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 動物の小さな足跡だけがあるくらいのような、どこまでも広く、美しく、そして穢れのない大雪原[①]。果てしなく広がる大海原は、その向こうが水平線となっていますが、この雪原も負けず劣らずです。雪版の海、とでも言いましょうか? 冬の日本海側は、天候が非常に不安定で、あけぼの号や日本海号に乗るときは、それに幾度となく苦しめられましたが、今日は誠に良い天気です[②]

 村上に到着[③]。ここまでは内陸部を走ってきた羽越本線は、当駅から先は、一気に海沿いに出ていきます。また、Suicaが利用できるのは村上までであり、村上を境とした列車本数の違い等も相まって、まさに羽越本線における拠点駅として機能しています。

 村上〜間島間で、直流と交流が切り替わります[④]。485系時代は、ここで車内の照明が消えていた特急いなほ号も、E653系では、空調こそ一瞬止まるものの、照明や情報表示器は消えません。1972年には電化が完成した羽越本線ですが、交直流型の普通列車用車両が投入されたことは1度もなく、今でも、ここを跨ぐ普通列車は、全てが気動車となっています。

 さあ、お待ちかねの海沿い区間にやってきました[⑤]。冬の日本海は、飛び切りに美しい眺めを提供してくれるものの、それを本当に満喫できるほどに晴れる日は、決して多くはありません。ええ、今日の私は、運が良いのです。麗しの海原に、澄んだ青空。自然が織り成した巨岩は、その上部に冬でも枯れない木々を宿します。足元に打ち寄せる波は、飛沫となって海面にアクセントを加えます[⑥]

 村上〜小波渡にかけて、羽越本線で最大の見どころにもなる海景色が展開されますが、惜しむらくは、常に道路が海の際を走り、線路が道路よりも海側に行くことはありません[⑦]。それでも、これほどに海の近くを走る鉄道路線は、決して多くはないのですが、やはり”消化不良”感が・・・。ただ、逆に言うと、この道は、1度はドライブしてみたいものですね。

 海面に現れる奇岩は、長年の歳月を経て自然が生み出した、人工物では決して表現しえない、自然ならではの美しさを宿しています[⑧]。人間の技術をもってすれば、綺麗な岩を創ることそのものは、全く難しいことではありません。しかし、全てを”なすがままに”してこのようなものを生み出すことは、自然にしかできないことなのです。

 府屋に到着しました[⑨]。海沿い区間の各駅は、海側に集落が形成され、線路は山側を通っていることが多いのですが、府屋駅については、その逆となっていて、海側は線路と道路が通り、集落は山側にあります[⑩]
















 これほどにも海沿いの場所を走っていると、その線形は、まさに海岸線の形に左右されるといっても過言ではなく、道路共々、線形は決して良くはありません[①]。485系と比較すると、加減速に優れ、また重心が低めに設計されていることで、E653系により多少の高速化は果たされましたが、本質的に高速化を狙うならば、やはり振り子式車両の導入が待たれます。

 小波渡を通過すると、見る人々を楽しませてくれた海景色はいったん終了し、内陸部に入ります[③]。この先、鶴岡・酒田という、羽越本線内における主要な都市が2つ控えていますが、これらは、比較的海から離れた場所に街が形成されています。

 E653系いなほ号のグリーン車には、ミニラウンジが設けられています[④]。グリーン車の客室内にあるため、普通車の利用客は、これを使うことはできません。御覧の通り、パイプにクッションを取り付けた椅子が、海側と山側の両側に置かれていて、「反対側の景色が見たいのだけど・・・」と考えた人々の期待に応えてくれます[⑤]

 今日は、もともと、それほど利用客は多くなかったグリーン車ですが、鶴岡での下車が多く、ここでほぼガラガラになってしまいました[⑥] [⑦]。このように見てみると、各座席間を仕切る木製の板と半透明の仕切りが、とても目立ちます。なお、既に察しがついているであろうかとは思いますが、これらの仕切りがあるために、いなほ号のグリーン車では、座席を向かい合わせにすることはできません。

