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※各画像はクリックすると拡大します。

















 海側の座席が空いていることに気が付いたので、そこへ移ることができました[②]。青色の絵の具でベタ塗りをしたかのような海原と青空が本当に美しいです。指宿枕崎線は、全線を通して、おおむね海岸線寄りの部分を通っていくので、可能であるならば、やはり海側の座席に座りたいものですね。そうして海を眺めてこそ、この路線を真の意味で味わったと言うことができます。

 17時を過ぎ、鹿児島中央を出てから1時間ほどが経過したということで、車内はすっかり落ち着きを取り戻しました[④]。2両編成でもこの程度の乗車率なので、乗っている人の数はたしかに少ないようです。一応、この先、指宿・山川・西頴娃など、そこそこの乗り降りがありそうな気のする駅を通っていきますが、なんとなく「最果て」へ向かっているという感覚が強くなってきます。

 指宿枕崎線の名車窓といえば、やはり、鹿児島湾と東シナ海が魅せる海の眺めでしょう。しかし、「山」の名車窓もあるということを忘れてはなりません。その山とは、薩摩富士こと開聞岳です[⑤]。今はまだ頂上しか見えていませんが、もう少しすれば、その全貌を目にすることができるでしょう。

 大山駅には、積み上げられたPC枕木がありました[⑥]。もともとは島式1面2線の駅でしたが、1線が撤去されたことで、その空いた部分を資材置き場として使用し、PC枕木などを置いているようです。現在の指宿枕崎線は、鹿児島中央寄りでさえ、基本的に木製の枕木、飛び飛びでPC枕木という状況になっています。列車本数が大幅に少なくなる山川以西(大山は以西の区間内)にも、いずれはPC枕木の時代が来る、ということでしょうか。

 大山の次は西大山です[⑦]。ここがどういう駅であるのかということは、もう今更説明するまでもないかもしれませんが、西大山は、日本最南端の駅です(沖縄のモノレールは無視します)。そしてこの西大山は、ホームから勇壮なる開聞岳を望めることもよく知られています。西大山を発車して少しすると、左右の傾斜の均衡がよく取れた、端正ながらも威容を誇る開聞岳の姿が見えました[⑧]

 西頴娃の次は御領に停車します[⑨]。山川から先の本数がかなり少ない指宿枕崎線ですが、指宿〜西頴娃間のみを運転する列車が1日2往復あるため、西頴娃までは、まだマシな方と言えます。西頴娃から先は、いよいよ最少本数区間です。西頴娃〜枕崎間は、1963年10月31日に開業した、指宿枕崎線最後の延伸区間ですが、鉄道が地域に馴染んで利用客を得るためには、あまりにも時期が遅すぎたということなのでしょうか。

 鹿児島中央を発車した時点では、1両目の車両に乗っていましたが、途中で2両目の車両に移りました。石垣では、2両目に乗っていた客の1人が下車し、2両目の乗客は、ついに私だけとなってしまいました[⑩]。1両目には乗客がいるので、列車全体を貸し切りということにはなっていませんが、キハ47-131は、事実上、私の専用車と化しました。

 単線・非電化の線路をのらりくらりと進んでいく1347D[⑪]。山川〜枕崎間の最高速度はたったの65km/hという、一般道を走る自動車並みの遅さです。それでも、この写真で線路の歪みを随所に確認できるように、線路の保守は満足には行われていないようで、ゆっくりと走っているにも関わらず、乗り心地は今一つです。台車のばねが金属ばねということもあってか、特に縦揺れが酷く、それはまさに「跳ねる」がごとくです。

 あと10分もすれば枕崎に到着するという頃、再び海が見えてきました[⑫]。海の間近とまでは言えませんが、畑の向こうに、東シナ海が広がっています。そんな中、薩摩板敷駅付近に、この東シナ海を望んでいる学校がありました[⑬]。調べてみると、この学校は、県立の鹿児島水産高校の校舎とのことでしたが、もし校舎内から海が見えるならば、それは素晴らしいことですね。

 そして18:26、列車は終点の枕崎に到着しました[⑭]。稚内駅ほどではありませんが、ここも、最果て感のある駅です。




















 鹿児島中央から2時間25分をかけて、指宿枕崎線の終着、枕崎にやってきました。隣の駅が「さつまいたしき」のみで、もう片方には何も書かれていないという駅名標が、最果ての終着駅らしい雰囲気を演出してくれます[②]

 南の始終着駅が枕崎なら、北の始終着駅は稚内[③]。こんな縁もあってか、両市は、2012年4月に友好都市としての関係を締結したようです。ただ、稚内駅が、日本最北端の始終着駅であると同時に、日本最北端の駅でもあるのに対し、枕崎駅の称号は「日本最南端の始終着駅」のみです。日本最南端の駅は、先ほど通った西大山駅です。枕崎駅の「最果て感」がなんとなく薄いのは、そのせいもあるのでしょうね。

 最南端の始終着駅から出る列車は、1日に6本のみ[④]。僅かに6本だけの列車が、ここから鹿児島中央へと伸びる線路を進んでいきます[⑤]。この線路をずっと辿っていけば、宮崎や博多はもちろんのこと、大阪、東京、そしていずれは、最北の始終着駅・稚内にまで行ける。無限の広がりさえ感じる壮大な鉄道網も、その始まりは、雑草さえ生える単線・非電化の線路です。その一方で、ここは、壮大な鉄道網の「終焉の地」でもあります[⑧]

