勇壮なる開聞岳を間近に望む駅、西大山[①]。ホームからは芸術的な美しさを持つ開聞岳の姿を見られます。それだけでも十二分に素敵な駅ですが、西大山駅を西大山駅たらしめているのは、やはりこちらの事実でしょう。
その事実とは、「JR日本最南端の駅」であること[③]。”西”大山が最”南”端というのは、最東端なのに南鳥島・・・を思わせるような「ズレ」がありますが、もちろん、これは「大山駅よりも大きく西にあると同時に、少しだけ南にある」ことの結果です。西●●駅だからといって、南北方向の緯度は全く動きません、ということはありえませんからね。
なお、西大山駅は、かつては文句なしの「日本最南端の駅」でした。しかし、2003年に沖縄でモノレール(モノレールは広義では鉄道に含まれる)が開業したことで、「本土最南端の駅」に改められました。その後、「沖縄は本土ではないのか」という文句が寄せられたため、今度は「JR日本最南端の駅」に改められました。でも・・・、「JR日本最南端の駅」だと、何か押しが弱いですね。
40ページにおいて、西大山駅を「日本最南端の駅」、枕崎駅のことを「日本最南端の始終着駅」と書いたように、私は、沖縄のモノレールについては、その存在を意図的に無視しています。これは、モノレールは広義における鉄道であり、「2本のレールの上を車輪のついた車両が走る」という狭義の鉄道には属していないうえに、私の中における「鉄道」の定義が、後者の狭義のものであるためです。
日本最南端の駅の標示と共に眺める開聞岳[④]。「日本最●端の駅」は、他にも東・西・北の3つがありますが、その実態は、いずれも街や住宅街の中にある駅で、特段素晴らしい眺めが得られる駅ではありません。「絶景」がついてくるのは、日本最西端の駅・西大山駅だけです。
今日の開聞岳は、頂上に雲がかかっていて、残念ながら、その美しき全貌を拝むことはできませんでした[⑤]。とはいえ、山頂が山の全てではありません。開聞岳の場合、左右で均整の取れたそのなだらかな傾斜にも注目する必要があります。半分だけの山が用意され、それを左右反転したものを置いたかのような「対称性」は、山頂が雲で覆われていてもしっかりと分かります。
日本最西端の駅は、松浦鉄道のたびら平戸口駅ですが、JRに限定すると、それは佐世保駅となります。最東端・東根室、最西端・佐世保、最南端・西大山、最北端・稚内[⑥]。私はこれらの4つの駅全てでの下車を果たしました。
「日本最西端」という肩書きが功を奏して、西大山駅は、今や立派な観光地となりました。駅名標と日本最西端の駅の標示が駅前側にもあるのは、まさに「記念撮影に使ってくれ」と言わんばかり[⑦]。実際、私が駅にやってきたときには、駅前に観光バスが停まっていました[⑧]。この他にも、他県や九州島外のナンバーを付けた自家用車が次々と発着し、その観光地化の一面を垣間見ました。
世の中には様々な種類のポストがありますが、西大山駅前にあるポストは、「幸せを届ける黄色いポスト」です[⑨]。なぜ黄色なのか、というのが疑問として湧いてくるところですが、指宿市の市の花のひとつが菜の花であることが関係しているように思われます。
バスでやってきた観光客たち(台湾人か)が出迎える中、9:00発の指宿行きの普通列車がやってきました[⑩]。当然、彼らは列車に乗るはずはなく、乗車したのは私だけ。一方、降りる人はゼロ。ここはなんだかんだ言っても、日本最西端の「駅」なわけですから、是非列車で訪れていただきたいと思うんですが、駅周辺で見かけた来訪者というのは、皆観光バスか自家用車で来た人ばかりで・・・。
列車は大山、山川の順に停車し、私は山川で下車します[⑫]。
5324Dはひとつ先の指宿が終点です[⑬]。
|