◆8月19日◆
Page:32

※各画像はクリックすると拡大します。























 日付は変わって8月19日です。これまで、上に行ったり下に行ったり横に行ったりしながら、JR西日本のローカル線を攻略してきましたが、その作業も、ついに今日が最後です。厚狭〜長門市間を結ぶ美祢線の攻略を以て、今回の旅における、JR西日本のローカル線との格闘が終結します。今日はいよいよ九州に上陸し、現在使用している出札補充券の乗車券の到着駅・長崎を目指します。

 7:34発の長門市行きに乗車します[③]。発車標には、「山陽本線 下関・九州方面」とありますが、そうです、ふつう、厚狭から九州に行こうと思ったならば、新幹線、あるいは山陽本線を利用します。しかし、私は、そこを美祢線・山陰本線・山陽本線という遠回りな経路で九州を目指します。

 車両は1両編成のキハ120形[④]。美祢線にはラッピング車両が走っているとのことですが、至って普通の車両が充当されていました。なんとなく「混むならば向こうから厚狭に来る列車」と思っていましたが、車内は高校生などによって、思っていたよりも混雑していました。

 厚狭を出ると、美祢線はすぐに厚狭駅から離れます[⑤]。ほどなくして、線路が複線となり、ホームらしきものがあるところを通過しました[⑥]。「廃駅の跡地であろうか」と思いましたが、その正体は、鴨ノ庄信号場。かつての美祢線には、石炭や石灰石を輸送する貨物列車が多数運転されており、駅間に列車交換ができる信号場が必要でした。しかし、それらの貨物列車は全廃されており、現在は、ここでの列車交換も行われていません。

 線路に注目してみると、一ローカル線である美祢線には破格とも言えるPC枕木が敷設されていました[⑦]。上述のように、かつての美祢線には、厚狭〜美祢間を中心として、多数の貨物列車が運転されていました。PC枕木が使われているのは、重量級の貨物列車が多数往来することに備えてのものなのでしょう。また、美祢線は、そのように貨物輸送がとても盛んであったことから、旅客の輸送量は少ないながら、幹線に指定されました。

 厚狭の次の湯ノ峠で列車交換[⑧]。ラッピングが施されている車両が充当されていました。なんとなくの印象ですが、ステンレス車両にラッピングが施される場合、車体全体を覆うように施すことは少なく、銀色の部分にステッカーを貼る程度に留めることが多いような気がします。しかし、美祢線のラッピング車両は、見ての通り、車体全体を覆ってしまうようにラッピングされています。

 厚狭発車後から於福〜渋木間にかけて、美祢線は、厚狭川とのお付き合いが続きます[⑨]。厚狭川の流れに沿うように走り、川のその静かな流れを見せてくれる区間もあれば、厚狭川を渡って[⑩]、渡って[⑪]、渡って[⑫]、という区間もあります。橋梁を渡った回数の分だけ、厚狭川は、線路の右へ行ったり、左へ行ったりします。

 7:57、南大嶺に到着します[⑬]。かつては、ここから大嶺支線が分岐していました。以前は2面3線の駅で、島式ホーム(写真左側)と単式ホームという組み合わせでしたが、単式ホームに接していた大嶺支線用の1番線が廃止された後、単式ホームの幅が拡張され、写真のように、今列車がいる2番線に接するようになりました(写真右側)。駅舎は拡張したホーム側にあるため、2番線に入る長門市方面行きは、そちら側の乗降扉が開きます。

 8:02、美祢に到着しました[⑭]。さすがに主要駅で、ここでは多くの人が降りていきました。列車交換をするわけではありませんが、8分の停車時間が設けられており、一度車外に息抜きをするのには、ちょうど良い時間です[⑯]。ホームにある温度計は26度を指していました[⑰]

 貨物列車が多数運転されていたのは美祢までであったため、美祢から先は、普通のローカル線のごとく、木製の枕木が並びます[⑱]。逆に言えば、美祢から先は「明らかにローカル線なのにPC枕木」という個性が消え失せてしまうということ。ちょっと美祢線らしさが薄くなりますね。

 下車駅の渋木には8:31に到着しました[⑲]。長門市を目指して進みゆくキハ120形を見送りましょう[⑳]



























 渋木駅にやってきました。列車ダイヤの都合上、美祢線内の駅で途中下車をすることができそうだったので、どこの駅で降りてみようかと迷っていたとき、「利用客数が少ない」「風情のありそうな駅舎をしている」との理由により、渋木駅に決定されました。

 ホームは相対式2面2線[②]。厚狭から渋木までの各駅は、全て2線以上の線路を持つ駅となっており、全ての駅で列車交換が可能です。駅周辺にはある程度の民家がありますが、住宅街と言えるほどのものは形成されておらず、また、緑豊かな山々がのどかな雰囲気を演出してくれます[③]

 ホーム上に花壇が整備されていました[④]。地元の方々が手入れをしているのでしょうか。なかなか水をやれる時間もないのか、枯れてしまっている花も多いですが、その中で、桃色のチューリップだけは元気そうにしていました[⑤]。ん、いや、チューリップ? よく見てみると、これ、本物の花ではありません。そして造花ですらありません[⑥]。ソーラーパネルがありますが・・・、これを何に使うというのでしょう、夜になると光るとか?

