列車で浜田まで行きました。それはなぜか?

 理由は「特急料金の計算にも換算キロを使うと思っていたから」。波子〜新山口間は、山陰本線の営業キロ+山口線の換算キロの場合、150kmを超えてしまいます。一方、浜田〜新山口間では、山陰本線の営業キロ+山口線の換算キロであっても、150kmを下回ります。それなら浜田から乗った方が節約になるぞ、と思ったんですが、そう、私は、地方交通線であっても、「料金」の計算は営業キロを使うということを知らなかったんです。

 閑話休題。列車はまもなく山口に到着します[⑩]。山口が近づくと、住宅やアパートが増えてきて、たしかに街らしくなってきますが[⑪]、ご存知の通り、山口駅は、大幹線の山陽本線ではなく、地方交通線である山口線に位置しています。その歴史的経緯等もあって、山口市は、県庁所在地でありながら、県内の他の各都市の後塵を拝してきた街です。山口駅周辺の街並みも、県庁所在地らしいものかというと・・・。

 まもなく終点の新山口です[⑫]。駅構内にある下関総合車両所・新山口支所などを横目に見ながら[⑬]、新山口駅のホームへと進入。18:51、浜田から2時間10分の所要時間をかけて、スーパーおき5号は、終点の新山口に到着しました[⑭]























 「新」をつけて名乗るものの、山口線にある山口駅よりも遥かに交通の要衝となっている新山口駅にやってきました[①]。利用客の数で比較してみても、新山口は、山口の約4.5倍強の利用客数があります。一応、県庁や市役所は、山口駅の方が近いようですが・・・。

 1番線はSLやまぐち号の発着ホームとなっており、専用の各種装飾が施されています。「継続は、力なり」[②]とありましたが、山口県内を通る山口線や美祢線、山陰本線は、大雨によって不通となったことがあったものの、いずれも、見事な復活を果たしています。詳しい解説は、「被災鉄道、なぜ山口県は早期復旧できたのか」で出てくる記事にお願いしようかと思いますが、たしかなことは、山口県は鉄道に対する理解が深いということです。

 SL列車の古風な雰囲気に合うよう、1番線にあるゴミ箱は、木の板を張り付けて、古めかしさが出るようにされています[③]。また、特別な駅名標として、当駅が小郡駅だったころの、しかも右から左へ文字を書いていたころの駅名標が立てられています[④]。この他、蒸気機関車D51形の主動輪として使われていた車輪が保存されています[⑤]

 在来線5面8線、新幹線2面2線という構造の新山口駅は、主要駅としての風格が溢れています[⑥]。山陽本線、山陽新幹線、山口線、宇部線が集い、路線の数を見ても、まさに交通の要衝であると言えます。県庁所在地の代表駅たる山口駅がなぜあのような状況になっているのか、というと、当時のお偉いさんが、山口市街地に鉄道が通るのを忌避したからだ、という説がありますが、真偽のほどは定かではありません。

 新山口駅周辺は、なかなかの街になりました。衛星写真で見てみたとき、あるところを境に、市街地と田園地帯がすっぱりと分かれているのが気になりますが、特に新幹線口(南口)は、背の高いビルが多いようです[⑦] [⑧]

 「新山口駅に垂直の庭、準備中」[⑩]。垂直の庭とはどういうものであるのか、というと、市内で採取された約150種の植物を通路の壁面に埋め込むというもの、だそうで。新山口駅とその周辺では、現在、「新山口駅ターミナルパーク整備事業」なるものが、2016年度の完了を目指して進められており、良くも悪くも、「新山口駅重視」という流れがあるようです。まあ、遠来からの客を一番に出迎えるのは、山口駅よりも新山口駅ですからね。

 駅の近くに、「北九州予備校山口校」がありました[⑪]。例えば下関市の場合、山口県の最西端に位置しているということもあってか、福岡は北九州市との交流が深いと言われていますが、このように、北九州に本社を置く予備校の校舎が新山口駅前にもあるなど、県全体で見ても、九州との結びつきの強さがあるのかもしれません(九州外は東京校と山口校のみ)。

 次に乗る列車は、19:21発の山陽本線・下関行きです[⑫]。2014年3月に使用が開始されたばかりの橋上乗り換え通路は、駅の乗り換え通路にありがちな「古くて薄暗い」という印象とは無縁で、新築のビジネスホテルのフロント周辺を思わせ、清潔で綺麗な印象を放ちます[⑬]

 使うことなく持て余してしまう、山陽本線ホームの端っこ[⑭]。新山口駅にやってくる旅客列車で、長編成と言えるだけの編成長を持っていた最後の列車は、富士・はやぶさ号でした。機関車を含めると13両に達するその編成であれば、ホームのほぼ端から端までを使うことができますが、これから乗る普通列車が4両編成であるように、ホームの有効長を必要とする列車は、もはや存在しません。その長いホームは、古き時代の名残です。


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