 2006年の駅舎解体・駅移転から2013年4月の新駅舎完成まで、枕崎駅は、「日本最南端の始終着駅」という称号を賜っておきながら、無人駅であることはともかく、駅舎すらないという、非常にみすぼらしい駅となっていました。2013年4月15日に完成、28日に使用を開始したのが、この「レトロ感あふれる癒しとパワーを感じる」、小屋風の佇まいをした新駅舎です[⑨]。「枕崎駅」の字は、立行司・36代木村庄之助が筆を執りました[⑩]

 18:26に日本最南端の始終着駅に辿り着いたキハ40系が、18:35発の山川行きとして発車していきました[⑪]。滞在時間は僅かに9分!























 キハ40系が去ると、それに隠れてしまって見えなかった、旧駅舎の写真が出てきました[①]。駅、それも「日本最南端の始終着駅」の肩書きを持つ駅としては、こちらの駅舎の方が、遥かにその格に釣り合うだけのものを持っていたと思ってしまいますが・・・。

 南から北へ、その距離は3144.5km[③]。経由する路線などが一切書かれておらず、営業キロなのか、それとも実キロなのかも分かりませんが、枕崎〜稚内を鉄道で移動する場合に最も標準的と思われる経路として、指宿枕崎・九州新幹線・山陽新幹線・東海道新幹線・東北新幹線・奥羽・津軽・海峡・江差・函館・室蘭・千歳・函館・宗谷で計算してみたところ、営業キロでは3126.1kmという計算結果が出ました。

 室蘭本線経由ではなくずっと函館本線経由(山線経由)、九州新幹線経由ではなく日豊本線経由など、経由する路線を変えながら検証を行ってみましたが、3144.5に一致する数値を出すことはできませんでした。しかし、一度気になったものは徹底的に解明したがる性格をしている者としては、このまま「経由は不明」で引き下がるわけにはいきません。

 そのとき、私の頭に、あることが思い浮かびました。3144.5−3126.1=18.4。何とも言えない微妙な数字です。50kmや60kmならともかく、18kmとちょっとという距離を、路線の変更で辻褄を合わせるのはほぼ不可能と言えます。一方、上記の「最も標準的と思われる経路」では、普通に新幹線や特急列車を使っていった場合、「接続駅を通過する」という事由により、五稜郭〜函館と白石〜札幌で重複乗車が発生することが考えられます。

 まさか・・・。五稜郭〜函館間は3.4km、白石〜札幌間は5.8km。3.4×2=6.8、5.8×2=11.6。6.8+11.6=18.4。ああ、まさかこんな理由と結末が待っていようとは。この18.4という数値は、ちょうど不足していた18.4kmと一致するではありませんか!

 謎が解けました。枕崎駅前にある看板が言う「枕崎〜稚内は3144.5km」というのは、上記の「最も標準的と思われる経路(営業キロ)」で移動し、かつ路線が接続する駅を通過する特急列車に乗車したことを理由として、五稜郭〜函館・白石〜札幌を重複乗車した場合の距離なんですね。

 新幹線と在来線では実キロが違うこと、その他運賃計算上の特例などを考慮した上で、「2015年9月現在、枕崎〜稚内間3144.5kmを営業キロではなく実キロで移動する場合」の経路を正確にはじき出した(たぶん)結果、それは以下のようになりました(<>内は接続駅)。

 <枕崎>指宿枕崎<鹿児島中央>鹿児島<川内>九州新幹線<新八代>鹿児島<門司>山陽<櫛ヶ浜>岩徳<岩国>山陽<神戸>東海道<東京>東北(上野まで山手)<盛岡>東北新幹線<新青森>奥羽<青森>津軽<中小国>海峡<木古内>江差<五稜郭>函館(大沼公園経由)<長万部>室蘭<沼ノ端>千歳<白石>函館<旭川>宗谷<稚内>、ただし特急などに乗って五稜郭〜函館・白石〜札幌を重複乗車。

 3144.5kmの全貌を暴いたのは、インターネット上に数多のサイトがあるといえども、恐らく、当サイトが初めてと思います。この検証結果は、北海道新幹線の新函館北斗開業のときまで有効です。枕崎〜稚内間3144.5kmを「営業キロではなく実キロ(本当の線路の距離)」で移動してみたい、という方は、このような経路での移動を行ってください。もし、この検証結果が違っていれば・・・、申し訳ありません。

 それにしても・・・、3144.5kmの中に重複乗車の分を含めるのって、いったいどうなんでしょう。「枕崎から稚内までは、鉄路でこれくらいの距離がある」と言うときには、ちょっと不適切な気がしないでもありませんが・・・。

 本当はそれぞれの写真についての解説を更に行っていきたいところなんですが、尺の都合上、ホテルまで飛びます。今日泊まるのは、駅前のすぐそこにある枕崎ステーションホテルです[⑬]。2010年?の開業で、部屋もまずまず綺麗です[⑭]


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