 三江線沿線には、「三江線活性化協議会」なる組織がありましたが、美祢線沿線にも、「JR美祢線利用促進協議会」なるものがあるようです[⑦]。美祢線の旅客輸送量は少ないですが、貨物輸送の盛んさゆえに幹線に指定されてしまったため、ローカル線級の利用であるにも関わらず、山陽本線や東海道本線と同じ水準の運賃しか徴収できません。JR西日本の思いとしては、今からでも地方交通線に指定し直したいところでしょうが・・・。

 板を打ち付けて封鎖した窓口が物悲しい駅舎内[⑩]。駅舎内に利用客がいない場合でも、有人駅であれば、駅員の「気配」というものはあるわけですが、駅員も利用客もいなければ、ここに人の気配などあるはずもありません。今後、有人駅が無人駅になることはあっても、無人駅が有人駅になることは、まず起こらないでしょう。時が経てば経つほど、「がらんどう」な駅が増えていきます。

 「JR美祢線利用促進協議会」は、各種の費用補助などを行って、美祢線の利用を促進しています[⑪]。ラッピング列車を走らせることなどは、話題づくりにはなっても、利用客を増やすことに繋がるかと言えば、疑問符を付けざるを得ません。ラッピング列車の展開と資金面での補助、どちらをしてくれた方がより美祢線を利用したくなるかと言えば、やはり後者です。

 「臨時列車運転のお知らせ」が貼り出されていました[⑫]。しかし、運転日の日付をカレンダーで確認してみると、驚くほどに規則性がないということに気が付きます。間隔も曜日もバラバラです。沿線の学校の試験日程に合わせているのだろうか、と思いましたが、その真の運転目的とは。

 渋木駅の駅舎は、木造駅舎となっています[⑬]。各木材の色合いや状態にはばらつきがあり、なるほど、たしかに「”渋”い”木”造駅舎を持っているな」と思ったものです。もちろん、「渋木」という名前の由来は、この渋い木造駅舎ではありません。

 渋木駅には、もう使われていない側線があります[⑭]。ここで目を惹くのは、写真右側にある貯水タンク。蒸気機関車が走っていた時代に使われていた貯水塔・・・と言いたいところですが、それにしては、やけに小さいように思われます。この貯水塔がある部分は、かつての貨物ホームであると言われており、少なくとも、鉄道に関係のある貯水タンクであることは間違いないようです。

 渋木駅の近くでは、このような黒い羽を持つ蜻蛉がよく見られました[⑯]。普通の蜻蛉は、どこかに留まるときは、羽を動かさないで休ませると思うのですが、この蜻蛉は、どこかに留まっているときでも、羽を開閉し続けていました。また、周囲に対してかなり敏感で、私がちょっとでも近づこうものならば、すぐに飛んで逃げて行ってしまいました。

 駅の近くを通る音信川[⑰]。その水面に浮き出た水草に、例の黒い蜻蛉のつがいが留まっていました[⑱]














 9:23発の長門市行きに乗車します[①]。52分の待ち時間であったため、同一方向(長門市行き)の列車を待つことができました。同一方向の列車を待つと異常なまでに長い待ち時間ができてしまう場合は、一度逆方向の列車に乗車し、目的方向へ向かう列車を迎えに行きます。

 車両は、昨晩に厚狭駅で見かけたラッピング車両(キハ120-10、長門号)でした。外観は「大変身」を遂げていますが、残念ながら、車内は至って普通のキハ120形のままとなっています。シールを貼るくらいのことはしても良いような気がしますがね。

 列車は長門湯本、板持[②]と停車します。美祢線内では、これらの2つの駅のみが、列車交換をすることができない駅となっています。板持を出ると次は終点の長門市。駅のホーム端から500mほどの地点で、山陰本線と線路と合流します[③]

 9:36、列車は終点の長門市に到着し、これをもって、美祢線の全線乗車が完了しました[④]。長門市駅を訪れるのは5年ぶりのことですが、前回は、美祢線が台風の影響で不通になっていたときであり、山陰本線の列車でホームに降り立つと、「代行バスを利用されますか」と声をかけられました。今回は、あのときは動いていなかった美祢線での長門市到達。あのときに廃線にならず、見事に復活したからこそなしえたことです。


                  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25  26
27  28  29  30  31  32  33  34  35  36  37  38  39  40  41  42  43  44  45  46  47  48  49
50  51  52  53  54  55  56  57  58  59  60  61 


DISCOVER どこかのトップへ

66.7‰のトップへ