 最後の途中停車駅、余目[⑧]。陸羽西線と接続している駅で、私は、この後同線に乗車しますが、余目でその列車を待つと、待ち時間が異様に長くなってしまうので、余目〜酒田間の往復乗車券を買い足して、終点の酒田まで向かいます。今回の旅では、各都道府県の代表駅を訪れるためのはみ出し乗車(=ズル)は認めませんが、時間潰しのためのそれは認めています。

 広がる雪原を行く特急いなほ号[⑨]。E653系は、もとより、「電化路線であれば、日本全国どこでも走れる車両」となっていて、交直両用(60Hz対応)であるのはもちろんのこと、当初より耐寒・耐雪構造です。そのため、常磐線から羽越本線・信越本線へ転用することができました(耐寒・耐雪能力を強化しましたが、何もしていない車両にそれをするよりは、はるかに楽だったことでしょう)。

 新潟から2時間ちょっとで、終点の酒田に着きました[⑩]。現在、いなほ号用のE653系には、濃い青色で塗り上げた編成(瑠璃)と、濃い桃色で塗り上げた編成(ハマナス)がありますが、今回は普通の塗装の編成でしたね。

















 酒田駅の秋田方にある、2線の行き止まり式の線路[②]。雪は積もったままで、特に使用されているような感じはありません。また、どちらも架線は張られておらず、仮に列車が乗り入れるのだとしても、それは気動車に限られます。

 E653系1000番代のこの特徴的な塗装は、「日本海の夕陽、海、稲穂」をあしらったものであるとされ、単に色を塗り分けるのではなく、曲線の帯や円を配する、かなり手の込んだものとなっています[③] [④]。これに代わって登場した新しい塗装は、打って変わって一色ベタ塗りだというのですから、この塗装の維持に手間がかかっているのだという内情が、実によく伝わってきます。

 羽越本線にある、きらきらうえつ号の各停車駅には、「きらきらスポット」と題した、きらきらうえつ号仕様の駅名標が設置されています[⑥] [⑦]。基本的には、JR東日本の駅名標の様式を踏襲していますが、両隣の駅が、本当の隣の駅ではなく、同列車(快速)の隣の停車駅となっています。なお、遊佐(秋田)方面まで乗り入れるのは、一部の日だけで、通常は酒田止まりです。

 E653系が引き上げていきます[⑧]。次の酒田始発の上りいなほ号は、15:57発の便となるので、ずっと1番線に停車し続けるというわけにはいかないようです。一度構内の側線に転線するのでしょう。

 記念撮影用の顔出しパネルに、E653系も参加しています[⑨]。しかし、このように鉄道車両を顔出しパネルにするときは、普通は、その列車の正面図を使うものだと思うのですが、なぜかこれは、斜めからE653系を見た図となっています。運転室の窓から顔を出すようですが、斜めであるがゆえに、ちょっと顔を出しにくそうに見えます・・・。

 酒田駅では、2005年に自動改札機が導入されました[⑩]。さしものSuicaも、まだ鶴岡・酒田は利用可能範囲外なので、ICカードの読み取り部がない、”ちょっと懐かしい”自動改札機の姿を拝むことができます。思えば、首都圏では、もう2001年にはSuicaが導入されているので、私自身は、気が付いたら、自動改札機=Suica対応だったのですよね。

 羽越本線下り方面の発車標と・・・、羽越本線・上越新幹線? 陸羽西線・山形新幹線?[⑪] いや、言いたいことは分かります。言いたいことは。ただ、新大阪駅で「JR京都線・新幹線」とか、青森駅で「奥羽本線・新幹線」と表示するのであれば、まあいいかなとは思いますが、新潟も新庄も、酒田駅の発車標で「新幹線」との文言を入れさせるには、ちょっと遠すぎやしませんか・・・。

 余目で接続する陸羽西線の列車は、一部は、余目〜酒田間において、羽越本線に乗り入れています。この後乗車する、新庄行きの快速最上川号もそのひとつで、このために、酒田〜余目間は、列車の本数が少し多くなっています[⑫]


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